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双龍伝説  作者: 空色 理
第三章 伝説の再来
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4.響く声

 翌日。瑠璃が目覚めて階下に降りると、陽翔がいつものように朝食の用意をしていた。おはようと瑠璃が声を掛けると、陽翔は笑顔で振り返った。

「おはよう」

「……ハル兄、大丈夫?」

 陽翔の笑顔に微かな違和感を感じて聞いたが、陽翔は首を傾げる。

「ん?俺?」

「なんか、顔色悪くない?」

「そう?う〜ん……昨日がバイト初日だったから、疲れてるのかも。なんでもないよ」

 確かに家に帰ってきたのは二十三時を回ってからだったと思い返しながら、それでも瑠璃は心配だった。陽翔のなんでもないほど、あてにならない言葉はないと思っていたからだ。

「……本当に?」

 聞きながらジッと睨むように陽翔を見つめる瑠璃に、陽翔はとうとう根負けした。

「……実は……ちょっと、頭が痛いです…」

「頭痛薬飲んだ?」

「いいえ。ごはんを食べてからと思って…」

「じゃあ、座ってて。私が代わりにごはん作るから」

「…え…大丈夫?」

「いつも手伝ってるし、大丈夫!ほら、座った座った!」

 瑠璃は陽翔を椅子へと押しやり、エプロンを奪い取るとキッチンに立った。

「お?今日は瑠璃がごはんを用意してくれるのか?」

 そこへ父もやってきて、嬉しそうに声を掛けてきた。

 少しして、昨日の夕食の余りのチンジャオロースと、陽翔が作ったわかめの味噌汁、瑠璃が焼いた目玉焼きとウインナーが食卓に並んだ。

「はい。出来た。ちなみに、お弁当も詰めました」

 どうだ!と言わんばかりの様子で瑠璃は陽翔を振り返る。陽翔は吹き出して笑いそうになるのをなんとか堪え、「ありがとう」と返した。

「瑠璃もやれば出来るんだなぁ〜」

「これで料理が出来ないのは、父さんだけね」

「う……いやぁ~でも、父さんだって目玉焼きやウインナーを焼くくらいは出来るぞ」

「そんな低レベルな話で争わないでよ…」

 陽翔が苦笑交じりに会話に入ると、瑠璃と父は動きを止めて陽翔を見つめた。それから互いに目配せしては頷き合う。

「…え…なに?怖いんですけど…」

 陽翔はギョッとして、体を僅かに後に引いた。それは一種の防衛本能のようなものだったが、もう手遅れだった。

「瑠璃」と父が言った瞬間、瑠璃は素早く陽翔の背後に回り、両肩を掴む。父は陽翔を睨みつけながら、陽翔に近づく。

「え、ちょ…なになに!?」

 狼狽える陽翔を前に、父はにんまり笑った。

「ちょっと家事ができるからって、調子に乗るなよ!」

 言った瞬間、父は陽翔の脇の下に手を入れて、くすぐり始めた。

「ひやぁ!…あははは!や、やめ…!」

 笑いながら体を捩って逃げようとする陽翔を瑠璃が押さえつつ、隙を見て首周りをくすぐった。

「わっ!?…る、るりまで……あはははっ!」

「日頃の恨みだ〜!」

「へ?…ははは!…う、うらみ…?…あはははっ!」

 陽翔は手足をバタつかせながら二人から逃れようとするが、二人は華麗な連携を披露して、陽翔の抵抗を躱しながらくすぐり続ける。

「あはははっ!…わ、わかったから!…ははは!…ま、まいりましたっ!」

 陽翔は堪らず降参宣言をする。

「よし!」

 父は満足そうに手を止めて、瑠璃もそれに倣った。

「ハァ、ハァ、ハァ……ったく……朝っぱらから、何するんだよ…もう…」

「俺達の勝ちだな!」

「イェ〜イ!」

 笑い疲れて息も絶え絶えな陽翔を前に、父と瑠璃はハイタッチする。

「…何が"イェ〜イ"…だよ……二人とも、汗だくじゃんか…」

