決闘の続き⑴
私は妻である。
昨日は私の家に仕えるメイドと喧嘩をしたが、決着がつかなかった。お互いに互いを殺しかねない程本気でやったのでボロボロになってしまったが、私が治癒魔法のヒールを使い、今では傷一つない状態である。
今晩も同じように子どもを寝かしつけてから外に出た。メイドが今日買い出しに行ったついでにと鋼でできたビキニアーマーのようなものを二人分買ってきたくれた。昨日は喧嘩をしたせいで衣類が使いもなのにならなくなってしまった。今回は金属であるし、大丈夫だろう。
私たちはお互い身につけている全てのものを脱ぎ、ビキニアーマーに着替えようとした。
この辺りは家から近い草原であるが、私たちの家は人里離れた場所に位置するため、二人しかいない。お互いに手の回らない背中の鋼のブラジャーのホックを結び合う。腕を回し合った状態であるため、互いの身体が触れ合うが、気にならない。
メイドは妻の身体の美しさに激しく嫉妬しそうになるが同時に愛おしさもこみ上げてきた。長年仕えた妻はやはり今でもとても美しい。そしてその身体と思いを自分に向けてくれることがメイドを心の中で興奮させた。
妻はメイドと互いに触れ合い、少し照れたように頬を赤くした。メイドはとても落ち着いていてともすれば冷たいように見えてしまうが心の優しい性格であるとわかっている。
身体については夫が手を出してしまうのも頷ける程に男好きな身体をしている。自分の美しさに自負はあるがメイドにはまた違った美しさがある。嫉妬したくなるが、優しさを知っているので嫉妬しきれない。
互いに身体を絡ませてビキニアーマーを取り付けたら互いに向かい合った。
「奥様、今日はどうなさいますか。」
メイドが口を開いた。
「とことんやりましょう。」
妻が返す。
「とことんとは?」
「どちらかが立たなくなるまでっていうのはどうかしら」
「承知しました。」
それ以降二人は口を開かなくなった。
互いに1mmほどの距離で向かい合い、
無言で見つめ合う。
メイドは思う。今日は邪魔は入らない。
子供達は寝かしつけたし、旦那様も帰ってこない。
奥様の相手をし続けられる。
昨日奥様と闘って思ってしまった。
自分が生きてきた中で最も興奮した時間だった。
そして、最も幸せな時間だった。
それは最も意識している相手のことだけを考え、ただその上に立ちたいという思いだけで貪り尽くすかのように闘う。
人間の本能の全てを妻という相手にぶつける。
それだけではない。妻もまた同じことを考え向き合ってきた。これほどまで思いが通じあったことは未だかつてない。
今日はとことんやる日と妻が言った。
その言葉は救いであり、妻への勝利という最高の美酒を今日は味わえる。
「あなたを今日この場で殺します。奥様」
そう〇〇〇〇は心の中で宣言した。
妻は考えた。
今日この闘いを終えた日が最も幸せな日になることを。
メイドが夫との間に子供を作ってしまったことを知った時は深い悲しみと絶望に襲われ、大きな裏切りにあったと思った。だが、その裏切りの結果、メイドとはこれまでよりも深く、激しく、愛に満ち、また憎しみに満ちた関係となった。
メイドのことを考えない日はない。あなたを愛しまない日はない。あなたに憎しみを抱かない日はない。
そんなあなたとまた心の底から繋がれる。
今日までの自分の全てを全身全霊、命をかけて向き合えら相手がいる素晴らしさ、自分が生きてることを強く強く実感できる。
「〇〇〇〇、あなたの命が今日尽きても一生あなたを思い続けるわ」
そして、〇〇〇は心の奥底で呟いた。
そして二人の思いは拳になってぶつかり合った。