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なろう作家が異世界ものを書いてみたようです

作者: 闇の帝王

 突然だが、皆は小説家になろうというサイトを知っているだろうか?


 という始まりで物語を綴ったのが、一年ちょっと前。懐かしいという気持ちを持ちつつ、俺は一年前からは変わった。


 さてと、俺は今日も「なろう」開く。


 マイページを見ると、そこには赤色で「感想が書かれました」「レビューが書かれました」という報告文で埋め尽くされている。


 俺はあの後、自分の好きなように作品を描いてきた。本当は書きたかったSFやヒューマンドラマなど、マイナーなジャンル。だが、俺はもう他人の評価などは気にせず、自分の書きたいように、”自分が一番楽しめる”ような物語を書いた。


 「その結果がこれか……我ながら、よくやったな」


 そう。マイナージャンルではありながら、一位の座を手にした俺。過去の俺なら、「たかが、SF、ヒューマンドラマ」と馬鹿にするだろう。だが、今なら世間から認められたと嬉しく思う。そんな自分を偽ってまで書いた陳腐で単純な物語を何故、あんなに書いていたのかが、わからない。


 「やっぱり、書きたいようにやるのは楽しいな~」


 しかし、一年間、色々あった。


 途中から、SNSを始めたり、チャットで他の作者と交流をとったり、DMで合作を書こうとしたこともあった。SNSは初めても、あんまり交流することはなかった。フォロワーと具体的な内容のDMも殆どしたことがない。チャットは最近、始めたばかりだが、他の方からインスピレーションが貰えて、楽しい。


 しかし、その都度、完結させた「異世界物」について言われる。


 「もう異世界系は書かないんですか?」

 「SFもいいんですが、異世界系も読みたいな」

 「もっと、異世界系書いたら?」


 あぁ、お前らに言われる筋合いはないなぁと、心底、思うが、他人との関わりも大事だ。




 俺はもう一度、異世界に旅立った一人の少年について、書くことにした。








 ▼








 「ここはどこだ」


 と少年は問う。





 異世界だと、現実が答える。


 辺りには、東京になかった、鬱蒼とした森林。それは太古の時代を思わせるようで、未開の地という様相が漂っている。


 俺は歩き出す。足を一歩、踏み出すごとに、大きな雑草や昆虫が現れる。


 冗談じゃない。



 こんな地で、何をする。



 少年がそう思った時、目の前に怪物が現れる。


 そう。


 太古の地球の支配者であった、巨大な化け物。



 ――恐竜……



 化け物は咆哮する。


 その赤いまなこ少年えものを狙う。














 何か、微妙だ。


 そう。しっくりこない。


 このままの流れだと、少年が覚醒して、チートスキルゲット。余裕で恐竜倒して、街につく。っていう、定型文テンプレートの道のりを辿りそう。


 異世界ものと言っても、自分らしさを出したい。


 いっそ、美少女に助けてもらう……いや、テンプレにはならないのかな? よくわからない。


 恐竜にやられて、復活リスポーンするか? だけど、それもループ系に入るしな。







 ▼








 その赤い二つの目玉に覗き込まれた時、少年は悟った。


 ――あぁ、喰われるのかと


 いっそ、抵抗しない方が、痛みもなく、死ねるのではと少年は一考する。


 そんな森に高い声が響く。



 「・・・・・・・・・・・・・!」



 詠唱のような何かが聞こえた後、空から氷柱、地面から螺旋状の炎が吹きあがる。


 恐竜は直接攻撃を喰らう。


 「ぐぎゃぁああああああああ」


 恐竜はあまりの威力からか、叫びながら、暴れ狂う。


 「・・・・!」


 今度は一節の短い言葉が紡がれる。


 途端、空中から無数の氷の槍が穿たれる。


 グサッ


 分厚い恐竜の皮を突き破り、槍がつきささる。


 赤い血が一気に流れ出し、恐竜は息絶えた。













 「まぁ、マシになったような……」


 ここからは定番かもしれないなと思いつつ、プロットを考えていく。


 まぁ、定番に、


 助けてくれたのは、エルフの美少女でー

 街にも連れてってくれてー

 そのままヒロインフラグも建てちゃってー


 みたいな感じで、


 少し定番の要素を入れた方がいいのではと思い、エルフの美少女を入れていく。正直、美少女賢者というのも悩み所だが、森の中だし、エルフの方がイメージにあってるかなと思った。


 さてと、取りあえず、流れは決まったが、重要なことが決まっていない。



 そう!




