第二話 突き刺さり
第二話
それからは、クリスマスとお正月も誕生日も夏の終わりも母は家に帰ってこなかった。新しい土地をマレーシアに買ったことを理由にいつも1週間から1ヶ月をそこですごしていたはずだった。妹といつも「ママいかないでよ。」といっても、母の友人行かないようにいってほしいと頼んでも何もきかない。ちょうどその頃、父ののみ癖がひどくなっていき外食をしにいってはなんどもなんども同じことを繰り返され、家族全員嫌気が差していた。父親がミーティングという言葉を口に出した瞬間パニックになり、怒りと吐き気に襲われた。また、2時間もソファーに座って怒鳴られるのかと考えると逃げたくなった。いつの間にか、母が夜遅く家に帰ってくるとほとんど何も言わず、ipadをてにとるようになった。それが日課になったと思ったら、次は友達に話してるといいながら寝室にかぎをしめ、一人でこもるようになった。「ママあけて!もう寝たいの!」と母親に寝室のドアをたたきながら言ったことを昨日のように覚えている。そんなことだったら、いつまでもやっていられたのにと思うと喉がつまる。ある日のこと、母親と妹と三人で商店街の天丼屋さんによったときのこだった。いつも忙しくてめったに、一緒にゆっくりとした時間がすごせない私たちが世間話のように母がいつも話している友達のことを’ママの秘密の彼氏’なんかと茶化した。すると母親の口から何事もなかったかのように、「うん、そうだよ。」と聞こえた。