ヴェンデッタについて
【開発経緯と現状】
150年前の旧大戦期、対飛翔体戦用に人類が開発した人型機動兵器。
自律機動体群の猛攻により劣勢へ追いやられる中、蓄積された数多の戦闘データを基に作り出された。
多大な犠牲と堆積する無念の末に完成へ至った故『復讐』の名を与えられた。
それまでの自律機動体群と互角以上の戦いを繰り広げ、戦況を盛り返すほどの性能を誇る。
だが飛翔体が新造した上位自律機動体群、重殲滅駆動体の登場を受けて、再び苦戦を強いられてしまう。
文明崩壊後では新規製造する技術が失われているため、先史の遺構から発掘した物が利用されている。
完全な状態で見付かることは非常に稀で、殆どの場合は半壊した機体や一部パーツのみが発見される。
これを他の発掘品で継ぎ接ぎし、強引に修繕紛いの改造を施した物が使われる。
それでも尚、強大な戦闘力を人類に与え、自律機動体群との戦いを可能にするため、人々が生存するには無くてはならない重要な遺物。
かなり無茶苦茶な整備状態でも動くのは、内部機関に及ぶまで全体の剛性が高く、経年劣化に強いということ。機体毎の各部が共通規格によって設計されている点から安定接続し易いという、二つの特性が大きい。
旧大戦期の主力兵器であったため、現在での発見例は比較的多い。
ただしある程度の技術と資材、作業施設が整っていないと改修できず、必然的に運用可能なコロニーは限られて来る。
ヴェンデッタをまがりなりにも整備できるコロニーは、その保有戦力によって自律機動体群から護られ、存続と発展がしやすい。
また操作マニュアルといったものは失われて久しく発見もされていないことから、搭乗し十全に操運するには直感的なセンスが求められる。故に誰でも扱える物ではない。
【機体概要】
全高8m前後。
脊椎動物を模した強化型内骨格を柱に、人工筋肉準拠の複合靭帯を纏い、神経系に相当する伝達機関を張り巡らせた巨躯へ、強固な戦闘用外装を鎧う。
搭載ジェネレーターから生み出される高出力を機能的に取り込み、発用へ耐える独自設計から根幹の堅牢性は極めて高い。
各部の稼働域が広く、傑出した運動性能に起因する優秀な三次元機動能力を有する。
更に複数併設されるブースターユニットによって、高低及び緩急自在の高速跳躍機動が可能。
幾多の兵装を任意に扱える装備幅の広さが、柔軟な任務適応力を実現している。
機体特性やパイロットの嗜好によって換装の自由が利き、戦闘スタイルを選ばない。
抜きん出た機動力を活かしたヒット&ウェイ、撹乱適性、敵の死角を容易に取る強襲性、大火力兵装を自在に扱える機体出力、武装選択に於ける自由度の高さなど、基幹ポテンシャルは自律機動体群に迫るべきもの。
【アクチュエータ】
アクチュエータ駆動干渉型によって制御される。
フレーム全体に配置された数万基の小型アクチュエータが自律しつつ、相互に関連・連結し、全体で一つの系として動作する仕様。
この連結駆動には既定の型が存在しない。そのため干渉し合うアクチュエータが変わる度に新たな系が形作られ、状況に応じた自在機動が行える。
これによって例え既存の部位が破壊されても、他部のアクチュエータが代替稼働し損失部を補填するため、即座に停止はせず継続運動が可能。
小型アクチュエータは構造材に形状記憶合金を用いており、ジェネレーターで生み出されたエネルギーを運動に変換する。
エネルギー変換効率は極めて高く、変換時におけるロスの発生が最低レベルに抑えられている。
そのため内部損耗が嵩まず、各パーツの耐久性は極めて高い。
【操縦システム】
パイロットが機体胸郭部のコックピットに収まり、自ら操縦することで稼働する。
操縦は両腕へ連動する左右の操縦桿、
ブースター出力・下半身駆動を統括する踏式脚部操運弁、
上半身及び体幹制御を処理する背骨ユニットの三位で行う。
操縦桿はパイロットシートのサイドへ設けられ、銃のトリガーガードに似た守部を外側へ持つ。
グリップは縦型に握り込む形を基本とし、その状態からの押し込み、引き戻し、横倒しまで操運領域が広い。
またグリップの裏側には複数ボタンが並び、左右ごとに個別の指運操作で、機体両手の全指へ対応。細やかな挙動を実現できる。
レガースユニットは操縦桿の下方部に設置され、足を乗せると自動で固定ベルトが装着される。
踏み込み、踏み戻しへ遺漏なく反応し、オートバランサーの補助を受けつつ、腰回り以降を駆動させる操脚機関として働く。
スバインユニットは座席背凭れに組み込まれている脊髄型の装置。背後から人体へ密着し、パイロット感覚と同基する仕様。機体がダメージを負った時など、衝撃によりパイロットの操縦姿勢が崩れるのを防ぐ役割もある。