 主人公の能力チートである!




 これが決まらないと、寝れないどころか、続きすら書けない。


 「んん? いっそ、チートなんて無くても、エルフの彼女に助けてもらえば……」


 いや、それでも面白いんだけど、ヒモみたいで、なんか嫌な感じがする。(完全な独断と偏見だが)



 「うーん。無難に魔法とか剣術? だけど、他人の能力スキルを奪うなんて、ありかもしれない」


 そう思いながら、俺は思いついた設定をパソコンに入力していく。


 出た案を見ながら、数瞬、考え、考え、答えを出す。


 「よし、決めた」


 俺は主人公の能力チートを考え、続きを書き始めた。







 ▼







 「これから、どうするのですか」


 可愛らしい声で、恩人、改め、王女様が訊ねる。


 先程、殺されかけていた少年は狩猟に来ていた王女様に偶然、助けてもらい、街まで連れてきてもらった。


 ――ただし、エルフの街だ。


 王女様はエルフだった。金色になびく髪に、透き通った青色の両目。金髪蒼眼を体現した少女はエルフの特徴である長い耳も持っている。容姿端麗という言葉が正しい美少女だった。

 その彼女に連れて行かれた地は宮殿。豪華絢爛な雰囲気の城の中で、一通りの知識を詰め込まれ、王に謁見させられた。


 「魔王を倒そうと思います」

 「確かにあなたの能力でなら、できるかもしれません。わかりました。私も行きます」

 「王女様ですか」

 「はい」

 「大丈夫なんですか? 国のこととかは」

 「心配ありません。お父様が全ておこなってくれます」


 王女様は耳元でそっと呟く。


 「夜のお世話も必要でしょう」


 少年は顔を赤くする。


 「では、行きましょう」


 少年はとって喰われるのではないかと心配したが、王女様を連れていくことにした。


 ■王女が仲間になった■













 よし、まぁ、こんな感じか。いや、でも最後の描写必要か?


 夜のお世話とかいうのは実にけしからん。という真勝手な私事で消してしまうのも何だし入れておこう。しかし、あれだな。こういうのは警告が来ないかだけ、心配だな。一応、ガイドラインは読み漁ったが、どうも心配だ。来たら作品を修正するだけだけど。


 うーん。取りあえず、この一章を書いて、投稿してみるか。


 俺はそう思い、ワードプロセッサに書いていた物語をコピペして、執筆中の作品の中を埋めていく。


 一章は全十五話だ。書き上げた総文字数は四万五千文字ちょっと。


 それを一日一話投稿していく。


 どうなるのか楽しみだ。













 結果から言うと、結構な人気が出た。


 いくら違うジャンルでも、ランキング一位の名は伊達じゃない。


 ネットでは、マイナージャンルの人気作家が異世界ものを書きだしたと話題になっているらしい。


 「こんなにも需要があったのか」


 そう。そこは頂点を登っても見れなかった大量のPVとブクマ、そして溢れるような感想。俺はニヤケてしまうのを我慢する。


 ===

 投稿者:もっふもふ

 良い点

 SF投稿している頃からファンで、自分の好きな異世界ものを書くと聞いて、飛んできました。これからも投稿頑張ってください

 ===

 ===

 投稿者:火星探査機

 良い点

 異世界ものはやっぱ面白いですね。投稿頑張ってください

 ===

 ===

 投稿者:NOU

 良い点

 一章、お疲れさまでした。二章以降も楽しみにしています。

 ===




 如何に自分が需要にあった作品を書きたくなくても、少しは需要を取り入れた方がいいということもわかった。

 こんなに喜んでくれている人がいると、次も書いていこうと気分になる。




 自分の書きたい作品も大事だが、読んでもらわないことには始まらない。




 ネットの投稿しているのは自己満足では無くて、読んでもらいたいからだろう。だから、多少のトレンドは取り入れなくてはと俺は思った。


 「よし、書こう」


 次はどう描いていこう。自分の中の世界さくひんを。どう、紡いでいこう。


 俺はキーボードを鳴らし始めた。

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