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15 御使い様たちの思惑?

更新履歴

2024年 7月26日 第2稿として大幅リライト。

 控え室への帰り道は、来る時のように侍従が案内してくれません。それならばと、しばらく歩いたところで加護の力を使うことにしました。

 お願いするのは水の使いスウィー様と、火の使いフエゴ様。ドレスを綺麗に水洗いして頂いた上で、暖風で乾かして頂くのです。


 呼び出されたスウィー様は、ドレスの染みを水流で洗いながら不満そうでした。


「ねぇ、私って何だか洗ってばかりじゃない?」


 尖らせた口で暖風を当てているフエゴ様が同調しました。


「ワシだって家事炊事に使われてばかりだ。この間など、雨で半乾きになった洗濯物にフーフーさせられたぞ」

「加護の無駄遣いねぇ……。いつでもこの城を水に沈めてあげるのに」

「いやいや、ワシが百年消えぬ業火で包んで……」

「もう! 物騒な話はいいですから。今はお母様が国王陛下から賜ったドレスを綺麗にすることが、私の為になるのです」

「はいはい」

「仕方ないのう」


 2つもの加護を同時に呼び出した上に恐ろしい話をしている私を、廊下の柱ごとに立っている衛兵たちは見て見ぬふりをしています。


「フェン、どこへ行くんです?」


 驚いたことにフェンが私に背を向けて、廊下の先へ歩き始めました。尻尾がフリフリと動いて、うれしさが伝わってきます。――いったい何が? こんなことは初めてです。


「はい、終わったわよ」

「うむ。すっかり綺麗になったの」


 二人の御使い様がおっしゃるとおり、ドレスの染みは跡形もなく消えていました。


「ありがとうございます、スウィー様、フエゴ様」

「ドレスを汚した仕返しをするなら、いつでも呼びなさい」

「城を燃やしたあと、水没させるのも一興じゃぞ」

「私は何もしません」


 キッパリとした口調に、御使い様たちは少し驚かれました。


「ワインをかけられたぐらいで怒っていては、国がいくつあっても足りませんから」


 御使い様たちは顔を見合わせ、互いの心中を探っているようです。

 ――しばらくして、私に向き直られました。


「あなたの好きになさい、カレリーナ」

「お主の望むまま、いつでも力を貸してやろう」


 うっすらとした笑みを残すと、お二人は空に消えていきました。


 ――もしかして、試されたのでしょうか? 私が加護の力をどう使うつもりなのか探っているのかもしれません。思えば御使い様たちは、私を焚きつけるように物騒なことばかり言います。


(もし私が国を焼き尽くせと言ったら、実行するのでしょうか?)


 恐ろしくて考えたくもありません。これからも神の御使い様たちには家事雑用をお願いすることにしましょう。

 そうしている間にも、フェンはスタスタと歩いて行きます。


(私を置いて行くなんて……。いったいどこへ?)


 急いで後を追います。

 角を曲がって奥へ進むと、外の景色が見えました。扉の向こうにバルコニーが広がっています。


 そこで私は、ついに運命の出会いをするのです――。


第16話を、7/29(月)に更新予定です。


【大切なお願い】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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