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二次創作集

噂のないところにクシャミは出ない

作者: 歌川 詩季

噂のクシャミ 4444【WEB】

検索用Nコード:N8127IL

作者:雨澤穀稼 先生

の二次創作です。

 作者の雨澤穀稼 先生より許可をいただいております。



 可愛くクシャミをするのは難しい!

 クシュン!


 おっと失礼。


 べつに、たちのわるい風邪をひいてるわけでもないから、そんなにみがまえないでくれ。

 人畜無害とは言えなくても。おれってば、わりと気のいいやつだなんて思ってるんだ。

 なんだよ?

 そんなこと、自分からわざわざ言うやつほど、うさんくさくて、あぶなそうだって?

 じゃあ、なにかい?

 おれって、危険なオトコだから、ヤケドしたくなきゃ関わるななんて言えばいいとでも?

 ひとむかしまえの、ハードボイルドじゃあ、あるまいし。


 クシュン!


 こりゃまた、失礼。


 でもまあ。おれがあぶないやつかはともかく。

 会ったばかりのあいてに、自分の本性(ほんしょう)をさらけ出すほど、迂闊(うかつ)なことはあるまい。

 それこそ、おれなんかより。あんたのほうが、あぶないやつだって可能性もあるだからな。


 クシュン! クシュン!!


 失礼、失礼。

 そう怒るなって。


 え?

 クシャミと、あぶないやつ呼ばわりしたこと。

 どっちを、あやまってるのかって?

 そりゃあ、あんたがどっちのことを怒ってるのかによるな。


 ちょ、ちょっと待ってくれよ。

 謝る。りょうほうとも、ちゃんと謝るから!

 もう少し、おしゃべりさせてくれないか?


 クシュン! クシュン!!


 ああ、大丈夫、大丈夫。

 どっかで、誰かがおれのことを、うわさしてるだけだから。

 まあ、どうせ、ろくでもないうわさなんだろうけど。


 お、笑ったな。

 そんなに、おかしいかい?


 じゃあ、さっきの、おわびに。

 おれの秘密をひとつ、教えちゃおう。


 じつはおれ、超能力者(エスパー)なんだ。


 いやいや、ほんとだって。

 だからって、スプーンをまげてみせろとか。

 あそこの空き缶を浮かせてみせろとか。

 そんなことはできやしないけどさ。

 超能力者(エスパー)にも、いろいろいるんだ。


 だから。あんたの下着をのぞき見なんてできないから、安心してくれよ。

 って、こいつは口がすべったか。

 おや? また気を悪くするかと思ったんだけど、意外とウケたみたいだな。


 クシュン! クシュン!!


 じゃあ、なにができるかって?

 いや、たいしたことができるわけじゃないんだけどね。


 おれは精神感応者(テレパス)でさ。

 しかも、ごく限られた能力の。

 だから、あんたの考えてることも読めないし。おれの考えてることを、口に出さずに伝えることもできない。


 クシュン! クシュン!!


 じゃあ、そんなのなんの役にたつのかって?

 そうだなあ、役には立たないかもしれねえなあ。


 でも、こんなおれでも。

 よきにつけ、あしきにつけ。

 だれかの記憶のなかにちゃんといて、ときには話題にのぼるってのがわかりゃ。

 それだけで、まぎれる孤独やさみしさだって、あるってもんさ。


 クシュン! クシュン!!


 ん? 言ってることが、よくわからないって?

 けっきょく、おれは超能力でなにができるのか?

 もったいぶらずに、教えろって?


 クシュン!


 言っただろ? このおれのクシャミ。

 こいつは、誰かがおれのうわさをしてるんだと。

 おれの場合、それは迷信なんかじゃなくて。

 このクシャミこそが、おれの精神感応者(テレパス)としての能力。


 おれのうわさを口にしたやつが、どこかにいたら。

 その想いが言霊(ことだま)になって、おれの能力がそれを感知する。

 そしたら——


 クシュン! クシュン!!


 こうやって、クシャミとして、それを知らせてくれるってわけさ。


 どんな噂かって?

 さあ? そいつはわからない。

 なんたって、クシャミが出るだけだもんな。

 どんなうわさかによって、クシャミにちがいがあるのかもしれないけど。そのうわさがどんなうわさか知らないまま、クシャミをしてるんだから、たしかめようがない。


 それでもおれなりに、少しは検証してみたところ。

 直接耳に届く、おれの話題にはクシャミが出ないことから。おそらく思考ではなく、声に出して言霊(ことだま)となったもののうち、耳に届いたものは除外されて、直接聞こえない「うわさ」だけに反応する仕様みたいだな。


 クシュン! クシュン!!


 なんだよ?

 信じてもらえないのかい?


 まあ、いいさ。

 誰にでも信じてもらえるなんて、思っちゃいない。

 それでも、話を聞いてもらえて嬉しかったよ。


 もう行くのか?

 それじゃあ元気で。

 また逢うことは、きっとないだろうけど。


 気が向いたら、おれのこと。

 変な、自称精神感応者(テレパス)がいたって、うわさでもしてくれ。



 そしたら、おれも。


 クシャミをするたび。こんなおれの与太話を、ちゃんと聞いてくれた女がいたって思い出せるから。

 ひょっとして、このクシャミは。あんたがうわさしてくれてるのかも——なんてさ。


 それだけで、まぎれる孤独やさみしさだって、あるってもんなんだよ。



 それじゃあ、元気で。


 ——ありがとう。



 クシュン! クシュン!!



 クシュン!!!

 超能力もの、好きです!


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【こちらの作品の二次創作です】
噂のクシャミ 4444【WEB】
作者: 雨澤穀稼 先生

【別リライト作品】
噂でクシャミ
― 新着の感想 ―
[一言] 元作品からのアレンジがすごい好みです……! クシャミをする時に、「あなたが噂をしてくれているのかな」って思うとは、なんてロマンチストなんでしょう。 この語り手の一途さに何だかきゅんとしてしま…
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