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姉ちゃんは同級生 ~井の頭の青い空~  作者: 山崎空語
第2章 小学校の頃の俺達 ~たぬきさんの縫いぐるみ~
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2-9 母さんが二人になった日(その1)~姉ちゃんって呼ぶね~

 夏休みが終わってすぐの土曜日の事だ。田舎のお爺ちゃんが来た。

「もみじ饅頭買うて来たけえ、食べんさい。」

「あ、ありがとう。お爺ちゃん。」

俺はお土産の冷えたもみじ饅頭があまり好きではない。食べれないって程ではないが。もみじ饅頭は宮島で焼きたてのを食べるのが一番だと思う。

「翔太君、さっき『あゆみ』い見せてもろうたんじゃが、よう出来るんじゃねえ。体育頑張りゃあ全部一等じゃねぇ。・・・ほいで、お爺ちゃん所の子にならんかいね。」

「なりません。」キッパリ!

「ほほぉ、そがいに嫌わんでもえかろう!・・・ほいでも大きゅうなったのぉ。」

俺はこのお爺ちゃんの広島弁が苦手だ。なんかバカにされているような気がしてしょうが無い。

「お婆ちゃんは来ないの?」

「ほうよ。ありゃー来んのんよ。もうええ歳じゃにのぉ。」

「父さん、子供に言っても。」

「ほうじゃのぉ。」

俺は何となく俺が居ない方が良い空気を感じて、2階の自分の部屋に上がった。もみじ饅頭を一つとお茶を湯呑に入れて。


*****


 翌日曜日の朝十時頃、俺は白い開襟シャツによそ行きのグレーの半ズボンにサスペンダーの、いわゆるお坊ちゃまスタイルにさせられて、お爺ちゃんと親父の3人でタクシーに乗り、吉祥寺に連れて行かれた。タクシーは東急デパートを通り過ぎて、しばらく走り、ボウリング場があるホテルに到着した。エスカレータで3階に上がり、和室に案内された。俺は少し興奮していた。ワクワクだった。

 まもなく、見たことのある小母さんとその子供とそれから、小母さんよりもっと年上の初めて見る小母さんが入ってきた。お爺ちゃんと親父が立ち上がったので、俺も立った。綾香小母さんは白っぽい高そうな和服を、もう一人の小母さんも小さい柄の和服だ。ハルちゃんは淡い草色のブラウスに紺色のスカートでよそ行きだ。俺はハルちゃんを見てペコリと頭を下げた。ハルちゃんもニッコリした。みんな緊張している。


