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  作者: 野奈目 七詩
序章 一つの旅の出発点
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脱走・2

 次に俺が向かうところはルーンとの国境!それでついに国外逃亡成功!……なのだがその前に少し寄り道していこうと思う。


 今から向かうのはアードカノス邸だ。シルにはかなりお世話になった。シルが居なければ【模倣】の訓練もできなかった。シルはかなり優秀な魔法使いだ。魔法は炎、水、土、風、雷、氷の六属性があるのだが、その全てを使えたため、俺の使える魔法も増やすことが出来た。

 脱出計画だってシルが居なければ上手くいかなかった可能性が高い。そんなシルに対して何も言わずに出ていくのは流石に忍びない。


 と言っても今は深夜だから寝ているだろう。わざわざ話なんかしててバレたら元も子もない。それにシルも一緒ならそっちまで被害が行く可能性だってある。だから俺はシル宛に手紙を書いてきた。今からシルの家に行ってこれを置いてきたらそれでお別れだ。



○○○



 シルの家に着いた。シルの部屋は確か2階の1番右だったはず。


 俺は身体強化の魔法を使って2階まで一気に飛び上がると、手紙を取り出してシルの部屋の窓に挟んでおいた。これで朝起きた時に気づくだろう。……シル気づくよな?


 なんだか不安な感じもするが、ひとまずこれでもうこの国でやることは全部やった。あとはほんとに脱出するだけだ。さ、早いとこ国境まで向かってしまおう。


 

○○○



 ちょっとよ?ちょーっとだけ不味い事になってきたかもしれない。


 何があったかと言うと先程シルの家を出てから走っている間に、ルメストロ家の人間が兵を連れている所を目撃したのだ。幸いこっちには気付かれなかったけどあれは間違いなく俺を探してそうだった。


 やっぱりそこは流石貴族といった所だろう。発見も情報の伝達も随分早い。シルの家から出た後で良かった。…しかしこうなったってことは、すぐに国境にも監視が敷かれるな。家を出たとみたいに運良く眠ってくれてたりはしないだろうからなあ…、どうっすっかな。まあここで悩んでても仕方ない。バレないよう全速力で国境に向かい、そこの状況を見て打開策を考えよう。



○○○



 いや、やべえよ² 。これは非常に不味い状況になったかもしれない。


 あれからルーンとの国境に向けて20分ほど走ったのだが、国境に着いたらそこにはもう見張りの兵が何人か居た。今目で確認した限りだと5人。うむむ、どうしたものか。


 少しの間打開策を考えた。俺の脳内では思考が巡りまくる。


 ここで大人しくしていてもあいつらは退かないだろう。多分俺が見つかったからもう監視いいよん、という趣旨の通達が行くまでは監視はやめないはず。今は深夜2時30分過ぎ、深夜だから最低限の兵の数で済ませているのだろうが朝になれば恐らく増える。それに俺を追いかけている側が側なので通常の捕物よりもかなりの兵力を投入してくると考えた方がいい。国境監視も増え、国を出るのは絶望的になるだろう。そうなれば見つかるのは時間の問題、ゲームオーバーまっしぐら、お先ダークネスだ。終わりじゃんか……


 そうならない為にも今のうちに突破するのは必須事項、この状況から導き出される最適解は…

 

「よし、あいつらを全員ぶっ飛ばして正面から堂々と突破するか」


 よく考えてみろ、あいつらの人数はたかが5人、一人一人の強さも一般人よりはあるだろうがそれでも普通の兵、そこまでの強さではないだろう。今の位置からなら魔法で攻撃しても十分ダウンさせられるはずだ。

 もちろん俺の位置はおろか、ここに居るという事すらまだ気づいていない。先手を取れるのは確実だ。だがやはりここは一発でやる方がいいだろう。


 今は国境近くの崖の上にいるがここからあそこまではだいたい100mぐらいだろう。正確性と火力を考えると炎魔法当たりが適正かな。


「【模倣】、【炎弓】」


 小さく呟くと俺の手に炎が発生して弓の形が形成されていく。弦を引くと炎が矢を形作っていった。

 5人がちょうど集まった所に狙いを定めて手を離す。ボウッという音と共に炎の矢が監視目掛けて真っ直ぐに勢いよく飛んでいく。


 ドォン!という音で着弾を確認した。見れば5人の男がその場で倒れていた。よし、魔法も問題なく使えるな。一応使うMPを抑えて火力を減らしているので殺してはいない。殺しちゃったら本格的に逃げなきゃいけなくなるからね。


 あ、そうだ。こいつらの手当をしておこう。この場で直接魔力を使った攻撃をした訳では無いから魔力残穢は薄いはずだがそれでも少しは残る。だが最も残るのは直接【炎弓】を受けたこいつらの傷口だろう。しかし、魔力攻撃による傷はそれを治せば残った魔力とともに消える。


「【模倣】、【治癒】」


 掌に【治癒】を込めて5人を触っていけば傷口は一気に消える。まあ傷が無くなっただけで疲労とか諸々は消えないからまだ気絶したままだけど。


 ともかくこれでもう障害はない。あそこの門をくぐれば脱走成功だ。


 俺は門に向けて一歩一歩踏みしめていく。そしてついに…


 キタ――(゜∀゜)――!!脱走成功!ついにやってやったよ俺は!何年にも渡って見た夢への第一歩、それでいて最も大きな歩みをついに踏んだ。


 嬉しくて仕方がない。ついに…ついに実現するのだ、俺の長年の夢、初めて見た夢が。


『世界を自由に旅する』という夢が。

 



 













 



これで脱走編は終わりです。次からは冒険的な旅の話が始まる(はず)

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