 そう言う陽翔も、髪や服はグシャグシャで、汗だくだった。

「人には向き不向きがあるからな。低レベルとか、簡単に言うなよ」と父が清々しい笑顔を浮かべて言うと、「はい。すみませんでした」と陽翔は素直に頭を下げた。

「ま、それは冗談としても……陽翔、あまり無理はするなよ」

「え?」

「体調が良くないんだろ?具合が悪い時くらい、周りを頼れ」

「俺、父さんにそんなこと言った?」

「父親の勘ってやつだ」

「そうですか…」

 これには瑠璃も笑った。それから三人はテーブルに着いて、いつものように朝食を食べ始める。

「……二人とも、ありがとね」

 食べている合間、陽翔がボソリと呟いて、父と瑠璃は顔を見合わせ、微笑んだ。

 

 

 その後瑠璃がいつも通り陽翔に送ってもらいながら学校に行くと、瑠璃の靴箱の側に清水の姿があった。内心げんなりしたが、靴を履き替える都合上、無視をする訳にもいかず、そのまま靴箱に向かうと、「おはようございます」と清水から声を掛けてきた。

「おはよう……って、大丈夫?」

 清水の目の下には黒黒とした隈が出来ていた。

「実は……あることに気がついて、不安で眠りが浅くて……」

「あること?」

 瑠璃が聞き返すと、清水は鞄の中から一冊のノートを取り出してページを捲って、中を見せた。そこには日付と時間と共に、文章が書いてあった。始めは日記かと思ったが……

「"佐藤さんのお婆さんが、宮内さんのお婆さんと話した後にお財布の入った巾着を無くし、佐藤さんのお婆さんは、宮内さんのお婆さんが取ったという話になったが、宮内さんのお婆さんは知らなかった。結局、巾着は佐藤さんのお婆さんの部屋にあったが、佐藤さんのお婆さんは置いた覚えはなかった。家族も、佐藤さんのお婆さんが宮内さんのお婆さんと話している時には、佐藤さんのお婆さんは巾着を持っていたと証言している"……何これ?」

「最近起きた、妙な事件の記録です。神主さんが坂下君のお祓いをしたと言っていたあとから、この町のあちこちで、変な事件が起こっているんです。オカ研のメンバーにも協力して調べてもらったところ、日曜日だけでも十件、昨日は五件確認されています」

 "オカ研"とは、清水が所属しているオカルト研究会のことだ。正式な部活になるには人数が足りないので非公式のクラブ活動であるが、空き教室を使いながら、不思議な事件や降霊術などを研究しているらしい。

 瑠璃は、清水からノートを受け取り、内容にサッと目を通す。初めに読んだお婆さん達の話のように物を無くしたと思ったらあらぬ場所から見つかった例や、確かに本人から聞いた話だったのに、確認に行けば身に覚えがないと言われたり、わざわざ行き止まりに突っ込んで事故を起こしたトラックの話だったり、急に目の色を変えて襲い掛かってきた友人、家族などの話……と、確かに不思議な話が多い。

「これが、牛鬼に関係するって言いたいの?」

 なんだか責められている気がして、瑠璃はついキツイ口調で聞いた。しかし清水は、あまり気にしたふうもなく、「はい」と頷いた。

「特にここ、"急に目の色を変えて襲ってきた"これ、坂下君に重なりませんか?」

「そうね――え?」

 思わず同意してしまってから、瑠璃は違和感に気がついた。清水に対し、研吾に牛鬼が取り付いていて、それを神社で祓ったという話をした覚えがない……。清水も瑠璃の困惑を察したようにああ、と声を上げた。

「私が坂下君の話を知っている理由ですか?実は、神主さんの息子さんである、楓君に聞いたんです」

 瑠璃は、余計なことを…と楓に対して一瞬怒りを覚えたが、清水の様子から察するに、定期的に神社に赴くか、叔父や楓にしつこく訊きに行ったのではないかと思われたし、そうなったら、話してしまうのも仕方がないと思った。

