病院
「市街地で現場の判断のみで爆発物を使うのはいかがなものかとと声が上がって・・・」
ズキズキと痛む頭に響くニュースキャスターの声を聞いてエマは目が覚めた、フカフカの病床からゆっくりと起き上がり状況を把握しようと周りを見渡す。
「病院・・確か爆発に巻き込まれて・・・」
時計の針は12時を指しており看護師が同室の患者に病院食を配っている。
「気が付きましたか、気分はいかがですか?」
冷淡な目をした看護師が問う。
「頭が痛むがし、手足が死ぬほど痛いが多分元気だわ・・迷惑かけてすまねえ」
そう言うと看護師は何も言わずに病室から出ていき、しばらくすると医者を呼んできた。
「女の体でよく生きてたな、それもどの傷も深刻だが命に届くどころか後遺症も残らないだろう・・実に興味深い」
ヨーゼフ・メンゲルベルクと書いてある名札を下げた医者が包帯を巻き直しながら続ける。
「どうやら秘密警察の連中は君がレジスタンスの関係者じゃないかと疑ってるらしい、しばらくしたら話を聞きに来るだろうから覚悟しとくんだな」
「何勘違いしてるんだ私しゃただの娼婦だ、政治には全く興味ないね」
エマの反論を無視して医者と看護師は病室を出ていった、イラッときたエマは痛む足を引きずりながら手元にあった杖をついてゆっくりと出ると、病室前にあるベンチに見知った男が座っていた。
「お?ヨハンじゃねェか」
エマが驚いて声を上げると男が顔を上げた。
「君はエマじゃないか、どうしたその傷は」
腹部を庇いながらゆっくり立ち上がるヨハン、どうやら彼も怪我をしているらしい。
「私しゃテロリストのせいで秘密警察に吹き飛ばされたんだよ、そんでこのザマさ」
「それは申し訳なかった、俺はレジスタンスの鎮圧に参加して腹を撃たれちまってな、やっぱり君に忠告してから行けばよかった・・・」
エマが申し訳無さそうにするヨハンを座らせ、その横に座りヨハンの肩に手をおいた。
「別にそれはいいんだけどよ、聞きたいことがあるんだわ」
エマはヨハンの目をしっかり見て聞いた。
「なんでなんにもしなかった上にあんな大量の金を置いてったんだ?テメェになんの特もないだろ?」
「お腹が空いてその上寝床に困っていたんだろ?だからどっちも提供したし、しばらく楽に生活できるだけの金を援助した、それだけだが?」
ヨハンが不思議そうに返す。
「答えになってねェよ、なんの特があるんだって聞いてんだ」
強い口調で聞くエマに少し怯えつつヨハンが。
「い、いやただの一緒に食事をするだけかと思って・・特とか考えてなかったんだ・・」
と弱々しく言った。
「ハァ?・・・」
もうなんだかわからなくなって呆れるエマが次の質問を飛ばそうとすると。
「エマ・ルルーさんですね」
と何者かが声をかけてきた。
「悪いな、今このアホと話してんだ後にしてくれ」
そういて手で追い払うしぐさをしながら振り返ると何人かの偉そうな制服を着た男たちが立っていた。
「秘密警察のミュラーと申します、先日のレジスタンスの件でお話をうかがいたのですが、拒否されるなら強引な手段を取らせていただきますよ?」