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第五夜:影ふみ

 実物よりも幾分か小さな影を追いかける。

 

 私はオニなのだ。

 

 空は晴天。

 

 整備されていない道には、黒々と影が映る。

 

 影を捉えた。


「次は僕がオニだね」


 私は逃げる役に変わる。

 

 逃げるのは得意だ。

 

 空は茜色。

 

 影が長く伸びても、私はまだ掴まらない。

 

 空の端に太陽が消えはじめた。

 

 それでも私は逃げ続けている。

 

 何からだろう?

 

 そんなの決まっている。

  

 オニでしょう?

 

 オニとはダレだったか……?

 

 一緒に遊んでいたのは誰だっけ?


 






 逃げて 逃げて 逃げて

 

 建物の影が伸びてくる。

 

 山の影が伸びてくる。

 

 私は逃げ場を失っていく。



 



 ああ

 

 オニが迫ってくる。


 

 足早に角を曲がると、そこは光の差さない冷たい路地裏。

 

 私の影は大きな影に飲まれてしまう。



 


 ああ

 

 オニが来る






 タン




 

 

 足音がした。

  

 私の影は掴まったのだ。


「掴まえた。次は君がオニだ」


 私はオニだ。

 

 けれども掴まえるべき相手はどこにも居ない。

 

 ただ、闇に飲まれた世界が広がるだけ。

 

 弱弱しい月の光は影を刻んではくれない。



 



 ああ

 

 私は永遠にオニなのだ。

 

 愚かにも薄暗闇が己の影を飲み込んでしまうまで影ふみを続ける子供が、現れるまで。


 




 ああ

 

 早く探さなければ。

 

 そうしないと、私は自分の影を見つけることが出来ないではないか。










 「ねぇ、一緒に遊ぼう」


 オニの上に人好きのする仮面を貼り付けて


 「さぁ逃げて」


 新しい遊戯を始めましょ

 

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