「そう。……だけど、あまり大ごとにしてほしくないんだけど……」

 ちょっと大袈裟なまでに不機嫌そうに言ってみたが、それでも清水は引かなかった。

「ですが、この事件の起こり方は異常ですよ!これが牛鬼のせいなら、一刻を争います。もし牛鬼が、実体を持って復活してしまえば、千年前のように町は破壊されてしまうでしょう。そうなったら――」

「私達、神器の継承者が居るでしょ。かつて牛鬼を封印した神器があれば、牛鬼を倒せるはず。それに、その変な事件だって、今調べたからそれだけ集まったかもしれないけど、知らないだけで、もっと昔からあることだったら?牛鬼に関係ないことかもしれないじゃない」

「そ、それは……そうかも知れませんけど……どちらにせよ、タイミングが良すぎます。仮に直接牛鬼に関係なかったとしても、牛鬼の妖気に当てられて、別の妖怪が動いているのかもしれませんし…」

「別のって……そんなに妖怪がいるの?」

「ええ。この辺りにもいくつか伝説が残っていますから…」

「へぇ…」

 瑠璃は軽く頭痛がする心地がして、額を押さえた。迷信だと突っぱねられたら良かったのだが、牛鬼が実在した以上、そういう妖怪もいないとは言い切れない気がする……。

(でも、今そんなことを心配したってしょうがない)

 とりあえず、どこかに逃げたであろう牛鬼を見つけ出し、封印し直さなければならない。どうにかして、居場所を見つけないと……。

「あ…あの……オカ研も、引き続き調査は続けます。何か分かったら報告しますから」

「うん。ありがとう」

 瑠璃がひとまずお礼を言うと、清水は嬉しそうに笑ってペコリとお辞儀をしては、教室に向かって行った。

 

           ※

 

 (風邪でもひいたかな…)

 陽翔は講義を聞きながら、引かない頭痛に悩まされていた。あまりに治らなければ、帰りに病院に寄るのがいいかもしれないと思っていると、ふと右肩を軽く叩かれた。

「雨宮くん。大丈夫?」

 隣に座る羽崎真美(はざき まみ)は、丸い瞳を更に丸くして眉根を寄せた。

「うん。ちょっと、頭が痛いだけ…」

「えっ!それは大変!医務室行ったほうが…」

 羽崎は大袈裟に言っては陽翔の腕を掴む。

「さっき薬飲んだから、じきに効くよ」

 陽翔は言いながらさりげなく羽崎から離れたが、羽崎は再び腕に手を掛けてきた。

「でも、辛そうだよ?私、ついて行ってあげるから、一緒に行こう?」

 羽崎は心配だという気持ちを前面に出して瞳を潤ませる。

(悪い子じゃないんだけど…)

 羽崎とは同級生で、この講義で会うだけだったが、最近は講義以外でも良く話し掛けてくる。ひょっとしたら、好意を持たれているのかもしれない。

(だとしたら、ちょっと面倒だな…)

 看病を口実に距離を詰めようと、医務室なり、病院なりについてくるかもしれない。

 羽崎には、別の大学に通う彼氏がいて、最初は彼氏との付き合い方についての相談を受けるくらいだったのが、やたら自分に声を掛けてくる辺り、彼氏との仲は良くないのか、あるいは別れたのかもしれない。

「羽崎さんの迷惑になるし、ヤバかったら自分で行くから平気だよ」

 陽翔が努めて笑顔で言うと、羽崎は「無理しないでね」と引き下がった。それにホッとしていると、

 

 ――我ノ望ミヲ聞クナラバ、瑠璃ダケハ見逃シテヤ

   ルゾ。

 

 陽翔の頭の中に声が響く。声が聞こえ始めると、途端に頭痛が酷くなった。

(うるさいな……いい加減にしてくれ)

 隙あらばこうして語り掛けてくる声に抗うのは、なかなかに精神力を要する。陽翔は直感的に、この声の主は牛鬼だと理解していた。

(坂下君にも、こうやってしつこく迫ったんだな)

 これなら、牛鬼の言葉に頷いてしまっても仕方がないと思いながら、どうすれば牛鬼を封じられるのか考えた。

 

 ――我ヲ封ジルノハ、不可能ダ。

 

(どうかな。真っ直ぐ神社に行って、叔父さんに頼めば…)