【コックピット】
コックピット内部、パイロットシートの前方部にメインスクリーンがあり、最も大きな空間を占める。
ここには機体頭部のアイカメラが取得した外部映像が映し出される。
並行してメインスクリーン右上端部にセンサー画像も表示される。
メインスクリーンの左右には内側へ向かう形でサイドスクリーンがあり、こちらはサブカメラの収集した機体周囲映像が展開。
加えてパイロットシートの両側へ、小規模のホログラムモニターが6つ出力される。
これにはジェネレーターの稼働状態、フレームのダメージ率、全体損耗値と活動限界までの猶予値、装備武装の残弾数や性能情報、僚機との通信ライン、そしてパイロットのバイタルパターンが映され、状況の推移に連動して刻々と変化する。
【Operating System】
他の細々とした調整やバランサー周りは、一括制御管理機構として搭載される『Operating System』が対応処理する。
OSは各パーツに搭載されている専用制御機関を統括する役割を持つ。
外力による機体姿勢の乱れを回復する、大型武装使用時の反動に対応する、などといった受動的制御の管理を行うもの。
各制御機関は能動的制御(パイロットが自発的に行う機体制御)に於ける動きのデータを補完することで、各種センサーが変化情報を感知した瞬間、機体レベルで最適化された運動を実行する。
これによりアクチュエータ駆動系を自律的に転回させ、一度で複数の反応が同時に発動し、高速躯体制御の対応が叶う。
パイロットが機体を運用し続ける程に能動的制御情報は蓄積され、OSの補完データは確度が上がり成長していく。
機動反応の信頼性と選択幅が増大するため、パイロットからの操作情報伝達時間が短縮され、機体側反応速度の向上化が図られる。
ただしパイロットが変わると蓄積データか反映されず、初期状態からのスタートとなるため乗り継ぎによる有用性は皆無と言っていい。
【火器管制システム】
火器管制システムは強化型内骨格に存在するメイン制御系と、アクチュエータと同時に各パーツへ埋設される派生系の端末機関から成る。
統合制御システムと連動しており、パイロットを補助して、レーダー、腕部、腰部、脚部、肩部各武装の制御機関へ命令を伝達する。
射撃系、砲撃系、ミサイル系、近接系、あらゆる武装に対応し、これを即座に柔然運用可能にする高レベル演算処理システムが肝。
またロックオン索敵系へも優れ、カメラ内の敵をロックするまでの時間が短く、一度で多数の標的を一括捕捉することが出来る。
複数個所の武装を同時使用する際、狙撃点移動速度の低下を抑える並列処理能力の高さもポイント。
【ジェネレーター】
ヴェンデッタの稼働エネルギーを生み出す最重要機関。
機体の中心点である腹部に格納されている。
稼働エネルギーを生成し供給するため、発電機構と蓄電機構の双立によって構成される。
発電機構は超高密度重粒子吸蔵内燃システムによって成り立ち、生成される高濃度粒子を爆縮・開放することで、巨大なエネルギーを生み出すことができる。
これはメインフレームを動かす為に使用される。
蓄電機構は、発電機構の生成したエネルギーを蓄積するコンデンサが中心となった部位。平常時に稼働エネルギーはコンデンサへと蓄えられており、戦闘モードが起動した折にコンデンサを通して、各内蔵ユニットへと送られていく。これを糧とすることで外付けのエネルギー消費系の武装が運用可能。
標準状態では最大運転の80%程度に出力係数が抑えられている。
これはメインフレームへの負荷を低減し、機体の継戦能力を保持するための措置。
意図的に臨界値100%まで引き上げることで、超大出力のエネルギーを生成し、著しい損耗及び稼働時間の短縮と引き換えに、メインフレーム各部の性能を倍増させる裏技も存在する。
【各種武装】
旧大戦期に製造されたヴェンデッタ用の大型武装は数多く、現在でも発掘・回収が折々に進められている。
近接格闘用のブレードやナックル、中距離射撃を目的として銃火器類、遠距離攻撃に秀でたミサイルや大型砲など多種多様。
専用装備と呼べるものはなく、どの機体でも各武装を幅広く扱える。
パイロットの戦闘法や機体の調整傾向に合わせ、使用する武器を限定する使い方もあれば。状況に即して次々に装備を変えて対処するという使い方もある。
機構が単純な物は出回りやすく入手難度も低いが、エネルギー武器のように複雑で難解な物は現状修理が不可能なため、状態の良い物が発見されない限り使える機会がない。