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ダンジョンで賢者モードになる話し

作者: 大貞ハル

直接的な表現はありませんが、性行為を臭わす表現がありますので、苦手な方はお気をつけください

どっちかと言うとボケです。好きな人もご注意ください(

剣と魔法と冒険の世界。


この世界には魔物と呼ばれる怪物がおり、中には獣のように森に住むものも居るが、多くはダンジョンと呼ばれる地下施設に巣食っていた。どう言うわけか、魔物は人以外は襲わない。そもそも食料として襲っているわけではないようだった。


したがって、魔物は定期的にダンジョンを出て街を襲ったりしていた。


そんな状態を打開すべく冒険者と呼ばれる戦闘系職業の人間たちが定期的にダンジョンを攻略するようになった。最近ではある程度バランスが取れているようで、特殊なケースでもない限り、魔物が人里に現れるような事はなくなっていた。そう、特殊なケースを除いて。




「不躾で申し訳ないが、エビル殿とお見受けする…」

「…」


森を貫く荷車ならなんとか通れるかと言う細い道で、待ち構えていたと思われる女冒険者が声をかけてきた。いや、格好はラフな服装に革鎧一式にマントと言ういかにも冒険者と言う装備だが、身のこなしは騎士か何かだろう。この国で騎士になる、いや、騎士になれる女などそうは居ない。おそらくは王侯貴族の女性の警護を行うための要員くらいのものだ。つまりそう言う事だろう。


冒険者にも長髪の女性は居るが、それとは雰囲気が違い手入れの行き届いた綺麗な髪を編み込んでいるように見える。


「私はレジー。この先のダンジョンに行くのであれば、同行させてもらえないだろうか」

「自分で分かっていて言っているのか?」


声をかけられた男は黒ずくめのローブにマント、手に持つ捩くれた木の杖には巨大な宝石のような石が取り付けられていた。いかにも魔法使いと言う装備だ。


「この先にあるのはS級ダンジョン。そして貴方はそれを攻略可能と言われる天才魔法使い…」

「そしてSSS級パーティーを追放されたソロ冒険者だ」

レジーの言葉を遮って答える。


「貴方1人でも十分に攻略可能なだけの力があると聞いているし、それが出来るから、あのダンジョンへ向かっているのだろう?」

「まあ、俺1人ならどうとでもなるが、お前さんを連れていくと言うのは難しい」

「何故だ? 私が女だからか?」

「そうだ」

即答。


「女である事は止められないが、そこいらの男には引けを取らない力があると思う」

「いや、そう言う問題ではないんだ」

「ではなんだ」

「危険だからだ」

「危険は承知の上だし、何か起こっても貴方に責任を取らせたりはしない」

「いや…、はっきり言おう、君に危害を与える可能性があるのは俺だ。俺がパーティーを追放された理由を知っているか?」

「噂は聞いたことがあるが…」

「おそらく、その噂は本当だ。女性メンバーに手を出した」

「…」

「お前さんみたいな魅力的な女性と薄暗くて人気のないダンジョンに入って我慢する自信がない」


全く自慢にもならない。


「………。そ…、それ…。…それでも構わないと言ったら?」

「………」




「ほ、本当にするんですか?」

森を進み、途中の脇道をさらに進むと申し訳程度の柵に囲まれたダンジョンの入り口があった。

このダンジョンに出る魔物は戦闘力が高すぎて、並の冒険者や兵士では太刀打ち出来ず基本的に上級冒険者以外は訪れない。このダンジョンから魔物が出てしまったら森の中で戦うのは危険であるため、戦闘は最終防衛線である砦付近で行うこととなる。


