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一話目

「う・・・・・・うそだあぁぁぁはは」

頭を抱えてしゃがみ込んでしまった青年を見ながら、名無しとなったオークはまだ状況を理解しきれずにただ呆然と立ち尽くしていた。それから何分、何時間経ったか分からないが、シクシク泣き続けている青年に質問する。

「結局、何が起こったんだ?」

ううと呻いてなかなか泣き止まなかったが、彼は鼻を啜りながら必死に涙を拭って話し始めた。

「我々は、アカウントを消されました。使用禁止です。入国も禁止されてると思います・・・。もう、村の皆にも会えません。むしろ犯罪者扱いですきっと。ああ、私はポークカレーさんの名を穢してしまったんです!・・・・・うわやっぱり!見てよ見てくださいよ、私のクラスが“流刑民”になってる。」

身を乗り出すように立ち上がって言った後、うおおとまた叫んでがっくりと肩を落とし、そのまま黙ってしまった。そんな様子に若干引きつつ、ざっくりと状況を理解したオークは

「つまり、あの女の“バン”発言はそういう意味だったわけかよ。つか、前告知無しでなんて有り得ねえ。俺らは見せしめですかっての。」

そうぶつぶつと女王に対して毒づいた。そして、自分もブックを取り出してクラスを確認すると、“ヒール オーク”と表示されている。ヒールって何だよ、と心の中で突っ込みつつ

「とりあえず、泣いてても何も始まらんだろ。お前この国出身なのに首刎ねられなくて良かったじゃん。で、いくつか質問したいんだが、この辺りは魔物とか出るのか?衣食住は?ペナルティとかは?金も無くなったよな・・・。」と、確認事項を述べていった。青年はむくりと顔だけ上げて答える。

「はい、魔物はいないよ。賊とか追剥ぎはいるけど。衣食住は手持ちでやりくりするか、道中に行商人がいることもあり、彼らから補充できるよ。ペナルティはこれから何処かに入国する場合に、犯罪者だと入れないとか、条件付与される等の処置を課される場合が多いね。お金はエモPがあるから、それで行商人から物品購入とかする感じかな」

エモPってなんだよ、と確認したところ、どうやらエモートルポイント(通称エモP)と言って、アカウントではなくブックの方に紐づき、各国のアカウントのポイントや金銭等と相互変換でき、共通通貨に近い意味合いを持つらしいことが分かった。青年はどうやらこつこつ変換して貯めていたらしくそこそこの量がある。自身の方は言わずもがなである。彼は全身凍るような心地がして、馬鹿野郎、と叫び、つい手加減なしで青年の頭をひっぱたいてしまった。青年は体勢を崩してよろめいた。

「・・・悪い、手加減できなかった。でもお前、そういう事はまず初めに教えろよ。俺何も知らなかったから、あの国でやったこと丸っとごっそりほぼ無意味じゃん。」

そう抗議すると、えええと困ったような顔をし

「むしろ冒険者でエモP知らないと思わなかったから・・・。やっぱオークってそういう感じなんだ。まあでも、報酬やドロップでエモP付いてるのもあったし、多少は入ってるんじゃないかな。それに、アカウントに紐づかない装備やアイテムとか、基本ステータスに入る経験値とかは残るんだけどな。」

と言う。少し腹立たしさを感じつつも、他に隠してることは無いか、と念を押すと、そもそもどこまで知ってるかも分からないと答え、先ずはブックを確認するように言ってきた。


ブックを開くと、先ずは自分のステータスが表示される。エモPもそこに記載されていた。装備が見たい、と心の中で呟くと通常装備とアバター装備のページが表示される。同様にして、アイテムや周辺マップも確認できた。アカウントリストもあり、自キャラに紐づく各国のアカウントを確認できるらしい、当然ボレロやその他育成中だったアカウントは消えている。ただ、そのページをよく見ると、複数のキャラを想定した表示になっていることに気付く。

まさかと思いつつ、キャラのリストがあれば見たいと心の中で呟くと、五体のキャラクターが表示された。丁度ゲームで作成していたキャラ数と同じである。

おい、と青年に声を掛けようとした瞬間

「うーん。私はただの流刑扱いだけど、ボレロさん、手配されているみたいだ・・・。あ、ここなら入国はできそうだね。意外と距離も近いし、ペナルティ次第だけど、大人しく過ごしてればその内ほとぼりは冷めるだろうから。」

と言ってきた。手配がどういうことか聞くと、ブックで周辺人物のリストを確認でき、そこからブラックリストとして手配されている人物を確認できるようだった。ここに名を連ねる人物は殆どの国で入国拒否されるか、即捕縛&場合によって処刑らしい。

「それかなりやばいだろ、その入国可能なところも大丈夫なのか?」

と尋ねると、但しペナルティありだって、とその国の情報を見せてきた。溜息をつきつつ、じゃあそこで、と言い、歩き出しながら自身の姿をエルフに切り替えた。途端に青年が驚いた。

「え゛!銀髪碧眼・・・その耳の形といい、雰囲気というか、エルフ?じゃあ、さっきまでのオークは変化だったんですか!?・・・ていうか意外とうら若い感じの女性とか~・・・。」

と言い、わざわざ横に並んでちょっと頬を赤らめながら、ちらちらこちらを見てくる。見た目も出で立ちも結構こだわったキャラではあったが、そんな態度をされると何だか気恥ずかしさがあった。

「変化とかではないけど。まあ、お前は使えない魔法使えるし。ていうか、オークだとやたらと馬鹿にされるんで。手配リストもオークの時の姿で登録されてるっぽいし、この姿ならごまかせるかなと思っただけだけどな。」

ただ、やはりゲームよりもステータスが低めで、クラスも元のマスターエルフではなく、ゲームではそれより低かったハイエルフと言うものになっている。装備の類はほぼゲームと同じだった。

オークは仕方ないよ、と青年は言う。あの国では、オークは害獣か奴隷かということが多く、人間とまともな会話ができる者は冒険者になることもあるが、ボレロの様に凶暴性が低い者は殆どいないらしい。

暫く進むと、国境の大きな門が見えてきた。二人はそこで、改めて名前を考えることにした。元々エルフのキャラは“サファイア”という名前だったので、そう登録しようとしたら、「NGワードです」と表示されてしまった。ああきっとこの国の重要な要素として使われてるワードなんだね、と青年が言って、ちょっと考えた後

「サフィーリアとかどうかな?入れたがってた名前に近いし、可愛いと思うなあ」

と提案してきた。まあいいかと思って、“サフィーリア”という名前で登録し、そういうそっちはどうするんだ、と聞くと、もうポークカレーさんの名前は申し訳なくて使えないからなあと呟いて、この前ボレロさんが作ってた“タナカ”とか、何かいい名前あるかなと聞いてくる。“タナカ”はちょっと違うだろと思い、少し考えた後“センバ”はどうかと聞いた。最初に見た1008の文字から適当に取っただけであったが、何でかもじもじ嬉しそうにしてて妙に不安な気持ちがよぎる。


かくして、“ボレロ”から“サフィーリア”へ、“ポークカレー”から“センバ”へと名前を変えた二人はアカウント作成を済ませ、その国へと足を踏み入れたのだった。

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