アルトスの過去・1
2話です。よく書く気がおきたと思います。
「フフフ…完ッ璧だ。実に素晴らしい。俺は天才なのではないだろうか。」
自分の立てた計画のあまりの素晴らしさに思わず笑ってしまう少年、そうアルトス・ルメストロである。傍から見れば一見近寄ったらまずいやつだと思われそうな気持ち悪いこの光景だが、アルトスからすれば喜びに溢れているのである。
彼の長年の夢であった「脱走計画」、彼はその最終段階に到達しようとしているのだ。
なぜ彼はここまでこの計画に対する強い感情を持っているのか、それは彼が「脱走計画」を思い立ったきっかけでもある彼の過去が関係している。
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時は遡り10年前、彼がまだ5歳頃のことだ。
アルトスは彼、そして彼の両親と共に暮らしていた。彼の父親であるベケッド・ルメストロはルメストロ家の次期当主候補だったため、アルトスも幼いながらにしてそれなりに裕福な暮らしをしていた。
また、彼の母親であるリルカ・ルメストロはクルスト国内、特にアルトスの住んでいる王都では名の知れた美人であった。またリルカは誰にでも優しく、そういった面でも良い評判がたくさんあった。
そんな2人の間に生まれたアルトスはそれはもう幸せな日々を過ごしていた。
だがそんな日々も長くは続く訳もなく、ある日突然終わってしまった。
彼の両親が用事で遠出をした。その日のうちには帰れる予定だからとアルトスは家で待っていた。だが夕方を過ぎ夜になっても、いつまで待っても両親は帰っては来なかった。そして翌日、ベケッドどリルカの事故死が確認された。乗っていた馬車が山道を通っていた時、道が崩れてそのまま落ちていったそうだ。
両親のいなくなったアルトスはルメストロ家で彼の叔父、つまりベケッドの弟であるクリド・ルメストロの元で育てられることになった。だがそれは単純な善意や親を亡くしたアルトスに対する哀れみなどではなかった。
ルメストロ家はクルストの名門貴族である。ルメストロ家の現当主はアルトスの祖父である、カース・ルメストロだが、そろそろなかなかの歳になってくる。ということは、当主交代が近く、その次の当主の座はは誰になるのかが問題だ。今までだと、カースの長男であることやベゲッド自身の能力から見ても、ベケッドが当主を継ぐことは半ば確定事項だった。しかし、そのベケッドが死んだことにより状況が変わってきた。
次の当主候補は現時点で2人。
一人目はクリド・ルメストロだ。彼は現当主カースの次男であり、ベケッドの次に当主を継ぐ可能性があった。だが、クリドはそこまで能力が高いという訳では無い。いや、一般人に比べれば高いのだが、ルメストロ家というブランドにいる点で考えると少々低いのだ。
そこでもう一つの可能性として出てくるのが、二人目、アルトス・ルメストロだ。この世界では10歳になれば自分のステータスが見れるようになる。彼はまだ5歳だが、カースが当主の座を降りるまではまだまだ時間がある。つまり、彼の年齢は関係なく、ステータス開示まで余裕で待てちゃう訳だ。
さて、話は戻るがクルドがアルトスを引き取り、育てることにした理由、それは「育てる」という名目でアルトスを「監視」しておくことだった。とりあえずアルトスが10歳になって、ステータスが分かるまでは育て、そのステータス次第で、つまりクルドではなくアルトスが当主になる可能性が高くなってしまった時に、アルトスを処分するつもりだった。
そうして、アルトスの監視生活が始まるのであった。
1話に比べて本文が長くなりました。頑張りました。誰か褒めてください。