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じいさんが1つ咳払いをした。そして喉を鳴らしながら酒を飲んだ。
「まずは天賦の説明から始めよう。天賦とは人間が産まれ持って持つ個性のことじゃ。その個性は家庭環境や社会背景などを通じて5歳ぐらいまでに形成されていく。天賦は9つの種類に分かれる」
じいさんが人差し指を立てた。
「まずは『欲望』考えることや知識を得ること、情報を集めることに喜びを感じる天賦じゃ」
じいさんが中指も立て、ピースサインのようにした。
「次に『思想』答えを導き出す際に過去から導き出したり、未来を想像することにばかり時間を費やしたりと考えることを好む者じゃ。自分や他人が導き出した答えが論理的かつ合理的かを自他に問うことも欠かさぬの」
その他、7つの天賦を教えてくれた。
まとめると以下のような内容らしい。
■欲望
考えることや知識を得る、情報を集めることに特性を持つ。
■思想
答えを導き出す時に過去、そして未来を想像することで導き出す。その答えが論理的か合理的かを自他に問う。
■戦略
突拍子もないアイデアを思い付く。何でも簡略化して考え、道筋を立てた考え方を好む。その為諦めも早い。
■慈愛
人との関わり合いに興味がある。良好な人間関係を保とうとする。争いを嫌う傾向がある。
■順応
新しい環境に入っても順応する力に長けている。人との関わりにおいて他人の成長や他人と他人との人間関係にも興味がある。
■回復
自分が大好き! 自身のモチベーションを保つ方法を自然と身に付けている。
■変化
指示を出す、物事を伝えることが得意。誰とでも仲良くなるが、好き嫌いも激しい。見込み無しと他人をすぐに見切ることも。
■決断
目標を達成する為に現れる課題を解決する為に一番ベストな方法を考え出す。最後まで投げ出さないのも特徴。その為、必要以上に仕事を引き受けてしまうことがたまに傷。
■自制
何をするにもリスクを考える。ルールを守り、不平等を嫌う。自分がしっかりとある為、頑固で意見を曲げない一面も。
人はこの9つに分かれるということか。俺は何なんだろうか。
じいさんがまた酒を呷るように飲んだ。
「ここまでを理解した上で、小僧。お主の天賦を教えてやろう」
「その小僧っての止めてくれないか。俺はヒロトというんだ。名前で呼んでくれないか」
じいさんが鼻で笑った。酒臭さが漂う。
「小僧のくせに口だけは一人前じゃな。ではヒロト。お主の天賦は第1に『戦略』、第2に『順応』じゃ」
戦略、そして順応。しかし、俺にそんな天賦があるのだろうか。
「俺は東の国にいる時には、あまり人と関わってこようとしなかった。そんな俺に『順応』があるとも思えないんだが」
「強くでた天賦は時として反対の行動に繋がることがある。例えば『決断』が強く出ている者は本来、引き受けたことは最後までやり遂げようとする。しかし、過去に引き受けすぎて自分のキャパシティを越えた経験を持つ者は、時として引き受けることも嫌う傾向があるのじゃ」
責任感があるから、受けないという選択もするという訳か。
「お主の場合、『順応』の上に『戦略』がある。戦略は自分の勝ち筋を探ることに長けた天賦ともいえる。勝ち筋が見つけられず、順応を持ち出す価値を見出さなかったのかもしれんな。」
なるほど。俺は日本でのなに不自由の無い生活に嫌気が差していたのかもしれない。
「戦略の高い者には時として『阿呆』と勘違いされることがある。それは、アイデアを導き出す課程が他人と比べ独特で、何に対しても簡略化した考え方をする為、人には理解されないことがある。その者にとって今の環境が合っていないと、その者は有能なアイデアマンではなく、意味の分からないことを口にする『阿呆』と思われるのじゃ」
日本で同じような経験をしたことを思い出した。小学生の頃、皆で文化祭の出し物を考えていた時、先生に当てられたので答えたら全く理解されなかった。
皆はあーでもないこーでもないと話し合って、結局俺が言った内容と同じ答えとなった。皆はその事実に気付くこともなく、俺はただただ不愉快な思いをした。
クライフが後ろから俺の肩に手を置いてきた。
「お前はギルドでは、その『戦略』と『順応』を発揮していると思うぞ。戦略はブラックウコーン攻略方法について。順応はギルドの中での馴染み方で証明されているんじゃないか?」
「そうであれば、良いんだが。ところでクライフ。お前の天賦は何なんだ?」
「俺は『思想』と『自制』だ。確かに答えを導き出す時には過去の情報を参考にするな。それにルールや規則を破ることを嫌う所など自制がもろに出ていると自分でも感じるよ」
そう言われれば、クライフは思想と自制が強く出ているように思われた。
ブラックウコーン攻略前の二人でのミーティングを振り返るとそれが思い起こされた。
クライフがじいさんに金貨を数枚渡した。3万シルヴィ程か。あのじいさんなかなかの金額を取るようだ。
他の奴にもそれぞれの天賦があるのだろう。
「クライフ。俺の天賦が判明した訳だが、これを使ってどうするんだ?」
「ヒロト。お前は打算的に参謀になりたいと言ってきた。違うか?」
「打算というか消去法というか。そうだな……。すまなかった」
「なぜ謝る? ヒロト。お前の強く出ている『戦略』は無駄な道を省こうとする性質だ。消去法も打算的な考えも戦略を使った考え方だ。恥じることもない」
これは褒められているのか。貶されているのか。自分が血の通っていない冷血動物のように思えてしまうような言い方だ。
「クライフ。それは、何を言いたいんだ?」
「簡略化して言うと、お前がどれ程俺を真似ようとしても俺にはなれん。考え方が違うのだからな」
「だから、教えないということか?」
「違う違う。ヒロトそれは違うぞ。戦略の立て方や、戦術の種類は幾らでも教えてやれる。ただ、それをどの場面でどう使うか。それは全て教えられる訳じゃない。お前の発想や答えを導く為に最短ルートで道筋を立てて考える、その天賦をお前は理解して俺から教わった物を自分の物にしないとならん」
クライフが胸に手を当てた。
「咄嗟の判断で何かを選択しないとならんことがいずれ来る。その時に過去を踏襲するのではなく、ヒロトのヒロトらしい答えを探す努力を今からしておくことだ」
「なんとなく、分かった気がする」
「今はそれでいい。今日はお前の意思を聞き、お前の天賦が分かった。これでお終いにしておこう。続きは次回からだ。ビシビシ行くからな。覚悟しておけよ」
そう言って、クライフが俺の肩に手を置いてきた。
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この物語の1話目です。
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