お爺ちゃんがその場の張りつめた空気を一気につき崩す方言で、

「まあぁー、座りんさい。」

すると親父が、

「父さん、いいから。」

「そうかいのぉ。」


綾香小母さんたちは俺達の正面に座った。俺の向かいはもちろんハルちゃんだ。


「本日は遠いところをお母さんにもおいで頂きまして、ありがとう御座います。」

と親父が言うと、真ん中に座った小母さんが、

「いえいえ、おめでたい事ですから。」

少し沈黙があって、親父と綾香小母さんが目配せをしたように見えた。そして、親父が緊張した高めのトーンで言葉を切り出した。

「本日、私、中西健太と綾香は結婚いたします。今後ともよろしくお願い申し上げます。」

親父と綾香小母さんは、座ったまま同時に深くお辞儀をした。

「こちらこそよろしくお願いいたします。」

「よろしゅうお願いします。まあ、2回目じゃけえ硬い事は言わんでもえかろう。」

「父さん!」

「すまんのぉ、わしゃあ田舎もんじゃけえ、かしこまったこたあ出来んのんよ。」

大人たちは笑った。この時、俺は母さんが2人になった。ハルちゃんには新しい父さんができた。


2時間ほどかけて、食べたことが無いような料理が次々に出てきた。

爺ちゃんはすっかり酔っぱらって、上機嫌で広島弁が炸裂している。

おれは一頻り食べた後、ハルちゃんと話をした。


「ハルちゃん久しぶり。」

「そうね・・・3年ぶり?」

「かなあ・・・相変わらず大きいね。」

「そういう翔ちゃんは、まだ可愛いね。」

「ほっとけ!」

「ごめん。」

「ねえ、あの真中の小母さんは誰?」

「お婆ちゃんよ!」

「ふぅ~ん。」

「お母さんのお母さん。・・・翔ちゃんわかる?」


・・・俺は広島のお婆ちゃんが親父に言っていた事を思い出した。


「えっと、確か名字は上原って言うんだよね。」

「違うよ、藤本。上原はお父さん、あ、死んだお父さんの名字だよ。」

「ふぅ~ん・・・。」

少し沈黙が流れた。

「じゃあ、翔ちゃんのお母さんの元の名字は?」

「ああ、それなら篠原だよ。」

「そうなんだ・・・」

「上原と篠原かぁ・・・」

「どういう事?」

「・・・『原』が同じだね。」

「そうね!」


また暫く沈黙の時間が流れた。

12畳ほどのホテルの和室にはお爺ちゃんの広島弁の声と小母さん達の笑い声とが満ちていた。

俺はハルちゃんともっと話したいと思った。


「・・・俺達キョウダイになったんだね。」

「そうね。姉弟よね。」

「ハルちゃんは嫌じゃぁない?」

「ゼンゼン。翔ちゃんはどうなの?」

「いいよ。」

「よかった。・・・ねえ、聞いていい?」

「なに?」

「自分の事『俺』って言うようになったんだね。」

「ああ、いつの間にかね。」


・・・本当はいつの間にかじゃなくて、ハルちゃんが転校したのがきっ掛けだった。前にも言ったが、たぶん、ハルちゃんの暗黙の保護が無くなったので、自分自身が強くならなければと無意識に『俺』という鎧を纏ったんだと思う。


「ところでさ、いつこっち来るの?」

「一週間くらいしたら引っ越すってお母さんが言ってた。」

「そっか、楽しみ!」

「うん、私も。・・・ねえ、わたしの部屋はあるの?」

「あるよ。俺の部屋より広いよ。」

「へーぇ・・・いいの?」

「いいよ。ハルちゃんの方が大きいし。」

「どういう意味?」

「へッ?・・・別に意味はないよ。あ、一昨日姉ちゃんのベッドが届いた。」

「へー、ベッドなんだ。楽しみ。」

「これまではベッドじゃ無かったの?」

「うん。お布団だよ。」

「へー」


「ねえ翔ちゃん。これからも『翔ちゃん』って言っていい?」

「もち。・・・じゃあ、俺は『姉ちゃん』にするけどいい?」

「ええー『姉ちゃん』?」

「だってそうだろ? ハルちゃんのままじゃ変な気がする。」

「どうして?」

「だってさ、妹みたいじゃん。」

「そうかなぁ?」

「嫌?」

「ううん。嫌じゃないけど、なんか恥ずかしいわ?」

「じゃあ、それで決まり。」

姉ちゃんと俺は顔を見合わせた。

「ねえ、翔ちゃん。」

「なに?姉ちゃん。」

「ええーぇ・・・わたし達さ、姉弟になっちゃったから、もう恋人にはなれないね。」

「へー、そうなんだ。じゃあ安心ってことだ。」

「そうじゃないよ。」

「どういうこと?」

「それは・・・・・」

「ま、姉弟でなくても恋人にはならないんじゃね?」

「ええー!・・・翔ちゃんはわたしが嫌いなの?」

「好きだよ。恩人だから。」

「恩人?」

「うん。」

「なんで?」

「どうしても。」

「変なの!・・・でも好きで良かった。」


こうして、俺達は姉弟になった。

俺に突然できた『姉ちゃん』は・・・なんと同学年だ。しかも転校生だ。

この日、姉ちゃん達は会場のホテルに泊まるという事なので、俺達はタクシーで家に帰った。ハルちゃんと綾香母さんが来る日がなんかすごく楽しみだった。


 *****


翌週の金曜日の夕方7時過ぎ、親父と俺は羽田空港1階の到着ロビー『出会いの広場』に居た。

「2人共なかなか出て来ないね。」

「翔太、迷子になるからチョロチョロするな!」

俺は待つ事に飽きてしまっているのか、空腹のせいか、親父の期待に応えられない状態になりつつある。結局、人待ちの人垣の外に出て大きなディスプレイを見上げた。富山発のAMA320便はもうとっくに到着している事になっている。預けた手荷物の受け取りに手間取っているのだろうか。

