表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/97

会議






 廊下は豪勢な飾り付けがされていて、絨毯も綺麗に清掃されている。そんな高級なホテルの一階を貸し切りにし、彼等は集まっていた。


 先頭に立つのは和服に身を包み、気品に溢れる姿で歩を進める、四之宮光茂。後ろからその背に付いて行くのは、左から四之宮誠司。四之宮桜子だった。








 誠司は額に汗を浮かべた。

「あー、やばい緊張する」


 それを見て桜子は愉快に笑う。

「みんなで会議なんて楽しそうじゃない」


「桜子さんは緊張感無さすぎなんですよ」


「誠司君は緊張しすぎ。スーツ後ろ表逆よ」


 指摘通り、前に背の部分があった。なんで教えてくれなかったんですか。と慌てながら正す誠司。

 誠司と光茂は正装をしているが、桜子だけは暑いとう単純明快な理由から、女子大生らしいラフな格好をしている。









「静かにしろ」 

 光茂は低い声で言ったあと、重い扉を開けた。








 四角いテーブルの前に座っている顔ぶれ、錚々たるものだった。正面から左に座すは――十文字家当主、十文字彩芽≪じゅうもんじあやめ≫。


 二子の母とは思えない美貌を保っており、しっかりとメイクをし、目の下には青いアイラインを引いている。未だに長く伸ばした髪は盛大に盛られている。


 そして身体には小さな女の子を抱いていた。140センチほどしかないその子は、幼い顔立ちをしていて、銀色の髪はふさふさとしている。しかしそんな彼女は四術士の一人、十文字千夜≪じゅうもんじちよ≫である。

 後ろには一人、女の従士がついている。







 正面から右に座るは――六車家の四術士、六車大我≪むぐるまたいが≫。後ろには二人の従士を付けている。


 そして最後に、上座に座るのは百瀬家当主――百瀬聡士≪ももせそうし≫。


 まるで時代劇の将軍のように凛々しい顔しているが、この中では一番の年上だった。だが髪はいまだに黒く、十歳くらい若く言われても分からないくらいだ。


 聡士だけは、後ろに誰も従士を付けていなかった。


 だがそんな顔ぶれにも引けを取らないのが、光茂、誠司、桜子だった。 









 四之宮家が入ってくるのを見て、最初に反応を示したのは大我だった。


「おーう、誠司。久しぶりだな」

 誠司は苦笑いを返す。

「お久しぶりです、大我さん」


 そんな会話を聞いていた十文字家当主、彩芽は、誠司を見て目を輝かせた。「あら誠司君、また格好良くなって。貴方みたいに誠実で強い人なら、うちにも欲しいわ。ね、千代」


 千夜はぶっきらぼうに拒絶する。

「イケメンに興味は無いのです」


 つれない返事が返ってきても彩芽は顔色を変えなかった。


 終始苦笑いをしている誠司に対して、桜子は強気だった。


「うちの誠司君は、彩芽さんみたいなおばさまにはお渡しできませんわ」とにっこり笑う。

 これにはさすがの彩芽も顔色が変わる。


「大学生のガキには大人の魅力が分からないのよ」


 それを聞いて、桜子は大袈裟に笑う。「浮き出たほうれい線とか、たるんだ脂肪は、確かにおばさまの魅力ね」


 みるみるうちに、彩芽の顔が真っ赤になる。 


 それを見ていた大我が、仲裁に入った。

「おいおい、いきなり喧嘩とか勘弁してくれよ」


 しかし喧嘩腰の会話は止まない。

  





 ――場を沈めたのは、百瀬の呪術だった。


 全体に強い呪力を誇示し、周りの会話はすぐさま止んだ。


 誰もが口を開けずにいる中、光茂が口火を切った。


「百瀬殿の手を煩わせてしまい、深くお詫びします」

 百瀬は鼻を鳴らし、別に良いと一言。









 大我は頭を掻いてから、「それにしたって、百瀬さんよお。従士も無しにここに来ていいのかよ?」


 周りと比べれば確かにおかしかった。他の三家には四術士が付いている。だが百瀬にはそれどころか、従士もいない。


 しかし顔色を変えなかった。「ここには頼もしい術士が多くいる。なにも問題は無い」


「信用しすぎだろうよ」

 そんな質問をした六車大我だったが、彼等六車家にも不審な点はあった。それを付くのは彩芽。


「六車家こそ、当主が来ないで大我君を寄こすなんてどういう事?」


「うちの当主様は病気が悪化してな。出て来れるような状態じゃねえんだ。だから今日の俺の言葉は、六車五典のもんだと思ってくれて構わねえぜ」


「そっちのが気楽ね。あの男、裏でこそこそやってて信用ならなかったし」


 十文字と六車の話が終わった頃に、光茂が咳ばらいをする。


「腹の探り合いはこの辺にして、本題に入りましょう」










 マントラの家系が集まった理由。それは派閥についての会議だった。当主どうしが同じ日時に同じ場所に集まる事は困難で、決定から実現までに時間がかかった。協力体制は優れているとはいえない。


 彩芽はそうね、と同意してから、まとめた資料を読むように、従士に促す。


「はい。先ず、東京で派閥の動きが活発化しているとの事でしたが、そのうちの三人の顔と身元が割れました。一人は六車家の――」

 名前を聞き、大我が苦い顔する。


「そして四之宮家――」

 光茂は顔色を変えず、頷く。


「最後は恐縮ですが、十文字家――」

 その証言を聞いて、百瀬が口を開く。


「驚く事ではない。最初から我々の中に裏切者が出ている事は分かっていた」


 言葉を拾い、光茂が続ける。「それの対策をどうするかですね」


 百瀬が頷ずく。









 十文字家の従士が資料に目を向け、更に続けた。

「そして他に一名の派閥のものを捕縛したのですが……。我は正しき行いをしている。悪の根源を絶つために神の元、行動を起こしたのだ。――とわけの分からない言葉を口にした後、自死の呪術で命を落としました」


「敵の狙いはなんなんでしょうか」誠司がぽつりと漏らす。




 そこで大我が手を上げる。

「参考になるか分からねえが。……この前うちの弟が、帽子を被った派閥のやつに襲われた。四之宮家の娘さんもそうだったな?」



「ええ。娘の証言では殺す気は無く、捕らえる事を目的にしているようだと」

 光茂と大我の会話の後に、更に会議の雰囲気は重くなる。






 そんな沈黙を破ったのは、彩芽だった。

「敵の狙いは次期当主を人質にして、私達から政権を奪う事よ! そうに違いないわ」


 安直な考えだったが、光茂はそれに頷いた。

 実際、シンプルだが的は得ていると思えた。


 だが狙いが分ってもその対策が大事。何度か街を襲う案件も出ているし、野放しにはできない。根絶するにも敵の隠れ家などはいまだに見つかっていない。











 そんな時、一人の男が慌ただしく部屋に入って来た。

「なんの騒ぎだ」


 百瀬に問われ、緊張した面持ちで男は言葉を発する。「街に式神が多数出現しました」


 場が騒然とする。大我の指示で、室内のテレビを付けさせた。


 情報番組では突如、原因不明の発火事件が起きた。など、他にも色々な現象が同時に起きていると報道していた。律儀に結界をはり、式神の姿を消しているらしい。





 迅速に当主達が指示を飛ばす中、桜子だけは笑っていた。

「――やっと面白くなってきた」













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