枯れ始める末端
翌朝、エマはやけに広く感じるベッドで目覚めた、普段だったら隣りにいるはずの客がおらずとっても爽やかに起きれた。
「・・・?」
寝ている間にナニかされた形跡もなく、適当にベッドに入ったはずなのに温かい布団が優しくかけられていた。
ふと備え付けの机を見ると
「昨晩はお話できて楽しかった、申し訳ないが仕事が入ったので先に失礼する」
と書いてあるメモ書きと、封筒に入った現金が置いてあった。
「5、6、7、・・・え?多くない?」
いつもの三倍近い金額が入ってる封筒に驚きつつ、今日の予定を考えていたその時。
パーン パーン
とどこかで銃声が響いた、エマが恐る恐る窓から外を見ると大通りの方で、第三帝国軍の兵士に追われている何人かの共和国民の姿があった。
逃げる共和国民達は次々に捕まっていくが、そのうちの一人の男がエマのいるカトリーヌの宿屋に逃げ込んで来た。
「ハァ・・ハァ・・・秘密警察め・・」
カトリーヌは買い出しに行ってるらしく、幸か不幸か宿屋にいるのはエマだけだった。
しかし男が入ってきたのは面倒事に巻き込まれたくなかったエマがとっとと宿屋から出ようと、入口に近づいていたときだったのだ。
ドアを塞いだまま呼吸を整える男とエマの目が合う。
「出て来いクソ野郎!」
軍人たちが宿屋を取り囲んでいるらしいく、ドアを蹴ったり殴ったりしているようだ。
「面倒だなァ、なんでここに逃げてくんだよ」
エマが男に問う。
「・・奴らは第三帝国の秘密警察だ、俺達は今日のイベントで来る奴らの”総統”とやらを襲撃する予定だったんだが感づきやがったんだ」
どうやら男はレジスタンスの一員のようだ、第三帝国総統である”アンゼルム・ヒュラー”が正式に共和国の解体と国家弁務官区の設置を宣言するために華の都にやってくるらしい。
「なんでもいいけどさァ巻き込まないでくれよォ、面倒事はやなんだけど」
エマはさほど興味がないのか、男の気持ちを無視してかったるそうに言った。
「君は祖国がなくなってもいいのか?売国奴め!」
そう言って持っていた拳銃をエマに向ける。
「また銃かよ!昨日今日と!」
そう言ってエマが伏せようとした瞬間。
ドガーン!
と男が背で抑えていたドアが爆発し男とその周辺の壁を吹き飛ばした、どうやら秘密警察が爆薬を使って破壊したらしい。
男は上半身と下半身が引きちぎ即死していた、ワンクッション置いた爆風を受けたエマも吹き飛ばされ、近くの壁に激しくからだをぶつけてしまった。
「あぁ、うぅ・・」
声にならない声を絞り出して意識を保とうとしたものの、すぐに気絶してしまった。