「そりゃそうだろ。お前さんみたいな良い女の同意が得られているのに、しない理由がない」

「その、やたらと魅力的だの良い女だのと言うのは社交辞令で言わないといけないとかそう言う縛りでも…」

「いや、本心だよ? 元のパーティーメンバーに手を出したのは、ちょっと避け辛い事情があったが、あんたは俺の好みだ」

「…」

「それに、ここは高難易度ダンジョンだからな。どちらかが死んでから、手を出しておけば良かったとか悔やんでも遅いだろ」

「…なるほど?」


「とりあえずヤリながら話そうか。他の冒険者が来ないとも限らないしな。くくく」

「そ、そうだ、ここは別に閉鎖されているわけじゃないから誰がくるかなんて分からないんじゃないか…」

「興奮するだろ?」

「しないっ」


実際には高度な結界を張っているから、冒険者はおろか、魔物だって近づく事は出来ないが、そんな事は言わない。




「………」

無言で装備を付け直すレジーを待って、ダンジョン探索を再開する。

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫だ。問題ない」

ちょっと足に来ているように見えるが、本人が大丈夫だと言うのだから余計な事は言わない。


「それにしても、ダンジョンに来るのに明かりも持たないとか、どうするつもりだったんだ?」

今は魔法で杖を光らせて照らしている。

魔物には見えない都合の良い光だ。


「だ、ダンジョン探索は、はじめてなので、要領が分からないんだ」

ダンジョン探索と言うか、冒険者的な活動がそもそも初めてなんだろう。

要所要所で不慣れさが滲み出ている。


「まあ、そもそもそう言う約束で来ているから今更だが、奥に進んでから光を消されたら逃げようがなかっただろ。知らない男と歩くんだ、もう少し慎重にした方がいい。初めからそう言うつもりだったわけではなかったのだろ?」

「うっ…」


ナニをしていた場所はまだ洞窟の入り口からの光が薄ら届いていて、目が慣れれば見えなくもない、と言う感じだったが、ここはもう完全な暗闇だ。その暗闇に魔法の光に照らされた人影が揺れている。


「ゾンビ?」

「いや、アレはグールだ。ゾンビより素早く知能も高い。気を付けろよ」

「了解だ」

剣を抜くレジーに手をかざす。

「? こ、これは? 回復魔法、いやバフか」

「ついでに剣に火属性を付加しておいた」

「ありがたい」


近寄ってみると通路が広くなっていて、10体ほどのグールが待ち構えている。

魔法の火による先制攻撃に続いて剣を手にしたレジーが突っ込んでいく。

2〜3度斬りつけるだけでグールが倒れる。

当たりどころが良ければ一撃で首が飛ぶ。

レジーに襲いかかるグールが時折炎上する。

ほんの数分で全てのグールを倒した。


「なかなかの腕前だね」

「いや、きで…貴方の魔法のおかげだ。バフも凄いが、あの炎も並の攻撃魔法ではなかった」

「あの戦闘中に落ち着いて状況判断出来るだけで相当なものだと思うがな」


「魔石とか回収しなくても良いのか」

そのまま先に進もうとするエビルにレジーが尋ねる。

「ああ、グールは魔石は期待できないんだ。長期間かかって魔物化するゾンビと違ってある日突然グールにさせられた人間だからな」

「…そう、なのか」

「ああ、極端な話、さっきまで人間だった可能性すらある」

「………」


ダンジョンを攻略し続ける2人。

途中、グールや狼型の魔物に遭遇するが難なく撃退することが出来た。


狼型の魔物からは魔石といくらかの素材が取れたが、わざわざこんな高難易度ダンジョンに来なくても手に入るものだった。儲けよりも安全を確保するためにダンジョンを攻略しているのだろうか。


