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パンダ桜の木の下で  作者: 稗田阿瑠(先攻)、ガトリングレックス(後攻)
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第十話 知りたくなかった真実

作 ガトリングレックス

炎に包まれる森。

春樹は急いで優の気配がする方へ未來を連れて向かった。


気配が分かる時点で自分が化け物なのだと理解する。


(俺は逃げねぇ。未來の心のそこを見た以上、逃げれる訳がねぇ)


信頼を吸収したことで心を読み取る力を手に入れた。

それは逆に残酷な真実を知ることになる。

例えばこの様に。


(死にたくない 。なんで俺達がこんな目に合わなきゃいけないんだ)


優の心の声。

彼は佳子に会いたいというより生きたいという感情が上回っている。


(優がどう思おうと、俺は戦う。絶対に佳子を取り戻す)


触手をうねらせ、彼は優がセンシャと戦うところを見て、咆哮に近い叫びを上げながら右側の6本の触手を槍の如く敵に向けて襲わせる。


「アラテヲカクニン」


センシャの砲台が春樹の方へ向いたその時。

優が飛びかかる様に砲台を切断し、さらに頭を斬り上げる。


「ソンショウ、ジンダイ」


溢れ出す黒い血が優の体に大量にかかり、滴り落ちていく。

そして追い討ちと言わんばかりに触手が装甲を貫き、彼らの命を奪った。


「センシャノセイゾンリツゼロパーセント。コレヨリクウバクヲカイシスル」


そのブラックは第二次世界大戦で使用された日本軍の空爆機と人間を掛け合わせたその姿。

軍服を着用し、足を折りたたんでいる。

プロペラが勢いよく回転させ、一気に上空へ消える。


「カンジョウノユウシャ。アンソクノユウシャ。ワレワレガココデケス」


爆弾を投下し、爆撃を開始する。

その直後優がブラックの位置を爆弾の落下音で特定し、右足を踏みしめ、高く飛び上がると鋭い爪が翼に突き刺さる。

予想外の事にブラックは動揺でバランスを崩し、急降下していく。

炎に飲まれた木々に激突し、地面に叩きつけられる。

エンジン部分が炎に引火し、大爆発を引き起こすと優も巻き込まれる。

大きく吹き飛ばされ、木に背中から衝突、ズルズルと落ちていく。

センシャに受けた返り血が木にこびりつき、一直線に滴り落ちた。


「優! 大丈夫かー!」


心配で声を張り上げ、駆けつけた春樹に、彼は生きていることへの恐怖が襲う。


(俺、あの爆発にも耐えたのか?)


自分は化け物だと自覚することを拒絶したくなるが、現実は現実。

突きつけられるものを受け入れられず、拳を握る。

すると優と春樹の体が光り出し、自分の世界に戻る合図がくる。


「春樹、また来てくれるよね?」


「あぁ、必ず戻って来る。だから待ってろよ」


春樹と未來の約束する光景に、(勝手に決めるな)と心の中で思うのだった。



優と春樹がパンダ桜の前に戻ると、人間の姿に変貌させる。


「じゃあな」


彼は素っ気なくそう言って手を振りながら自宅に帰ろうとする。


「待てよ」


春樹の怒りの声に、振り向くことなく無視して突き進む。


「お前は佳子を連れ戻したくないのか?」


その質問に対して、足を止め、こう返した。


「春樹はいいよな。佳子の事で頭がいっぱいで。人間に戻れないんだぞ。この力が現実で何の為になる? もしだ、もしバレたら俺達は破滅だ。化け物として家族にも友達にも見捨てられる。怖いんだよ。これ以上戦うのは…………」


それは心を読まなくても分かる本音だった。



あれから優は春樹と話をしなくなった。


パンダ桜に向かうのはただ1人、春樹だけとなった。


黒と白の世界に向かうのは春樹だけだった。


ゴールデンウィークが終わり、春樹が学校に登校すると、そこには優しい笑みを浮かべる白石が手を振っている姿があった。


「白石先生。どうしたんです…………」


にやけた顔で自然と彼女の心を読み取った時、とんでもないことが分かり、一瞬表情を歪める。


(この子はもう化け物なのね。まあ私も同じようなものか)


(えっ)


思わず聞こえた心の声。

自分の事を今化け物と認めた?


「春樹君、おはよう」


「おっ、おはようございます。先生………」


信じたくなかった。


(まあいいわ。優って子は諦めたみたいだし、存分に利用してあげましょう)


こんなのウソに決まっている。

そう思いたいほど信じがたいことばかり頭に入ってくる。


(白石先生。いや違う、こいつは………)


分かってしまった。

彼女の正体が………


(ブラック…………人間として平然と生きているのか………)


ブラックにも色々な特徴が存在するが、白石の場合は心を深く読み取ると理解できる。


(人間として生きたいから、だから白石先生を殺してその姿に成り切ってる。そして未來の世界で俺達を邪魔してる張本人)


幸いブラックは自分の能力を理解していない。

今日あっちの世界に行かなければ佳子の救出は難しくなるだろう。


「今日用事ある? ないなら………」


「すいません。遅刻したくないんで」


春樹はにやけ顔を保ち駆け足で白石の姿をした化け物から遠ざかっていくと、佳子と未來の事が心配になりながら、教室に向かった。


(釣れない子。このままだとあの方に首を本当の意味で飛ばされそうね。なんとか時字さんとあの子達を出会わせないようにしないと)


正直焦りはある。

安息の勇者になった春樹を自分含めブラックでは対処できない。

だからこそ利用したかったのだが。

優しい笑みを浮かべながら、保険室へ戻っていく姿はとてもブラックと言う異世界の化け物だとは到底思えない。

美貌の裏に隠すその姿とは一体………

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