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妻とメイド  作者: セラフ
1/6

決闘⑴

私は妻です。



10ヶ月ほど前にメイドが私の夫との子どもを身籠ってしまったことを知った。

よりにもよって私が妊娠中にそんなことが発覚したわけだから、私の幸福は一転どん底の絶望へと突き落とされた。メイドを追い出すか、私が出て行くか迷った末に半狂乱にまで陥ってしまったけど、可愛い一人息子の説得で何とか思いとどまった。



そして私の子どもとメイドの子どもが同じ日に生まれてきた。二人とも女の子だった。

私は二人の娘を愛することに決めた。もちろん、夫とメイドに対しては裏切られたという思いがまだ残っているが、割り切るしかなかった。どうしようもないのだ。子どもに罪はないし、私が産んだ二人の子どものためにも幸せな家庭を作りたい。長男も妹ができたと喜んでいるし、その笑顔を壊したいとは思わない。それからの日々は大変だったけど、私はメイドと協力して二人の子育てに尽力した。



子どもが生まれてから、一月ほど経過して体調が戻ったころに夫と息子が少しの間家を空けた。私はメイドと娘二人との4人になった。


それから少しした日の夜に私はメイドと二人きりになり、散歩した。子どもたちは今は家で眠っている。メイドの格好はロングスカートのメイド服を着て、そこまで長くはない黒い髪を一つに束ねている。俗に言うポニーテールだ。眼鏡を付けていて全体的に地味な装いだ。しかし、着飾れば綺麗になるだろうし、胸も大きく男好きのする身体をしている。自分が劣っているとは思わないが、夫が惹かれたのもうなづける。

私たちは夫のどこに惹かれたのかや出会いの経緯について話し合った。10年ほど前、メイドは私よりも出会う前に夫と出会っており、行為も済ませていたと言った。当時、女たらしで見境いのなかった夫に夜這いされたそうだ。私は夫に心底呆れ、同時にメイドに対して小さな嫉妬心を覚えた。いや、訂正すると大きな嫉妬心だ。メイドと夫の浮気という裏切りに対しては発覚当初は怒り狂ったが、息子の説得があってメイドのことは許すことができた。しかし、いざメイドが正式に二人目の妻となってからは複雑な感情を抱くようになった。夫が私とメイドのどちらをより愛しているのかがとても気になるようになった。その事をメイドに伝えると、メイドは「奥様の方が愛されていますよ」と答えた。メイドは優しげな眼差しで少し悲しそうにそう答えた。


それから、今度は私からメイドに私の事、夫のこと、同じ立場にいることをどう思っているのかを聞いてみた。メイドは正直に色々話してくれた。前に仕えていた職をクビになり、新しい職を探していたこと。昔関係を持った男がメイドを探していたため、好都合だと思って近づいたこと。一緒に生活するようになり、夫の姿を見たり、着ていた衣類を洗濯するうちに我慢できなくなったこと。妻の妊娠が発覚してから、溜まっていた夫がメイドの自分に夜這いに来て思い通りになったこと。最後にメイドから妻となってから、自分も同じように愛されているのかがとても心配であると言った。



お互いの気持ちを話し合い、お互いに対して抱えるわだかまりを知った。このままでは私とメイドの関係は破綻する、そう確信した。おそらくメイドも同じことを思っている。互いに対する嫉妬が強すぎるのだ。そして私は言った。



「今からこれまでのことを清算しましょうか」
















それから私とメイドは家の近くの草原でこれまでの清算をした。簡単に言うと決闘もとい喧嘩だ。両者合意の上である。最初、メイドは自分だけが罰を受けるべき、つまり殴られるのは自分だけでいいと言った。私に手を出すなどもってのほかであると聞かなかったが、私はそれを許さなかった。それだと私にモヤモヤと罪悪感が残るから、対等に喧嘩をしましょう半ば強引に提案した。メイドも渋々うなづいた。


メイドは手を抜かなかった。元々は護衛の任についていたと言っていたから、かなりの実践派だ。その拳が顔面に入るたびに、意識が飛びそうになる。かくゆう私も元冒険者だ。殴られるだけではなく、一発入れられたら、一発必ず返している。この喧嘩は互角だ。

互いの胸ぐらを掴みあって、服がボロボロになってきた。私はオールインワンのロングスカートの洋服を着ていたが、破れに破れ今はほぼ下着だけで、半裸の状態だ。メイドも最初は黒と白のメイド服であったが、今は私と同じような状態だ。互いに顔は血まみれで、体にも暗い色の痣がくっきり現れている。


正直、互いのわだかまりを清算するにはここまでボロボロにならないといけないとは思わなかった。お互いに無言で全身全霊殴り合っている。




私たちの喧嘩は2時間経った今もまだ終わらない。




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