『それにしても遅いなあ・・・』なんて思っていると、人垣の中からやっと2人が現れた。


「あ、綾香母さんだ。」

「おお、そうだな」

綾香母さんはキャスター付きのスーツケースを引き、姉ちゃんは赤と紺と黄色のチェックのリュックを手に持っている。親父と俺は2人の方に向かった。


「お待たせ。なかなか荷物が取れなくて遅くなったわ。」

「わたし、このリュック一回取り損なっちゃった。」

「お疲れ様。じゃあ行こうか。」

そう言って、親父は綾香母さんのスーツケースを引いて歩き始めた。


綾香母さんは親父の左側を、姉ちゃんとおれは2人の後ろに並んで歩いた。自然に。

「翔ちゃん待った?」と姉ちゃんが言った。

「ぜんぜん・・・『お帰り』姉ちゃん。」

「えっ!・・・『ただいま』翔ちゃん。」

姉ちゃんが右斜め下の俺に視線を向けたので俺達の視線が重なった。俺は久しぶりにハルちゃんの優しい瞳を見た。綾香母さんもちょっと振り返って、にっこり笑った。

俺は姉ちゃんに最初に何て言ったらいいか何度も何度も考えた。『いらっしゃい』はなんか違う気がしたし、『これからよろしく』もなんか変な気がした。だから・・・そう言った。

「リュック持とうか?」

「ううん、大丈夫。ありがとう。」


俺達は2階の出発ロビーを抜けて4階の展望レストランに上がって夕食を食べた。もっとも、窓際の席は埋まっていて、俺達が座った席からは時々離着陸の飛行機が通過するのが見える程度だった。景色より、夕食を食べながらの初めての団欒がなんかちょっとくすぐったかったと思う。


親父と綾香母さん話の内容はよく分からないが、こんな感じだ。

「片付け大変だったろう?」

「そうなの。要らない物捨てるのって難しいわ。」

「お母さんの様子はどうだった?」

「相変わらずよ。・・・茂樹さんが居るからひとまずは安心だけど。」

「そうだね。落ち着いてくれるといいね。」

「きっともう大丈夫。でないと困るわ。」


一方、姉ちゃんと俺の会話は解りやすい。

「姉ちゃん、荷物はそれだけ?」

「まさか、明日、引越し屋さんが届けてくれるはずよ。」

「沢山あるの?」

「そんな多くはないけど、どうして?」

「沢山あるんだったら、順平に言って手伝ってもらおうかと思うんだ。」

「私のはそんなに無いから大丈夫だよ。翔ちゃんが手伝ってくれるでしょ?」

「うん。もちろん。」

「それより、学校の勉強がどれ位進んでるのか心配だわ!・・・前の学校はたぶん遅れ気味だったから。」

「じゃあ、帰ったら教えるよ。俺、けっこう真面目にノート取ってるから。」

「ほんと!・・・助かるわ。」

「お安い御用だよ。」

「わたし・・・翔ちゃんと同じクラスがいいな。」

「そうだね。そうなったらいいね。」


 夕食を済ませた俺達は親父が運転する車で帰った。外はもう暗かったけど曇っていて星は見えなかった。だけど、車窓を流れる都心の夜景はガラス細工のシャンデリアの様にとても綺麗だった。助手席に座って親父と話している綾香母さんの声がとてもやさしく聞こえてくる。本当はすぐにでもそう言いたいのだけれど、俺は、『母さん』って自然に言えるようになるには、もう少し時間がかかりそうな気がしていた。