 

 ――我ニ同ジ技ハ通ジヌ。ソレニ、我ヲ引キ剥ガス

  事ハ容易デハナイ。今ノ宮司ニ、ソコマデノ神

  力ハ無イ。

 

 (なら、紅龍の槍で倒してやるよ)

 

 ――威勢ガイイノウ。然シ、オ前ハ雨宮ノ者デハナ 

  イ。矛ハ使エヌダロウ。

 

 (俺はちゃんと夢を見た。紅龍から槍を貰う夢を。……今なら、あの時紅龍が言っていた言葉の意味が、よく分かるよ)

 陽翔が十歳になって間もない時、陽翔は紅龍が自分の前に降り立つ夢を見た。紅龍は槍を陽翔に渡すと、「貴殿には荷が重いかもしれないが、私は貴殿の強い心を信じてこれを託す。貴殿の祈りに嘘偽りが無いのなら、必ずや矛は貴殿の声に応えるだろう。来たる災厄に備え、己の大切な者達を護って見せよ」そう言って消えた。

(あの時にはきっと、お前の復活は予見されていたんだ。それでも、雨宮家でもない俺に槍を託した……俺は、その期待に応えてみせる!)

 

 ――フン!

 

 牛鬼は面白くなさそうに鼻を鳴らしたきり、何も言わなくなった。それと同時に、頭痛が少し和らいだ。

(魂胆は分かっている。そうやって頭痛で苦しめて、意のままに操ろうとしてるんだな。そうはさせないぞ)

 陽翔は拳を強く握りながら、決意を固くした。

 

 

 無事に今日の講義を全て終え、陽翔は玄関へ向かう。頭痛は酷くなる一方だが、瑠璃に心配されるし、いつも通り高校に迎えに行こうと、頬を平手で打って気合いを入れた。

「雨宮くん。まだ頭痛い?」

「……羽崎さん…」

 その時、羽崎が待ち構えていたように、柱の陰から現れた。正直話している余裕がなかったが、心配してくれているのを無下には出来ないと、「大丈夫。少しマシになってきたよ」と陽翔は精一杯平気なフリをした。しかし、羽崎には通用しなかった。

「嘘。顔色、良くないよ」

 女性はどうしてこういう細かい変化に敏感なのだろうと、陽翔は思う。時折男同士の会話でも持ち上がる話題ではあるが、本当に男とは対極に出来ていると感じる。

「そう?じゃあ、やっぱり病院寄ってから帰るかな。じゃあね」

 それでも陽翔は明るく返して、駐輪場に向かおうとしたが、羽崎は陽翔の腕を掴んだ。

「一人じゃダメ!雨宮くん、自転車でしょ?そんな状態で運転したら危ないよ。タクシー使おう?私が付いてくから」

「いや…さすがにそれは悪いよ…」

 頭痛の原因が牛鬼である以上、いつ研吾のように豹変するか分からない。そうなった時、間違いなく羽崎は牛鬼の餌食になってしまうだろう。怪我をするか、最悪死んでしまうかもしれない……。

(巻き込まいためにも、今は一人で居ないと…)

「でもっ!…」

「陽翔!」

 羽崎が更に言い募ると、それに被さるように別の女の声がした。聞き覚えのある声に驚いて陽翔が玄関を見ると、そこには瑠璃の姿があった。どういうわけか、制服ではなく私服だった。

「えっ…瑠璃?なんで…」

 あまりの事に陽翔が固まっていると、瑠璃は大股で近づいてきて、陽翔に腕を絡め、膨れっ面で陽翔を見上げた。

「メッセージ、見てないでしょ」

「え?」

 陽翔は慌ててスマホを確認する。頭痛のせいもあって朝から通知の確認をしていなかったが、正午に瑠璃からメッセージが来ていた。そこには、『言い忘れてたけど、今日は職員会議だから午前で終わりなので、迎えに来なくていいからね。』と書いてあった。

