Stage of extra
Stage of extra
[第5部予告]
夢を見た。それは温かな家族の夢。
小さな畑に種を蒔く姉、庭で洗濯をする妹。姉は家の前を通りがかった近所の住人と会話を交わし、妹は近くに寄ってきた野良猫に向かって手招きをしている。誰かの鼻歌が聞こえてくるような、長閑な田舎の集落の午後。
空から照らし出す太陽は柔らかい光を地上に送ってくれる。秋色に染まった草原が、黄金の穂並みのように揺れている。
僕は草地に転がって、ウトウトと空を見ていた。姉さんの世間話は絶え間なく、野良猫と遊ぶ妹は楽しげに声をあげている。草木が揺れる音が耳に心地良い。そんな……夢を、見た。
「……。……」
目を覚ますと、そこは薄暗い部屋だった。カーテンの隙間から白い光が差し込んでいる。僕はベッドの横の窓を開けて、そして外を見つめた。暗くて、空気の悪い街。下を見下ろすと昨日から裏路地に住みついた老人が、ぼろぼろの布を頭まで被って眠っている。
僕は空を見上げた。夢の中のような温かな太陽はそこにはない。
「……」
ふと、ドアをノックする音が聞こえて、僕は振り返って応えた。扉が開いて、廊下からも朝の光が差し込んでくる。
「おはよう、クリフ」
部屋の中を覗き込んで、彼女は笑った。その笑顔は夢の中の姉さんにも妹にも似ていなかったけれど、何故か少しだけ懐かしいような感じがした。
陽が昇れば、この街にもあの太陽の香りがするかもしれない。そんなことを考えさせてくれるような笑顔だった。
だから僕も笑って答える。
「おはよう。……シルヴィ」
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[ Sanatorium ]
僕等は叶わない夢を見る。