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転生したら攻略対象(♂)でした  作者: ペンギンスター
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森での魔獣退治

 私は町で週末の魔獣狩りに向けた装備を購入し、学院の訓練場へ向かった。

 もうすっかり薄暮の空になっていたが、うっすらと弓の的が見えるほどの明るさは残っている。


 弓の的に向かって、新しく買ったダガーを投げてみる。

 ダガーは弓の的に軽く突き刺さった。

 ラピスは令嬢時代に弓を練習していたので、コントロールは良い方なのかもしれない。


 刺さったダガーを引き抜き、今度はもう少し離れて投げてみる。

 何度か試してみたが、まともに狙えるのは三メートルくらいまでだろうか。


 今度は、思いっきり力を入れでダガーを投げてみる。

 ダガーの刃の四分の一ほどが的に突き刺さる。


 もっと深く、もっと正確に。

 私はしばらくダガーを投げては戻しを繰り返した。



 気づくと、辺りはすっかり暗くなっいた。

 私は、ラクロア家の父上からいただいた剣で日課の素振りを始めた。

 額に汗が滲む。最近は手の皮も厚くなってきた。


 一息つき、剣の刃を眺める。

(言ってはみたものの、こんな本物の刃物で戦うとか、できるのだろうか?)






 寄宿舎の部屋に戻ると、カイル王子がソファーの角に寄りかかり課題のレポートを読んでいた。

 襟元を少し開けたブラウス姿にクラっとする。

(平常心。平常心。いや、無心・・)

 煩悩よ去りたまえ。


「買い物はできたか?」

「はい。少し買いすぎてしまったかもしれません」

 私は、両手に抱えた荷物をクローゼットへ運ぶ。


 クローゼットに各種装備をしまいながらカイル王子に尋ねてみる。

「カイルは『ステータスオープン』という呪文はご存知ですか?」

「いや。知らない」

 カイルは顔を上げずに答える。

「自分のスキルを確認できる便利な呪文なのですよ。

 呪文を唱えたものにしか見ることはできませんので、試してみると面白いですよ」


「ステータスオープン?」

 カイル王子は少し驚いた様子で、自分の前に出現したであろうステータスウィンドウを見つめる。


  ■ カイル・ラドクリフ

  攻撃力 :5

  防御力 :4

  素早さ :2

  魔力  :3

  魔力属性:闇

  スキル :

  装備  :王子の剣(攻撃力+4)