「さすがSSS級冒険者、と言うところか」

レジーが独言る。

「いや、俺1人ではA級が良いところだな。君が居てくれればS級くらいには手が届くかも知れんが」

「よく分からないが、さっきからそれは口説いているのか?」

「そうだが? ただ、バフやエンチャントのように前衛が居ることで効果が得られる魔法もあるし、他にも、な」

「なるほど?…」


「とりあえず今日はこの辺で野営にするか」

「え、あ…。…そうか、そうだな…。無理は良くない、か…」

「………」


「たいした物じゃないが、スープを御馳走しよう」

どこからともなく鍋と携帯ストーブを取り出して調理をはじめた。

収納魔法と言うやつだろうか。


「どうせ、食料なんか持ってきていないんだろ?」

「いちおう、干し肉と堅焼きパンを少し…」

「基本だな」


「…ふう。…。温かいものを食べたら少し落ち着いたよ…」

「…そうか。それは良かった」

食器や道具を片付けると、レジーの横に腰掛け、肩に手をかけた。

「…。またか?」

「いや、抱いて寝ようかと思ってな」

言いながら押し倒すとマントで包んだ。


「逃げたりはしないよ。と言うか、貴方が居なければ移動もままならない…ん…だ…」




「うおっ」

レジーがビクんとして目を覚ました。

「うおって、お前な」

「?!」

目の前に顔があってまた驚いてしまった。


「す、すまない。ダンジョン内だと言うのに爆睡してしまった…」

「気にするな、魔法だ」

「え?」

「嘘だ」

無言で右手を振り上げるレジーを制止して、お湯を沸かす。

温かい物を飲みながら、この先の方針を話し合うのだ。


「それで、お前さんの目的はなんなんだ?」

「うっ、そ、それは、その…」

「ダンジョンも狭くはない。目的が分からないと見落としてしまうかも知れないぞ?」

「…人を、探している…」

「…女か?」

その言葉に顔を見てしまったが、単に探すための情報として確認しただけのようで、申し訳ない気分になる。


「そうだ。私の主だ」

「そうか」


レジーはおそらく要人警護が仕事の女騎士だ。

女騎士を配置する必要がある要人といえば貴婦人だろう。

まあ、女好きの貴族かも知れなかったわけだが。


「よし、ではなるべく最速で追いつくようにしようか」

「え? 分かるのか?」

「まあ、だいたい、だがな」


魔物を狩りつつ奥へと進む。

ダンジョンと言うのは奥に進むにしたがって魔物が強くなっていく。

どう言う理屈かは分からないが。


「どりゃあああああ」

レジーが狼男に斬りかかるが軽々と躱されてしまう。

狼男の高い運動能力に翻弄される。

「加速のバフをかけるぞ」

「頼む」


いきなり加速した自分の動きに頭が混乱するが、訓練の賜物か、才能か、その剣は狼男の動きに追従した。

硬いが斬れない硬さではない。

魔法攻撃による支援もあり、その剣は狼男の心臓を貫いた。


「だいぶ難易度が上がってきたな」

「中層と言ったところか」

「?! これで中層か…」

「1人だったらここいらが潮時だったが、お前さんとならまだ余裕だろう」


どこからくる余裕か分からなかったが、熟練の冒険者の意見に少し安心した。




「貴様、姫…お嬢様に何をする」


ダンジョンを進むと、ふらふらと歩くドレス姿の少女に追いついた。

薄汚れてはいるが仕立ての良いドレスを着たその少女は何かに操られているのか、2人には反応しなかった。


だから魔法で止めた。


「ちょちょちょ、ちょっと待て、何を始めるつもりだ」

「魔法で眠らせているとはいえ、自分のご主人様の前でするのは興奮するだろ?」

「す、するか馬鹿!」


 ※超盛り上がった


「応急措置はしたが、開放するには本体を倒さないとダメだな…」

行為の後、もう一度少女に魔法をかけた。


「どう言う事だ?」

違和感を感じたが、そもそも魔法は良く分からないレジーにはなんの魔法をかけたのかも分からなかった。


「ここを見ろ」

少女の首元を示す。

襟元が血で汚れている。


「この、牙の跡は…」

「ああ、おそらくバンパイアだな。この子に案内してもらうしかあるまい」

「そんな、お嬢様を危険な目に合わせるわけには…」

「連れて帰っても繰り返すだけだぞ?」

「そ、それは…」

心当たりがあるのだろう。口籠る。



少女は魔物に襲われないようになっているらしいので、こちらも結界を張りつつ移動した。

結界を張っては移動し、結界を出そうになったら張り直し、かなりの労力だ。

普通の魔法使いにはまず出来ないだろう。




「どうやらアレがバンパイアだな…」

ダンジョンの奥の広い空間に岩を削って作ったような屋敷が建っていた。

その正面の庭のようになったところに、少女とそれを迎えるように出てきた長身の男が立っている。


2人は物陰に隠れて遠くから様子を伺っていたのだ。

