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奪ってくれてありがとう。結果的に、感謝しています。  作者: ごろごろみかん。
3.殺しても死ななそう

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1話:撒き餌

「魔法使いの殺害!?ちょっと待ってください。私は生きてますし……それに何より、陛下は、魔法使いの存在を明るみにしていませんでした。それなのに」


混乱のあまり、上手く言葉がまとまらない。

だけど、リュンガー伯爵は的確に私の言いたいことを察したのだろう。

対面の椅子に腰を下ろしている彼が、頷いて答えた。


「はい。陛下は、今回の処刑宣告と同時に、魔法使いも実在するものだと発布しました」


「な…………」


今まで、伏せられてきた秘匿情報。

それを、陛下は明らかにしたというのだ。


(どうして?なぜ?)


私を捕まえるため?

だとしたら、魔法使いの殺害、という単語に紐づかない。


「……陛下は、私が死んだと思っている?私が、魔力封じを外したから……?」


そうとしか思えない。

魔封じが壊れ、魔力供給が途絶えた。

そこから、魔法使い(わたし)は死んだのだと判断した……と考えられる。


呆然としてつぶやくと、リュンガー伯爵が私の言葉を否定した。


「いいえ。まだ、気付かれていないはずです」


「それはどうして?」


「陛下……というより、そもそも魔力封じは、教会が作り上げたものなんです。管理は教会が行っています」


「そうなんですか……」


「魔力封じには、位置情報の補足、機能停止した際にそれを送信する機能は組み込まれていません。陛下や教会が気付くとすれば、魔障壁の力が弱まってきた時……ですが、この十八年間。魔障壁には必要以上の魔力(・・・・・・・)が充填されている。これは、向こう十年は賄える魔力量です」


「──どういう、ことですか?」


手に持っていたフォークを、テーブルに置く。

もう、食事という気分ではなくなっていた。


それに、リュンガー伯爵は眉を寄せた。


「……すみません。タイミングを誤りました」


首を横に振って答えた。


「教えてください。私は、魔力封じについて知らないことが多すぎます。あなたは、元聖職者なのですよね。だから、詳しい?」


「……そう、ですね。過去、聖職者の道を志そうと思ったこともあります。魔力封じについては、その時知りました」


混乱した頭で考えた。


(今、大事なことは何?)


陛下は、私を死んだと思っている。


それは、なぜ?


行方不明になったことは広く知られているだろう。

だけど、死んだと思われるには、あまりに早過ぎる。


何せ、私が失踪してから一週間も経っていない。


魔力封じが壊れたことを知って、関連付けたのではないのなら……。


私の疑問に答えるように、彼が言った。


「陛下は、あなたを誘き出そうとしているのでしょう」


「私を……?」


どういう意味がわからなくて、一瞬困惑した。


いつの間にか、リュンガー伯爵も食事の手を止めていた。


(私……つまり、魔法使いを、誘い出そうとしている?)


どうして?

どうやって?

なぜ?


分からないことが多すぎる。

リュンガー伯爵は、まつ毛をふせ、何か考え込むようにしながら、ゆつくりと言った。


「……あなたが生きているのなら、あなたは必ず現れる。あなたは、関係のない人間がいたずらに傷つくことを良しとする人ではない。自分に理由があるなら、尚更」


言葉に詰まる。

前も思ったけれど……


(やっぱり、リュンガー伯爵は、私のことを知ったように話すのね……)


それは、半年間、私のことを気にかけていたからなのだろうか。


今まで接点のなかった人が、私のことを知っている、というのはやはり慣れないし、落ち着かない。


それに──彼はどうも、私を良く見ている節があるのだ。

彼の口に上る私という人間は、とてもいい人そうに見える。


そんなことを考えていると、リュンガー伯爵が話を続けた。


「逆に言えば、あなたが現れなかったら、あなたは本当に死んだのだと、陛下は思うでしょうね。どちらに転んでも、彼は一つの情報を受け取ることができる。それは、あなたの生死の有無です」


「……はい?」


言ってることは理解できるのに、その意味が理解出来ず──いや、理解したくなくて、呆気に取られた。


(私が現れても、現れなくても、陛下は一つの情報を得ることが出来る……?)


それは、魔法使いが生きているか、死んでいるか、というその点について。


たったそれだけを確認するためだけに、陛下は。


「……それだけのために、陛下はローガンを殺そうとしている、と?そう仰るのですか?」


震えた声が零れた。


にわかには、信じられなかった。


まともな精神の人間なら、とても思いつかないことだ。

信じられない思いで尋ねると、しかし、リュンガー伯爵は淡々と答えた。


「彼は……あの人は、そういう人です。冷酷で、残忍だ。そういうことを、平気でやってのける」


しん、と食堂は静まり返った。


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