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 憑をした木刀はいわば、呪力をまとって結界に近い状態だと推察。それに発をすればその木刀ははね返り、脳天直撃というわけだ。

 確証は無かったが、上手くいった。

 これも呪力テストの応用だな。






 まあこれで一つは獲得した。戻って状況を確認しにいくか。

 走ると背中が痛み、思うように動けなかったが、なんとか外に出る事ができた。





 状況は硬直状態……。といったところだろうか。

 先ず、冷静さを取り戻した卯月兄弟と他二人が合流している。持っている玉の数は三つ。

 こちらは薫子、天津、飯田が同じ場所にいる。朝陽は地面に倒れ込んでいる。本当に弱い。






 玉の数は天津が一つと、俺が一つで計二つ。数で負けている。

 俺もD組と合流すると、早速、薫子が皮肉っぽく言ってきた。

「あまり期待していなかったけど、取れたのね」

 相変わらず、一言多い。褒めるなら褒めてくれよ。






「それと天津さんが一つ手に入れてくれたから、作戦通りの数は手に入れたわ」

 天津を見ると、玉を顔の横に添えて笑ってくれた。

 しかし直ぐに顔は曇り、話題は朝陽に変わる。

「でも、六車君が……」





 あまり関心もなさそうに薫子が言う。「六車家の人間だから、多少は手加減してくれると思ったのだけど……。上手くはいかないわね」

 名門にも容赦が無いな。相手ってよりも、薫子の方が。






C組に目を戻すと、俺を見てから、白井の話をしていた。

「アイツがいるって事は、もしかして白井さんやられたのか?」

 などどいった感じだ。






 浮かれるのもいいが、残り時間は三分程しかない。

「おーい、責めて来なくていいのー。このままだと僕等が勝っちゃうよ?」

 卯月兄弟のどちらかが言っている。遠目からでは見分けがつかない。






 だがD組は誰も動こうとはしない。実際、数では相手の方が上だし、このままだと負ける。

「その必要は無いわ」

 薫子のセリフを聞くと、興味無さそうにしてあっそ、と返ってくるだけだった。










 時間は刻一刻と進み、ついに十秒を切った。C組はカウントを始めだす。

「5! 4! 3! 2! 1!」





「――試合終了」

 審判とタイムジャッジを兼任している先生が告げた。その瞬間、C組の四人は大きな声を上げて喜んだ。

 あれだけ余裕を出していた割に、勝つと喜ぶんだな。だが余裕なのは、C組だけではなかった。







 そして――C組に異変が起きたのはそれからだ。


「お互い、持っている玉の数を示せ」

 先生の言葉に、余裕の表情でC組が玉を上げる。

 しかし、あるはずの一つがそこには無かった。


「あれ? おいお前等もう一つは?」


「卯月さんが持ってたじゃないですか」


「何言ってんだよ、僕に擦り付けんな」

 エリートクラスとは思えない痴話喧嘩が勃発する。






 その喧嘩に終止符を打ったのは、薫子の笑みだった。

「貴方達の探している物はこれかしら?」

 示したのは紛れもない。三つ目の玉だった。


「は? なんでお前が持ってんだよ! 確かに僕達が三つ持ってたはずだ」


「貴方達には少し難しかったかしら? でも答えは教えないわ。簡単だから自分達で考えなさい」

 本当に煽りだけは一丁前だ。あ、まあ一応、呪術も……。







 勝者、D組! と先生が宣言したところで、ようやく肩の荷が下りた。


 最後に俺達のが三つになったのは簡単な呪術トリックだ。最初に一つ玉が貰えるのと、最後に多く持ってた方が勝ちというルールを生かした。


 朝陽が奪われた玉。それには最初から細工がしてあった。それは数分後にこちらに戻ってくるように呪術を仕込んだのだ。呪術理論で教えて貰ったあれの応用である。 


 勿論、簡単ではない。D組の生徒にはまず無理だ。しかし薫子の呪術レベルならそれを容易く可能にした。

 まあ、今回はアイツの力あっての勝利だな。







 上手い具合に説明終えた時、立ちくらみがした。それからゆっくりと地面に倒れる――。

 最後の感じたのは、土の匂いだった。









 

 次、目を覚ましたのは学校の保健室だった。デカい校舎に比べれば少し小ぶりのそこは、落ち着ける空間だった。狭いところが好きな性分の俺にとっては。




 ベットの上から見えるところに、先生の姿は無く、あるのは薫子の顔だけだった。

「やっと目を覚ました。貧弱なのも考えものね。どちらが守られているのか分からなくなる」

 怪我人への態度とは思えない言葉のラッシュ。もう少し労ってほしいものだ。

 と思ったが、背中の痛みが和らいでいる。治してくれたらしい。





「……治療ありがとうな」


「感謝なら先生に言いなさい」

 なんだよ、お前じゃないのかよ。頑張って言ったのに無駄だった。








 窓から外を見ると、もう夕暮れ時だった。倒れた時には昼だったし、結構、待ってくれたらしい。他の奴等ももしかしたら来てくれたのかもしれないが、薫子だけはずっと……。


「一つ、アドバイス」

 薫子はそう言って、俺の目を見た。


「後方に飛ばされた時は、背をちゃんと護で守りなさい。でないとこういったダメージに繋がるわ」

 なにかと思えば真面目なアドバイスか。

 まあ確かに、戦闘中にそれは感じていた。







 その時、保健室の扉が開いた。そこから現れたのは日役先生。面倒くさがりのこの人が態々、足を運ぶなんて少し意外だった。

「薫子ちゃんの言う通り。呪術で人が傷つけられるのはあまり好まないから、気を付けてね」

 優しい笑顔で日役先生は俺に言った。

 なんだか人に優しくされるのは少し痒い。







 薫子は席を立ってから、

「水無君。完治したわけではないから、無理しないように」

 とだけ残した。

 踵を返そうとする薫子を止めたのは、日役先生。


「君達、今回の優秀生徒としてC組への昇格権が与えられたんだけど……。どうする?」


 急な事だった。D組からC組への昇格。ようやく仲も深まったところでの誘い。 薫子はどっちを選ぶんだろうか。







「水無君の好きな方を選んで。それに付いていくわ。……近くにいないと私を守れないでしょ?」


 全責任を俺に委ねる台詞。

 しかし身勝手だとは思えなかった。これは俺が選ばないといけない選択だ。自分の事を考えて、薫子の事も考える。そうして結論を出して、約束を果たす。


「俺は残ります。まだ学ばなきゃいけない事もあるし」

 日役先生は表情を変えずに、「そうか、分かったよ」と承諾してくれた。




「薫子、またあいつ等と付き合ってくれよ」


「仕方ないわね。私とはレベルの差があるけど」

 どんな結果を出したとしても、薫子の憎まれ口は変わらなかっただろう。だが段々と、それすらも俺の青春の一部になろうとしていた。




 あの時は考えもしなかった、生活。それが当たり前になっていた。











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