姉ちゃんの弾んだ声が車内に響いた。

「見て、あれ、東京タワー。綺麗!。」

「ほんとだ。意外と大きく見えるんだね。」

たぶん姉ちゃんは今日早起きして、引越しやら掃除やらを手伝って来たんだろう。高速をしばらく走って高井戸のインターを降りる頃には眠ってしまった。親父がルームミラーを見ながら、

「翔太、ハルちゃん眠っちゃったから、支えてあげなさい。」

「ああ。」

俺は姉ちゃんの方に少し寄って、自分にもたれかかる様に引っ張った。

「ありがとう、翔ちゃん。」と、助手席の綾香母さんが振り向いた。

姉ちゃんは俺の右肩にもたれかかった。ちょっと重い。環八から井の頭通りに入った時、姉ちゃんが気付いたみたいで、寝言のように、

「あ、ごめん翔ちゃん、わたし汗臭くない?」

「ぜんぜん。寝てていいよ。これからカーブが多くなるから。」

「ありがとう」

そう言ってまた眠った。姉ちゃんは汗臭くなんかなくて、・・・なんかいい匂いがした。

こうして、親父と綾香母さんと姉ちゃんと俺とは家族になった。


 *****


土曜日の朝は早く起こされた。姉ちゃん達の荷物が届くからだ。

「翔ちゃん、起きて!」

廊下から姉ちゃんの声がした。俺は半分寝ぼけてたけど・・・起きた。

「おはよう。」

「おはよう、翔ちゃん。朝ごはん出来てるから、下に来て。」

「うん、わかった。」


おれは1階に降りて、洗面台で顔を洗って、パジャマでタオルを首にかけたままダイニングに行った。そこにはこれまで見た事もない朝食がテーブルに並んでいた。フランスパンのトーストとスクランブルエッグとカリカリベーコン、それから、リンゴとレタスとチーズとヨーグルトのサラダ、さらに、オレンジジュース。

「す、すごい!」

「えっ!何が?」

「姉ちゃんはこんな朝食を毎日食べてたの?」

「うーん、そうでもないけど・・・でも、普通じゃない?」

「へーぇ」

これがお母さんがいる家の朝食なんだと思った。

「翔ちゃんはこれまで朝食はどうしてたの?」

「牛乳とコーンフレーク」

「あらら!」

「悪かったな、翔太!」

「そうじゃないけど、こんな朝食知らなかった。」

「じゃあ、これからはこんな朝食でいいわね。」

「うん、ありがとう母さん。」


『母さん』が意外と簡単に口から出た。


「え!・・・いえ、どういたしまして翔ちゃん。」

「えへへ!」

俺はちょっと照れながらスクランブルエッグを口に運んだ。すると姉ちゃんが、俺を見て、

「どう?」

「え?・・・うん、美味しい。」

「・・・たくさん食べてね。それ私が作ったんだよ!」

「姉ちゃんが?・・・美味しいよ。」

「炒めるだけなんだけどね。」

「お母さん!」

「はいはい。もっとレパートリー増やそうね。」

「はーい。」

「春香ちゃんが作ってくれるものは何でも美味しいと思うよ!」

「お父さん、そんなにハードル上げないでください。」

「あはは、そうか、ごめんごめん。」


 朝食の後、オレンジジュースを持ってリビングでテレビを見ていると、ダイニングから親父の声がした。

「翔太、もうすぐ予定の8時半だから、着替えろ」

「うん。」

俺はジュースを飲みほして、2階に上がってTシャツとジーンズに着替えた。


予定の時刻ピッタリに玄関でベルが鳴った。引越し屋さんは、たぶん近くまで来ていて、時間まで待ってたんだと思う。

親父が出た。

「おはようございます。美術引越センターです。今日はよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「早速ですが、この『ハルカ』と書いてある荷物はどちらに運びましょうか?」