「攻撃力が5だそうだ。鍛錬を積んできたつもりだが、まだまだなのだろうな」

「私は今、攻撃力が2です。カイルに追いついて見せますよ」

「ふっ。突き放してみせよう」

 カイル王子はにこやかに笑た。






 約束していた魔獣を退治に行く日となった。

 学院の裏手の森の入り口には野の花が咲き、高くなり始めた陽に暖かく照らされてる。

 私は乗ってきた馬を木に繋ぎ止め、首筋を撫でてやる。


 森の中は比較的明るく、足元の草もそれほど高くはない。

 カイルと私は、周囲を警戒しながら森の中を進んだ。


 ガサッと茂みが揺れた。

 私たちはカイルを前にした陣形で剣を構える。


 茂みから犬くらいの大きさの獣が三匹飛び出してきた。

 カイルは、飛びかかってきたうちの一匹に強烈な横なぎの一撃をくらわす。


 カイルの横を二匹の獣が通り過ぎ、私に向かって跳躍する。

「うわっ」

 私の大ぶりな一撃に一匹は飛び退くが、もう一匹が左腕に噛み付いた。


 姿勢を崩し尻餅をついてしまった私の左の小手に、血走った目で涎を流しながら獣が噛み付いて離さない。

 慌ててダガーを抜き、獣の首筋に突き立てる。


 私に飛びかかろうとした最後の一匹は、カイルが剣を振り下ろし仕留めた。


 周りに転がる三匹の獣は、額に十五センチはあろうかという角をもったホーンラビットだった。


「ありがとうございます。助かりました。」

 私は起き上がり、礼を言う。

「想像以上に動きが速いな。」

「はい。複数同時にかかってこられるとどうしたらいいのか。」

「獣は弱そうな方から狙うからな。

 次は一匹を確実に仕留めるよりも、広く浅く攻撃してみよう。」

 カイルはちゃんとPDCAを回すタイプのようだ。






 しばらく進むと、小さな池がある空間に出た。

 池の向こう側の二匹のラビットホーンがこちらに気づいた。


 私とカイルは剣を抜き、ラビットホーンに近づいていく。


「シャー」

 ラビットホーンが、牙を剥き出しこちらを威嚇する。


 三メートル程にまで近づくと、ラビットホーンが飛びかかってきた。

 カイルは続け様に二匹に剣を振るう。

「右、行きます!」

 私はカイルの横を抜け、傷を追ったラビットホーンに剣を突き立てる。


「ラピス! 右横!」

 右の茂みから太さ十センチはある蛇が太ももに噛み付いてきた。

「うっ」

 

「私が切る!」

 カイルが噛み付いたままのポイズンスネークを一刀両断する。


 剣を振り下ろしたカイルの背後に、手負のラビットホーンが額の角で突進してきた。

「ぐっ」

 カイルは振り返り、ラビットホーンに止めを刺す。

 倒れたラビットホーンを見、カイルが息をつく。


「噛まれたか?」

「はい。毒消し薬を持ってきましたので大丈夫です。カイル背中は?」

「薬を飲んだら、回復魔法をかけてくれ。」

 カイルは私の横に腰を下ろした。


 右足が毒で痺れ始めている。

 私は背中の道具袋から紙に包まれた毒消し薬を取り出す。

 紙を開いてみると、緑茶色の固形物が入っていた。不味そうだ。

 飲み込み、水で押し流す。苦い・・


 カイルの背中を確認すると、かなり深そうな傷ができていた。

 私は顔をしかめ、手をかざす。

「キュア」

 光が収まった背中を確認すると、傷口は塞がっているがまだ傷の跡が残っている。

「キュア」

 再度強く魔力を流し込む。


「ありがとう。ラピスがいないと厳しいな」

 カイルは表情を緩めて礼を言った。

「いえ。戦力的にカイルに頼りっぱなしで」

「全く無傷では乗り切れるものではないな。攻撃は受けても、致命傷でなければ良いとするか」


 足の痺れが取れるまでしばし池のほとりで休憩し、

 私達はあまり森の奥には踏み込まず、周囲を散策した。


 その後、二人で二十頭ほどの魔獣を倒していった。

 だいぶ魔獣の動きを予測できるようになってきた。


「そろそろ魔力が限界のようです」

 前を行くカイルに私は話しかける。

「戻るとするか」

 カイルと私は、森の入り口に向かって歩き始めた。



 森を出ると、繋ぎ止めていた馬が嬉しそうに擦り寄ってきたので首を撫でてやる。

 しかし、馬に跨るのも体が重くて一苦労だ。






 私は浴場でドロドロになった体を洗い流し、湯船からまだ日の残る大窓を眺めていた。

 森ではずっと緊張しっぱなしだったので、湯が沁みる。


「やはり実際の魔獣は、人の模擬戦とは勝手が違うな」

 隣で一息ついているカイルが宙を見ながら言う。

「そうですね。良い経験ができました」


 私はステータスウィンドウを開いてみる。


  ■ ラピス・ラクロア

  攻撃力 :2→4

  防御力 :1→2

  素早さ :1→2

  魔力  :3

  魔力属性:回復

  スキル :

  装備  :


  回復魔法:キュア ポイズンキュアnew


「攻撃力が2つ増えました。解毒の魔法も覚えたようです」

 これであのまずい物体を飲まなくて良くなる。よかった。


「ステータスオープン」

 カイルがつぶやく。


  ■ カイル・ラドクリフ

  攻撃力 :5→6

  防御力 :4

  素早さ :2→3

  魔力  :3

  魔力属性:闇

  スキル :

  装備  :


「私の攻撃力上昇は1だけだな。」

 カイルは納得がいかない様子で言った。

「次はもっと森の奥まで行ってみよう」


「鍛錬しておきます」

 私は笑って答えた。


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