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夕陽





 呪術家系の中で六車家は、実力が優先される。そういった伝統から、養子が当主になる事も少なくない。五典≪いつのり≫もまた、その一人だった。


 元々は一般の家庭で生まれた男だったが、その探求心と努力から、呪術界全体でもトップクラスの実力を誇るようになっていた。





 呪術界に入ってからというもの、五典は呪術にしか興味が無く、ひたすらに呪術の研究に励んでいた。強い呪術を生み出す為に……。






 そんな彼が初めて、人を好きになった。女の名前は妙≪たえ≫。呪力は無く、病弱な娘だった。そんな彼女に一目ぼれし、付き合ってまもなくで婚儀をした。

 決断が早いのも彼の特徴で、言葉を曲げないのが心情。最初こそ反対されたが、六車家の人間は五典の性格を知っていた為、直ぐに沈静化された。





 本来、呪力の無いものとの婚儀は禁止していた。しかしそれを強行し、踏み切った。その代わりに、妙には多くの封印の呪術が施された。それでも、二人は婚約した事を悔いてはいなかった。


 婚約してからというもの、趣味だった研究を止めていた五典だったが、妙が子を抱えてからそれが変わった。








 呪力の高い親から生まれた子は、強い呪力を持つという論文を見たからだった。これで五典の研究魂に火が付かないわけがない。


 それから愛は、妙ではなく子に注がれた。歪んだ愛情が。








 問題は妙が一切の呪力を持っていないという事だった。論文では子は二人の呪力をほぼ均等に授かる。と記されていた。自分で研究するのが一番、確実なのだが、それをしている時間は無い。一年しか猶予はないのだ。


 



 そこで思いついたのが、、妙に呪力を分け与える事だった。六車家の中でも高い呪力の持つ者を騙し、彼の呪力を妙に注ごうとした。血の受け渡しを応用しての人体実験だった。


 勿論、そんな事は違法で、やれば重い処罰が与えられる。 







 だが――関係は無かった。 




 五典の頭には、自分よりも強い子――自分の分身を作る事にしか興味が無かった。六車家の従者が隠蔽し、生涯を終えるまで世に出る事はなかった。


 しかし、人体実験は上手くいっていなかった。元々、器の無い者に呪力を与えるのは不可能だった。留めておく場所がなかったせいだ。


 漏出し、妙が死にかけた事もあった。







 五典は慌てた。そして生きてた事を泣いて喜んだ。勿論、子供の生死を。


 打つ手が無くなり、暗い闇の中にいた五典に朗報が届いた。子が双子だと分かったのだ。


 その時から、多くの論文や呪術理論を浚った。そして五典は一つの方法に辿り着いた。








 『そそがれる呪力を一人に集める』


 それが結論。




 二人に渡る呪力を一人に集約する。理論上は可能だった。









 早速、生まれてくる子に術式を施した。呪力を一人の子に行き渡るようにしたのだ。


 全てをやり終えた後、五典はひたすらに生まれてくる日を待った。


 だが人間を道具としか思わなくなった五典のやり方では、全てが上手くはいかなかった。






 妙が夫を見限ったのだ。


 自分に愛が無くなり、それどころか子供すらも大切な道具のように扱う五典に、愛はどんどん憎しみに変わっていた。


 そして復讐を考えた。


 全てをおかしくした元凶の呪術。それを壊してやろうとした。だが、封印されている彼女には、それを喋る事すらできない。








 だから妙は――生まれてきた子を殺した。

 その子の名が、六車夕陽。





 勿論、夕陽は沢山の呪力が注がれた五典の最高傑作。

 呪術とは無縁の妙にも、生まれてくる子の禍々しさで、判断できた。しかしもう一人の子をも手にかけようとした。


 呪術を恨む気持ちは変わり、愛してくれない五典に、もう一度愛を求めるようになっていたのだ。歪んだ愛情は、子への憎しみへと移った。



 朝陽に手をかける直前、六車家のものに阻止され、妙は自害した。









 それを聞き、五典は絶望した。生涯をかけた実験の成果が踏みにじられたのだ。そこで五典は第二のプランとして用意していた方法を実行に移す。


 死んだ夕陽から、鮮血を採取した。小さな注射器に幾つも。神聖なものでなければ、血の受け渡しはできない。だから慎重に。


 それでも経ったの八本分しか集まらなかった。







 それから五典はもう一人の子、朝陽を溺愛し育てた。生まれてきてから直ぐ、呪術について教えた。潜在的に。


 身体を自由に動かせるようになった五歳の時、朝陽に夕陽の血を流し込んだ。


 実験の成果が発揮される時だった……。








 その瞬間、朝陽は赤ん坊のように泣きわめき、多彩な呪術を繰り出した。それは想定を超えていて、六車家の呪術での防御壁は破れ、辺り一帯は焼け野原と化した。


 それを見てただ一人、五典は喜んでいた。


 研究の成果が想像以上だったのだ。嬉しくないはずがない。



 しかし夕陽の力を使わないとなにもできない朝陽を見て、段々と興味を無くしていた。あれ以上の成長はみられない。何よりも変化と進化を五典は好んでいた。


 それからは病に倒れ、闘病する日々を送った。









 朝陽が十歳をの頃からは、六車大我が彼の面倒を見た。朝陽も彼を実の兄のように慕っていた。


 彼が選ばれたのも、暴走した夕陽を止められるのが、現状で六車家に大我しかいなかったからだ。


 こうして朝陽と夕陽は、残酷な運命の元生まれた……。










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