笑顔の源 【月夜譚No.244】
彼女のカラーが眩しい。化粧や服装が、というのではない。彼女自身の雰囲気が眩しいのだ。
気配やオーラとでもいうべきだろうか。少女は幼い時から、そういった普通は見えないものが見えた。最初から見えていたから、不思議に思ったことはない。他者というものを理解できるまでは、皆も見えるものだと思っていたくらいだ。
幸いと言って良いのか判らないが、大人しく口数も少ない子どもだった為、それが見えるせいで周囲の人間から怖がられたり毛嫌いされたりすることはなかった。
少女にとっては日常のその風景に驚きを持ち込んだのは、彼女が初めてだった。
何色と表現し難い空気を背負った彼女は、出会った頃から眩しかった。何でもそつなくできるわけでは決してない。寧ろ失敗は多くて、誰かに助けてもらっているところを何度も見た。
けれど、そうやって手助けをしてくれる人が沢山いるというのは、彼女の持ち前の性格のお陰だ。いつも笑顔で明るく、誰に対しても温かく接する。それが彼女の眩しさの所以たるところであり、人が集まり易いのだ。
彼女と友人関係になって早一年。存在感の薄い少女は彼女の影となりつつあるが、彼女が笑顔を向けてくれると、その時だけでも陽の中にいるような心地になる。
少女は自分の頬をそっと撫でて、ふっと微笑んだ。少しだけ笑うことが増えたのも、きっと彼女のお陰なのだろう。そう思えることが、とても嬉しかった。