不協
のはいいのだが――。身長が一番、高いという理由で俺がジャンプボールに選ばれてしまった。相手は勿論、巨漢の榎野。二メートル越えのアイツに、百七十弱の俺が敵うはずがない。
審判の先生がボールを下で構える。
「ティップオフ」
仁先生のその掛け声でボールは上がり、俺と榎野もほぼ同時にジャンプした。しかし、飛距離で20センチほどの差を付けられてしまう。ボールは弾かれ、卯月の手に渡った。
「先ずはボールを奪う」
薫子が指示を出したのだが、卯月兄弟のパス回しは凄かった。薫子、天津をあっという間に抜き去ってしまう。
「へへ、運動なら君にも負けないよ」
卯月が今の薫子に言っては、自信を損なわせてしまうような発言をする。
つか、運動じゃなくて呪術で勝てよ。
唯一のバスケ経験者の大枝に卯月は阻まれる。俺はもう一人の卯月を抑えてパスコースを封じたのだが、そこで白井が飛び出した。
すかさず卯月がパスを出し、ディフェンス陣はそれに追いつけないでいる。
白井は素早いドリブルでゴール前まで移動した。
「先制点頂きだ」
綺麗なレイアップで最初のゴールは、C組が決めた。
これだから不良は。
「おおっーと! 最初の得点はC組だ!」
「華麗なパス回しが、得点に繋がりましたね」
実況と解説のダブルパンチが凄く煩わしい。
D 0-2 C
切り替えて今度はこちらが攻める番だ。俺と朝陽のパス回しでボールを運んでいく。ゴール前にC組を誘い込んだところでのバックパス。
相手は勿論、大枝だ。
これにはC組のディフェンス陣も慌てている。
大枝は俺達の中で唯一――3Pシュートが打てる。
放ったシュートは綺麗な円を描き、ゴールに吸い込まれるように落ちた。
「スリーが決まった! これでD組逆転!」
「綺麗なフォームでしたね」
D 3-2 C
だがそこでブザーが鳴る。
前半終了には早すぎるし、ファールのタイミングでもない一体なんだろう。
「おや、これはタイムアウトを取る様ですね」
なんだよそれ。んなルールあったのかよ。
実況の仁先生がその点について説明してくれた。
「ルールではお互い、前半、後半で3分のタイムアウトを一回ずつとれます。早くもといった感じですが、どう思いますか?」
「流れを切ったのでしょうね。タイミング的に、相手を完封するつもりでしょう」
嫌な解説をしてくる。
だが、タイムアウトを終えた瞬間、C組は本当にそのつもりだと分かる。
試合が始まって、明らかな変化が生まれた……。
「これは……! 大枝選手にマンマーク! これではプレーも厳しい!」
大枝にマンツーマンでのマーク。攻撃の要である大枝のスリーが封じられたという事だ。これが意味する事はつまり、あの二メートル越えからゴールを奪わなければならないという事だ。
当初の予定では、スリーで点数を稼ぐはずだった。
ちらりと薫子を見たが、気が気ではない。そういう表情だった。たくっ、まだ気にしてんのかよ。
こちらの攻撃。朝陽がボールをキープして、相手陣内に切り込む。卯月のどちらかがディフェンスに入ったが、朝陽が持ち前のドリブルでそれを躱す。
さすがだ。呪術はダメでも運動は本当にいけてる。
俺にパスが渡り、一気にゴール前までたどり着く。しかしそこには一番の壁、榎野が立ち塞がった。
高さで勝負が無理なら、フェイントだ。左右にドリブルしてから、レイアップ。
動きでは完全に上手だった。しかし二メートルという長身はそれで崩れるほど甘くなかった。長い腕とジャンプ力で、あっという間に追いつかれ、ボールを叩かれる。
運の悪い事に、そのボールは卯月に渡る。
「速攻」
その掛け声で、C組は走り出す。ボールは一番、前にいた白井に渡って、ドリブルでもスピードを落とすことなく走る。
そこから怒涛の展開だった。
天津を抜き去り、高く飛び上がってダンクを決めたのだ。
周りからは拍手が巻き起こる。白井は榎野のせいで隠れているが、身長は180越えだ。今まで見せてはいなかったが、ダンクができたのだ。
これで完全にペースはC組のものだ。
「今度はC組逆転! なんとダンクで決めました、白井選手!」
「バスケといったらダンク。ダンクといったらバスケですね」
白井が俺とのすれ違い際に言って来た。
「今度は勝つ」
相手のやる気もこちらに負けていないようだ。最初は怠いとか言ってたくせに、これは本気でやばいかもしれない。
D 3-4 C
それからも攻めあぐねていた俺達の虚を付き、速攻で点を取られる。次は卯月のスリーだった。
「さすがだよ兄貴」
どうやら兄貴が決めたらしい。未だに俺には見分けがつかない。
D 3-7 C
次の攻撃ではなんとか隙を作り、朝陽が点をいれたのだが、すぐさま卯月がゴールに近付いた。天津は抜かれ、また得点されてしまう。
明らかに、天津はセンター向きではない。身長もなければ馬力もない。全体のポジショニングをしたの薫子だ。なのにその薫子はあれ以降、一言も喋っていない。
司令塔の薫子が機能しない事により、ディフェンスは相手に押し負け、マンツーマンでマークされている大枝は攻めきれない。完璧にしてやれている。
ここは――俺が流れを変えるしかない。
D 5-13 C