「あ、ごめん……」

 陽翔が謝ると、「まあ、いいけど……帰ろう」と瑠璃は陽翔の腕を引いた。

「雨宮くん。その子は?」

 それまでポカンとしていた羽崎が、思い出したように声を掛ける。「ああ、この子は――」

「彼女です」

「…え?」

 陽翔が答えるのに被せて瑠璃が言った。陽翔は瑠璃がそうする理由が分からなくて呆気に取られる。

「陽翔は今日は調子が悪いので、早めに帰って休ませますので、お話があるならまた後日にお願い出来ますか?」

 瑠璃が早口に捲し立てる。羽崎も呆気に取られて、「あ…は、はい…」と返事をするしか出来なかった。

「陽翔。行くよ」

「あ、う、うん…」

 陽翔は、瑠璃に腕を引かれるまま歩いて外へ出る。

「自転車はどこ?」

「こっち…」

 瑠璃は陽翔の自転車を見つけると、「鍵」と言って手を差し出す。

「はい」

 請われるまま鍵を手渡すと、瑠璃は鍵を外して自転車を押し始める。

「あ、俺が押すから…」

 慌てて陽翔が自転車を掴むと、瑠璃は顔を顰める。

「頭、痛いんじゃない?私が押すよ。正門の側に叔父さんの車を待たせてあるから、そこまででいいし」

「え?叔父さん来てるの?」

「うん。ハル兄の調子が悪いから、迎えに行きたいってお願いしたの」

「そんな大袈裟な…」

「いいの!」

 恐らくは、メッセージに気づかなかったことで、かなり心配をさせたようだと、陽翔は申し訳ない気持ちになった。その一方で、後で叔父に牛鬼のことを相談しても良いかもしれないと思いついた。

(邪魔されなきゃいいけど…)

 まだ体を操られるようなことは無かったが、いつどうなるか分からない。特に瑠璃と一緒にいるのは危険だと思い、陽翔は気を引き締めた。

「そういえば…」

 歩きながら、陽翔は先程のやりとりが気になった。

「え?」

 陽翔の呟きに、自転車を押しながら少し前を歩いていた瑠璃が振り返る。

「なんで彼女のフリなんかしたの?」

 陽翔は純粋に気になったのと、話を変えて、瑠璃の心配を少しでも和らげられないかと思って言うと、瑠璃は少し顔を赤らめた。

「……さっきの女の人に絡まれて困ってるみたいだったから……ひょっとして、余計なお世話だった?」 

「ううん!助かったよ。あの娘、心配してくれてたんだけど、ちょっとしつこかったから」

「なら、良かった」

 恥ずかしいのか、瑠璃は前を向いたまま言っては、ズンズン先に進む。

「でもそれなら、妹だって言ったって良かったんじゃないの?用事があるとか言ってさ」

「……あの人、ハル兄が好きなんだと思ったから…」

「へ〜!ひょっとして、やきもち?」

「……」

「……あれ?」

 茶化すつもりで言ったのに、瑠璃からの返答がない。それでなんだか陽翔まで恥ずかしくなってきた。それから二人は、無言で正門まで歩く。

「陽翔。大丈夫か?」

「うん。ありがとう。叔父さん」

「気にするな。神主は案外暇なんだ」

 和成はニッ!と笑うと車のドアを開けてくれる。陽翔と瑠璃が後の座席に乗り込むと、和成は自転車を畳んで車のトランクにしまった。陽翔の自転車は、畳めるように出来ている。

「……あれ…?」

 和成の車に乗った瞬間、陽翔は急な眠気に襲われた。なんとか眠らないように頭を動かしたりしていたが、なかなか眠気は去ってくれない。

「眠いなら、寝たら?後で起こしてあげる」

 瑠璃が心配そうに言う。

「うん…でも……」

 瑠璃に聞かれないところで、和成に牛鬼のことを相談しなければならない。

(そうだ。あとで、メールすればいっか…)

 そう思うとますます眠気を堪えられず、陽翔は目を閉じた。

お読み頂き、ありがとうございます。

すっかり秋になってしまいましたが、これから先の内容的には、ヒヤヒヤするところなので、ちょうどいいということにしておきましょうw

投稿頻度がまばらですが、飽きずに読んでくれたら嬉しいです。

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