「やつは真祖だな…」

「真祖?」

「そうだ。自らの力でバンパイア化した本物の吸血鬼だ」

「元は人間、か」

「ああ。そして真祖に血を吸われた男や非処女はグールになる」

「じゃあ、あのグールは…」

「そう言うこと。そして血を吸われた処女の中で低確率だがバンパイアに近い不死の女子が生まれる事がある」

「…」

「バンパイアは処女の血を吸うのが一番効率よく力を得られるんだが、そのバンパイアが不死の処女を手に入れる、と言うのがどう言うことか分かるか?」


「ああ、わ、わか、分かるが、なんで、今、こんな事をしてるんだ、お前は」

物陰でのし掛かられている。


「今更隠しても仕方がないし、俺の秘密を教えてやろう」

「秘密? 変人って事なら分かっているぞ?」

「否定は出来んが、実は俺は行為の後、賢者モードになるんだ」

「普通では?」

「隠語ではなく、正真正銘の賢者だ。っふう」


立ち上がってズボンを直すと呪文の詠唱をはじめた。


魔力効率アップ

魔力アップ

高速詠唱

多重詠唱

効果アップ


高位の魔法使いが使う、高度な呪文を使う下準備の魔法を使う。


「いくぞ、化け物。【聖域化】」

エビルが両手を掲げて魔法を発動すると、空洞全体が輝き出す。

光源があるわけではない。

全てが光に包まれたのだ。


賢者とは、聖職者と魔法使いの両方の最高位魔法を使える上級職だ。


瞬く間にバンパイアとその眷族たちが消滅していった。


「ほ、本当に賢者、なのか?」

「一時的にだけどな」

バンパイアの支配が解けた少女が崩れ落ちたため、2人で駆け寄った。


「どうだ?」

レジーが抱き起こしながら尋ねる。

「大丈夫だ。ここに居たやつが元凶で間違いなさそうだ。浄化されているから直に目覚めるだろう」

「そうか、良かった」


未婚の女性の身体を無闇に触らせるわけには行かないと、レジーが背負ってダンジョンを脱出することになった。

仕方がないのでバフで筋力を強化する。


「こんな事を聞いても良いのか分からんが、その、なんだ、パーティーを追放されたと言うのはやはり…」

「ん、ああ、仲間が死んでな。賢者モードになれば復活の魔法が使えるとカミングアウトしたのだが、誰とするかで揉めてな…」

「は?」

「実は女4人と俺の5人パーティーでな。蘇ったメンバーにも怒られて…」

「なるほど、貴殿が居るとパーティーが崩壊すると言うわけだな…」

「いや、うん、そう言う事、なのか?」

「変なところだけ不感症主人公みたいだな、貴方は…」




「やっぱりここに居たわ」

親玉が消えた事でだいぶ楽になったダンジョンを脱出すると、4人の冒険者が待ち構えていた。


「やっと見つけた」

「な、目を離している隙に新しい女が!」

「誰、その人…」


「いっぺんに喋るな。何しに来たんだお前ら。西に向かったんじゃねーのかよ」


「わ、私は、ちょっと、その」

「ミリーが抜け駆けしようとしてるから…」

「ぬ、抜け駆けって」

「私も抱いてもらおうかと思って」

「マチルダだけズルいの」


「いや、だから…」

「どうやら貴方が抜けた事で結局パーティーが崩壊したようだな…」




「あの4人は帰ったのか?」

「ああ。お前さんはお姫様の警護の仕事は良いのか?」


ここは王都の宿。

救出した少女は王女だった。

王女には血を吸われてから城に帰って目を覚ますまでの記憶は無いらしい。


王女の救出と、ダンジョンのボスを倒した報酬で纏った金も手に入った。

ダンジョン自体はしばらくしたらまた新たな魔物が巣食うだろうが、さすがにあんな物はそうそう出ないだろう。


「そもそも姫が襲われた時点で私の落ち度だったからな。あんな目に合わせておいて死刑にならなかったのがむしろ運が良かったと言うべきだろう」

「王女救出の功労者なのにクビってわけか。厳しい世界だな」

「でもまあ、そのおかげでこうしていられるわけだから、悪く無い」

仰向けにベットで横になるエビルに馬乗りになっていた。


「お前さんがパートナーになってくれると言うのは、俺としても嬉しいが」

「…なんか余裕がなさげじゃ無い?」

「じ、実を言うと、お前さんとはちと相性が良すぎるようでな」

「へー」

そう言うと腰をグリグリ動かすレジー。

「うおっ」


と、その時ピコンと言う音と共にメッセージが聞こえた。


()()値が規定値に達したのでクラス【賢者】が解放されました』


「まじかー」



正真正銘の賢者となったエビルであったが、相変わらず人気のないダンジョンへレジーと共に行くのだった。

読む方ではこう言うの好きじゃないんだけど、書くのは楽で良いなぁ、とか思いながら書いてました。はい。

酷い男に見えるけど、一応一目惚れって事でおねがいしやす

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