アルトスの過去・2
アルトスの両親が死に、クルドに引き取られてから5年が過ぎた。5年、すなわち彼は10歳になった。今日はアルトスのステータスが開示される日である。
この世界では最初のステータスを見るためには、教会に行って聖職者によって見てもらう必要がある。
だが、名門貴族ルメストロ家ともなれば専属の聖職者、それもかなり凄腕の人を雇っている。だからわざわざ教会へ行かなくても家でステータスの発表を行えるのだ。だが、名門貴族のルメストロ家の慣例として一族の者のステータス発表は大衆の前ですることになっている。大衆からしてもどんなに凄いステータスなのかが気になるのだ。
「き、緊張するなあ…」
「お前はルメストロ家の、しかもあのベケッド兄さんの息子だ。きっといいステータスだよ。」
ステータス発表を前に緊張しているアルトスに対し、クルドが心にも無い言葉を言う。
「では時間です。アルトス様、こちらへ来てこの水晶玉に両手を当ててください。」
「は、はい」
聖職者に言われるままアルトスは水晶玉に両手で触れる。ズズと力が吸われる感覚が少ししたあと、水晶玉が白く輝き始める。そしてブンッと空中に光の文字でステータスが表示された。
「おっ、出たな。」
「どんなステータスなんだ?」
周りがざわめき始めた。が…
「……は?」
「え?えーーっと…」
すぐにそのざわめきは消え、皆黙ってしまった。それもそうだろう、その時表示されたアルトスのステータスは
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名前:アルトス・ルメストロ(10)
レベル:1
HP:100/100
MP:100/100
スキル一覧
なし
固有スキル
模倣Lv1
・消費MP5000
・相手の放った技を放つことができる
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というものだった。
「おい、どういうことだ。固有スキルを持っている人間は世界でもほんのひと握りだ。それを持っているのはいい、だが何だこの能力は。弱すぎないか。それにスキル「なし」とはどういうことだ。これでは何も打てないということだろう。」
クルドが起こったように発言するが、その心の中では笑っているようだった。
この世界において、固有スキルは魔物たちはその種類ごとに持っていることもあるが、人間で持っているのは極々稀な例である。また固有スキルはスキルに比べたその強さから、持っている人間は各国の騎士団などの部隊、また冒険者ギルドなど様々な所で重宝される。しかし、アルトスの固有スキルはどう見ても使いずらく、はっきり言って弱い。
更に問題なのは通常のスキルの方だ。スキルというのはステータス発表時にあるものを磨くことはできても、新しく発現することはほとんどなく、可能性は限りなく0に近い。剣術や武術、魔法などもスキルの内であるため、スキル「なし」では何もできないのだ。
「え?え!?」
アルトスは驚き、困ったように言う。
「これじゃ、次のルメストロ家当主はクルド様で決まりだな。」
「ああ、あのルメストロ家なのに、こんなに酷いステータスだとは思わなかったよ。」
名門貴族の、それも優秀なベケッドの血を継いだ者のステータスだからとかなりの期待をしていた観衆達やルメストロ家の人間はアルトスのステータスの酷さに驚いた。
この日から皆アルトスを落ちこぼれとして侮蔑の目で見るようになった。また、身内からはクルドを筆頭に嫌がらせなどが度々起こるようになった。それはまだ子供のアルトスにとっては精神的に辛いものがあった。
段落が変わった時に空白を開けてから書くということを覚えました。誰か褒めてください。