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3-12

「小僧。ワシを愚弄するか……?」

「いや~、そんなつもりで言ったんじゃなく、なんで魔法使いが人間と一緒にいるのかなあって、自然と疑問に思ってしまって……」

「ヒロト! 喋り過ぎだ!!」


 クライフが俺の胸倉を掴んできた。ボロい小屋を引きづり出された。


「ゆ、許せん……!! ワシを愚弄するお前を許せん……。許せんぞぉ……!!」


 赤くなった顔がプルプルと震えだした。

 相手はじいさんと言えど魔法使いだ。怒らせたらどんなことが起きるか分からない。

 逃げなければ……!!


 走り去ろうとするが、クライフは腕を組んだまま、一向に動こうとしない。


「お、おい。クライフお前は逃げないのか?」

「逃げる?」

「ああ、あのじいさんが無暗やたりに魔法を使うんだろ? 逃げなければ命の危険もあるだろ」

「命の危険ねぇ。そんなことより、お前はこの後、どう始末するか考えておくんだな」


 な、なんのことだ……? まさか!? クライフの奴、ファイアウインドのじいさんを殺そうというのか? いくら自分の身が危ないからと言ってそこまでする非情な奴だとは思ってもいなかったが……。


 じいさんの顔に太い血管が浮き始めた。赤かった顔が紫色になってきている。


「許さんぞぉ! 許さんぞぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉ!!!」


 じいさんの眼がウルッとしたかと思ったら、眼から水滴が(こぼ)れ落ちた。水滴は1粒や2粒ではなかった。無数に流れ始めると、それは滝のようになり、流れ落ち続けた。

 その頃、ようやくじいさんの眼から落ちているものが単なる涙なのだと気付いた。


「な、泣いている?!」

「ワシが産まれたのは、産まれたのが150年前、魔法使い族が人間族から迫害に遭い、新しい自分たちの国を求め、建国に至ったのが1,500年以上も前だ。小僧、ワシの気持ちがお主に分かるか? ええ?!」


 とうとうじいさんが、おろおろと声を出しながら泣き始めた。


「魔法使いとは元々は人間族じゃ。ただ火を操ったり、未来が予測できたりする者を皆がが魔法使い、魔女と呼び始めただけなんじゃ。それなのに……、それなのに……」


 声を震わしながら泣き続けるじいさんにクライフが酒をもう一本渡した。


「1,500年前に魔法使いは人間族の中から抜け出し、自分たちだけの国を建国した。だからといって、それ以降人間族の中で魔法が使える者が産まれなかった訳じゃないんだ。ファイアウインドのじいさんのようにどこの種族なのか。祖国はどこなのかも分からないような存在の人が今でも多く存在する」


 クライフが渡した酒をじいさんは震える手で蓋を開けて、容器そのまま口に当てて呑み始めた。


「この人の人生を考えれば酒に頼らないとならなかった理由も頷ける。この土地の領主であるグティはな、こういったはみ出し者も気にせずに難民として受け入れ続けているんだ。ただの偽善や慈善だけでなくて、こういった異端者の知恵や能力を活かそうと考えている」

「その1つが天賦の診断だってことか」

「ああ、そうなるな。ただ、ファイアウインドが調べられるのは上位2つのみだ。全ての序列が知りたければ、魔法使い族の国へ行き、それ相応の魔法使いに見てもらうしかない」


 全ての序列を見るだけの為に1,500年前から関係の悪い魔法使い族の国に行きたがる奴なんているのだろうか。


 ファイアウインドのじいさんを見ると、まだ泣いていた。さすがにこんなに長く泣かれると面倒になってくる。

 そう思っていると、クライフが小屋に戻っていった。

 泣き続けるじいさんの横に転がる新しい酒を拾い上げ、半ば無理矢理に酒を呑まし始めた。


「お、おい……。そんなことして大丈夫なのか?」

「酒がないと悲しい事ばかり思い出す。ファイアウインドは酒なくしては、これ以上生きられんのだ。こうなってしまったら、悲しみを忘れるまで呑ませるしかない」

「いや、そんなに呑ませると、天賦も何も判断できなくなるんじゃないのか?」

「大丈夫だ。こいつは酒を呑むことで意識がはっきりする」


 話している間もクライフはじいさんに酒を呑ませ続けていた。じいさんは情けない表情からみるみる内に変化していった。


「生き返ったわい。すまんの」


 そう言うと、情けないファイアウインドは消えて、渋く研ぎ澄まされたダンディなじいさんが現れた。


「その小僧の天賦をみてやろう」


 じいさんが汚らしい机らしきものの上に一枚、赤い布を敷いた。

 布の上にさらさらとした砂を撒いた。

 撒き方にもやり方があるらしく、念入りに時間をかけている。


「天賦というのは、その人物が先天的に持つ個性のことじゃ。走りが速い、力が強いとった能力のことではない。その者が何に興味を持ち、何を好むのか。無意識の内に取っている行動は全て天賦に関係している。自分の強くで天賦を高めていくことで、それは唯一無二のモノとなり、『天賦の才』となる」


 心理テストと何が違うのか? これが分かった所で、俺が電気を放つことができる訳でもないんだろ?


「疑っておるのう、疑っておるのう。それで良い。この上に右手をかざせ」


 言われた通り、俺は手を砂の上にかざした。


「いくつか質問をする。答えは『イエス』か『ノー』、もしくは『分からない』のどれかで答えるんじゃ。答えは直観的に選択するのじゃ」


 やっぱり心理テストだろ。


「ではいくぞ。第1問!! お主は嘘を付いたことがあるか?」

「い、イエス……」


 その後も心理テストとしか思えない質問が続いた。何問答えただろうか。50問? いや100問か? まだ続くのかな。


「よし、終わったぞ。ほれ、砂を見て見ろ」

 

 砂が2方向に伸びていた。


「こ、これは……?」

「それがお前の天賦じゃ」


 は??? 何これ。


 クライフが覗き込んできた。


「ほおう。これがお前の天賦か」

「クライフ分かるのか?」

「ああ。だが、ファイアウインドから教えてもらうといい」


 じいさんが1つ咳払いをした。そして喉を鳴らしながら酒を飲んだ。


「まずは天賦の説明から始めよう。天賦とは人間が産まれ持って持つ個性のことじゃ。その個性は家庭環境や社会背景などを通じて5歳ぐらいまでに形成されていく。天賦は9つの種類に分かれる」

1-1

https://ncode.syosetu.com/n1211ff/1/"

この物語の1話目です。

是非こちらからも見て下さい。


2-1はこちらから!

https://ncode.syosetu.com/n1211ff/12/


3-1はこちらから!

https://ncode.syosetu.com/n1211ff/34/

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