07 広まる噂
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2024年 7月12日 第2稿として大幅リライト。
『五加護姫』の奇跡――。
私が5つもの加護を授かったことは、国の隅々まであっという間に広まりました。王宮のお膝元である王都モンドールの大通りでは、道行く人たちの噂話で持ちきりです。
「聞いたか? 五加護姫様の話」
「さっそく、第二妃様の病を治したっていうじゃないの」
「神に選ばれた御子様に違いねぇ」
「どんな姫様なのか、見てみてぇなぁ」
五加護姫――。それが、私に付けられた愛称です。
1つでも国に繁栄をもたらす加護が5つもあれば、自分たちの暮らしが楽になるに違いない――。そんな期待感が街に溢れ、ダルトンやエリカを通して耳に届くのです。
きっと、父であるジスモンド陛下の心中は穏やかではないでしょう。加護の数で王位後継者が決まるわけではありませんが、民の人気は高まります。私の夫となって、王位を覆そうなどと企む高位貴族が現れないとも限りません。
そもそも私は、他国へ政略結婚させるために育てられました。周辺諸国との同盟の手駒として使うため、ダルトンとエリカを寄越して最低限のマナーと教養、護身術を身につけさせたのです。実際には二人とも、本気過ぎる英才教育を施したのですが……。
ジスモンド陛下はもう、私を他国へ嫁がせるわけにはいきません。5つもの加護を授かった私を他国へ差し出すなど、約束された栄華を自ら手放すようなものですから。――となると考えられるのは、このまま離宮に幽閉し続けるか、従順な領主に嫁がせるか。いずれにしても、私の自由を奪った上で、加護の力を利用しようと考えるはずです。
まずは、王家が盤石であることを民に示さねばなりません。おそらく夜会が開かれるでしょう。第一王子であるローレット殿下の後継者指名と、私のお披露目を行うのです。
ローレット殿下を差し置いて国を率いる気など毛頭ありませんが、このまま言いなりになって従うことが良いとも思えません。私とお母様にはあまりに自由がないのです。
さて、どうしましょう? 取りあえず、かまどの火を強くしましょうか。
「フエゴ様、もっと火を吹いてください」
「任せておけい! フーーッ! フーーッ!」
真っ赤な体の火の使い様が、筋肉質な体を屈めてかまどに火を吹いてくださります。尖らせた口と髪のない頭が、海の生き物であるタコを思わせます。――本の挿絵でしか見たことがないので、実際にどれほど似ているのかは定かでありませんが……。煮たり焼いたりすると美味しいらしいので、いつか食べてみたいです。
かまどの上の鍋がグラグラと煮立ちました。
「カレンよ、そんな些事にまで加護を使って、疲れんのか?」
頭をかいていた後ろ足を止めて、フェンが呆れた息を漏らしました。
「ちっとも」
実際に何ともないのです。たくさん加護を使うと、激しい頭痛がしたり、ひどい時には気絶してしまうそうですが、まったくその気配がありません。
「どういう精神力なんじゃ」
フェンがちらりと横目でダルトンとエリカを見ました。
「まったく……どんな鍛えられ方をしたのか」
ダルトンがおイモの皮を剥く手を止めて、悪びれることなく一礼をしました。
「この老体の全てを伝授させていただきました」
エリカは口笛を吹いてそっぽを向いてます。
二人とも、後ろ盾のない私が王宮で生き抜けるように、最大限のことをしてくれたのです。
感謝を込めて、今夜のメニューはおイモ祭りといきましょう。イモ煮と揚げイモとイモサラダですよ。
第8話を、7/16(火)に更新予定です。
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