「それは娘の物ですから2階の右奥の部屋にお願いします。」

「では、『ア』と書いてあるものはどちらに?」

「それは1階の奥の部屋にお願いします。」

姉ちゃんの荷物は白い整理タンス、学習机、段ボール箱が5つで、引越し屋さんがあっという間に運び込んだ。綾香母さんの荷物も15分くらいで運び終わった。

すると、作業をしていた4人が玄関に集まって、何か伝票の様な物を確認して、力持ちそうな2人が外に出て行き、細身の2人が残って、その内の1人が親父に話しかけた。

「ご主人、最後になりますが、ピアノはどちらに置きましょうか?」

それには母さんが答えた。

「あ、ピアノはリビングの奥の壁際にお願いします。」

「承知しました。」

その細身の作業員さんは母さんが指さしたリビングの奥に入って行って、巻き尺でスペースを確認した。

「テレビとサイドボードを10センチほど左に寄せてよろしいでしょうか?」

「はい。お願いします。」


その時玄関には、さっき外に出て行った2人が運搬ベルトを肩に掛けて黒いアップライトピアノを軽々と運び込んでいた。

「スペースを確保するからちょっと待って!」と細身の人。

「了解。早くしてくれ。」とピアノを運んでいる人。

こうして、細身の2人が手際よくテレビとサイドボードを移動して、空いた奥のスペースにピアノが置かれ、その位置を母さんが確認して、引っ越し作業が完了した。

「以上完了です。」

と細身の人の1人が他の人に『チーフ』と呼ばれている頑丈そうな人に報告するように言った。すると、チーフは上着のポケットから紙をを取り出して、

「これで全部ですがご確認ください。」

と言ってそれを親父に渡した。親父はそれを広げて目で読んで、

「どうもご苦労様でした。」

そう言って、封筒に入れたお金を渡した。

チーフがそれを確認して、領収書を書いて親父に渡し、

「明後日段ボール箱を引き取りに参りますので、よろしくお願いします。」

そう言って、1礼すると、引越し屋さんはさっさと帰って行った。9時半過ぎだった。結局、俺も姉ちゃんも荷物運びをするチャンスすらなかった。


それから昼前まで姉ちゃんは自分の部屋に閉じこもって片付けをしていたと思う。

俺は『手伝おうか』と言ったが、『大丈夫だから』と言って断られた。まあ、見られたくない物もあるんだろうと思った。

俺はすることが無くて、自分の部屋でゲームをしたり宿題をする準備をしたりして時間をつぶした。実を言うと、姉ちゃんの部屋から時々聞こえる物音がなんか気になって、ゲームにも宿題にも集中できなかった。


昼前、リビングに降りてテレビを見ていると、出前の寿司が届いた。

「翔太、春香ちゃんを呼んできてくれ。」

「うん、わかった。」

俺は2階に上がって姉ちゃんの部屋をノックした。

「はい、なあに?」

「お昼だよ。」

「わかったわ。これを片付けたら行くから先に行ってて!」

「うん、じゃあ下で待ってる。」


ダイニングに行くと、いつもよりちょっと大きめの寿司の入れ物が2つ並んでいて、母さんがお吸い物の準備をしていた。

「美味しそうよ」

「うん、俺、ここのお寿司好きだよ!」

「良く食べるの?」

「それほどでもないけど、まあ時々。」

「月に2回はとってるかな!」と親父。

「そうなんだ。」

「男所帯だったからね。」

そこへ姉ちゃんが降りてきた。

「うわー!、お寿司だ!。これって、お引っ越し祝い?」

「いや、そう云う訳じゃないけど、今日はお母さんが忙しいからね。」

「美味しそう!」

「それじゃ頂きましょうか!」

と綾香母さんが言ったのを切っ掛けに、俺達はお腹一杯寿司を食べた。


 俺は腹一杯になったせいか、リビングのソファーでいつの間にか眠ってしまった。親父が何度か来て俺を起こそうとしたみたいだが、綾香母さんが寝かせておいてくれたらしい。綾香母さんは荷物が多いから判るけど、意外にも姉ちゃんのお片付けは翌日の日曜日も続いた。そのおかげで俺はダンジョンの大ボスを2匹倒すことができた。日曜日の夕方には、玄関横にたたまれた段ボール箱が束ねて置かれていた。

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