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第0話 プロローグ

よろしくお願いします

 時に人は、なにゆえ生きることをそれほど望むのだろうか。


 さすれば人は、何をもって生きた証として死に絶えていくのだろうか。


 多くの人はそれらの答えを持たないまま、生涯のときを終える。


 一つの実例をあげて考えてみよう。

 義務教育の最後の仕上げの場である高等学校で生徒の一人が集団的暴力を受けていた。

 いわゆるイジメだ。


 暴力とはさまざまで、物理的、精神的から多岐にわたり被害者が苦痛を受ける。


 イジメを受けるのに何の原因もないということはほとんど有り得ない。


 ちょっとした事。そう、ほんの些細な一瞬の出来事からも発展してしまう。


 良くも悪くも受ける側が何らかの影響を与えてしまったがために、それは起こる。


 自らがイジメを受けていると自覚し始めたとき、その生徒は幼い頃から親しかった友人に助けを求めたそうだ。


 彼はその事を聞き、親身になって話を聞いてくれていた。

 独りではないと思えることで、人は想像以上に安心する。


 それでもイジメが止まることはなく、むしろ過激さを増していった。


 そんな状況でも心が折れずにいれたのは、やはりたった一人の友人である彼の存在が大きかった。


 そして数日後、耐えきれずこの世を去ることを選んだ。


 ある時から、友人は顔を合わせてくれなくなった。話を聞いてくれることも、守ってくれることもなくなった。


 その瞬間に、なんとか繋ぎ止めていた命綱は勝手に切れてしまった。


 最終的に生きたいという望みが絶たれ、半ば解放という名の死を選んだことに生きた証は存在するのだろうか。


 友人に守られていたという証が、生きたことの証明となるのか。

 その証が、生きることの理由となったのか。


 それを間近で見ていても、俺には分からなかった。





 ───20XX年05月03日


 地球は滅亡した。


 それは正真正銘、地球文明の崩落とともに人類の滅亡を意味する。



 その年、各国計20ヶ国によって結成され始まった人類宇宙計画の完成セレモニーが日本で行われた。


 近年新たに発見された惑星──斉門星は地球の10倍もあり、木星に匹敵する大きさを誇る。


 そして驚くべきは、その性質にある。

 これだけの大きさがあるにもかかわらず、主成分は地球と極めて近いうえに、探査機の初上陸時に生き物の生息を確認できたという。


 地球が自然現象によって人類存続の危機に陥る中、この上ない大発見となっていた。


 そして、多くの宇宙飛行士を乗せた機体がはるか上空へ向かって発射された。


 地球からはるか遠くにある斉門星へ行くために、現代の技術をもってすればわずか一週間で辿り着くことが出来る。


 それを可能にするのが、機体に積まれた巨大なジェット噴射砲だ。


 ありったけの火薬が詰め込まれており、数日間立て続けに噴射することが可能となっている。


 要は連続して爆発し続けてその力で進むというもの。

 歴代最高の核保有を誇るロシアの技術が全て織り込まれたもので、並の核爆弾とは威力が桁違いだといわれている。


 地球が滅びるには十分すぎるほどだ。


 程なくして、日本を発射した機体はまもなく成層圏へ突入しようしていた。

 それまでの時間、わずか20秒足らず。


 高度10kmへ到達し、対流圏界面へ問題なく侵入していった。


 機体は成層圏へ突入し、変わらず高度を上昇していく。


 その瞬間、機体ははるか上空で大爆発を起こした。


 ジェット噴射砲の突然の誤爆。積んでいた全ての火薬をもって爆発した。


 歴史上類を見ない大規模の核爆発を受け、10km下の地上にまで爆風とともに衝撃波が襲った。


 3000度の灼熱の爆風により空を飛行していた全ての旅客機は燃えて灰と化した。


 1000度の爆風によって街は焼かれ、外にいた人間は例外なくその熱線によって焼死した。


 そして、爆発の上空地点は成層圏のオゾン層に位置していた。


 核爆発により、大気中のオゾン層のおよそ半分が破壊された。


 それにより、有害な紫外線から地球上の生物を守る存在が無くなった。


 全てが、俺の計画通りになった───





 もうこの世界に用はない。


 人はある時から、こことは違う別の世界があると考え出した。

 そんな所があると想像するだけで、心が踊る。


 新たな生きる価値を見い出せるのかもしれない。


 そう思うと一刻も早くこんな世界を抜け出したい。


 いや違う。抜け出すのではない、手放すのだ。


「退屈でしょうがない。お前もそうだろ、有馬?」


「……少なくとも、お前のような人間はこの世界に生まれてくるべきじゃなかったと俺は思う。人を自殺に追い込み、何とも思ってないようなやつを人とは呼べないからな。その上、自分は自ら死んで異世界に行くだぁ?馬鹿げてるぜほんと」


「ああそうかもな。俺は馬鹿かもしれない」


 それでも、これもまた生きた証となるのだろうか。


「結局……いつまで経っても答えは出なさそうだ」

 

 頭のこめかみに刺したナイフの感触は、案外優しいものだった。

新しく始めました。

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