異世界へ
新作です、二日に一回更新できるように頑張ります
ニャー
「にゃー」
その世界には神がたくさんいました。それも腐るほどに。
神という存在は信仰され、畏怖され、誰かの心や記憶に残ることによって、存在することができます。
記憶に残り続ける神もいれば、時間とともに、忘れられ、堕ちて消えてしまう神もいました。特に、神の数が多いこの世界では消えてしまう神の数が、残り続ける神よりも圧倒的に多かったので、神々は必死でした。
神々は、この世界にいる人間という種族に目をつけました。人間の信仰はイメージがしっかりとしたもので神に与える影響が大きかったためです。
ほかの神が人間の信仰を得ようと必死になっている中、堕ちて消えそうになっていても、気にしない神がいました。
ニャーオ
「にゃーお」
その神は不自然なほど白い肌に、それとは逆に膝までありそうな真っ黒な髪の、10歳くらいの女の子の姿をしていました。
なぜ消えていないのか不思議なほどにその神は人間たちから信仰を集めるために行動するわけでもなく、ただ、ごろごろと猫と日向ぼっこをしたり、遊んだり、ほかの猫友を増やしたり、猫との縄張り争いに参加してみたりと、この世界のほかの神々とは違う、変わり者の神でした
この神がそんな穏やか?な時間を過ごしていたころ世界には大きな動きがありました。
それは、人間たちから忘れ去られ、いまにも消えてしまいそうな神がおこなったことが始まりでした。その神が人間からの信仰を得るためにしたのは、自分で災害を起こして、その災害から自分で人間を救うというものでした。いわゆるマッチポンプのような…。確かにそれは効果がありました。何せ人間からしてみれば突然、災害が起き死にかけ、それを神様が救ってくれたのですから。結果、その神は消えることを免れました。
もちろん、それを知った他の神々は、そんな方法があるなら使わねば、と真似をし始め、世界では嵐、地震、疫病など様々な災害が頻繁に起き、その災害によって人間はどんどんと数が減っていきました。
信仰する人間が減れば、信仰されていた神も消えてしまいます。消えることを恐れた神たちは、星の数ほどある他の世界へ行き、その世界の人間から信仰を集めることを考えました。そしてある程度の力を持った神々はほかの世界へと移動していきました。
ほとんどの神がいなくなった後、この世界には、ほかの世界に移動することもできないような弱い神々と、移動する必要もないくらいに人間から信仰されていて、力を持った神が六柱、残りました。
力を持った神々は、自分たち以外の神をほかの世界に害を及ぼしそうな神たちは消し、そうでない比較的、人間と共存をしやすい性質の神たちをほかの世界に移動させたり行動を始めました。またこの世界で災害などを勝手に起こさせないように、と。
最後に残ったのは、猫達と戯れてばかりの奇妙な神様でした。人間からの信仰を集めることもなければ人間を害すこともない、そんな神はほかの世界に送る対象でした。
にゃ~
「にゃ~」
「変な神もいたものね・・・」
にゃ?
「にゃ?」
「あなたで最後よ」
と女神が手をかざすと猫と神はこの世界からきえていました。
「あ、間違えて猫ちゃんも一緒に送っちゃった…まあ、大丈夫でしょ」
そうして、最後の神が他の世界へ飛ばされ、この世界には六柱の力を持った神々しかいなくなりました。
猫と神が気が付くとそこは、壁と天井が黒く、明かりもないけれど、なぜか暗くないという不思議な空間にいました。
猫と神は少し見つめあい
にゃ?
「にゃ?」
にゃ
「にゃ」
何を納得したのか、猫と神はいつもどうりに、神はその場で大の字で、猫はその神の上で丸まって寝始めてしまいました。この猫と神からしてみれば、ほかの世界に移動したのも場所が少し変わった以上の感想もなく、ましてや、この部屋の不思議など興味もありませんでした。
神にとってただ一つ気がかりなのは、寝る前に見た、頭の上にわっかが浮いていて、白い羽の生えた女の子が怒った顔で今にも大声を出そうとしていることでした。
読んでいただきありがとうございました。