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ヒトラーが天国にやってくる!JA!JA!JA!  作者: たいがーますく
2/2

第一場面:残念でもないし当然、地獄送りのヒトラー

この作品はフィクションです。実際する登場人物、団体などとは一切関係ありません。

作者はアドルフ・ヒトラーとナチスドイツが行った行為を一切肯定していません。

したがって、この作品はアドルフ・ヒトラーの考えに賛同する考えや、ナチズム思想を普及するために作ったものではないです。彼の行った行為は70年以上経った今も断罪されるべきで、ドイツから遠く離れた日本であっても肯定はしてはいけません。

 アドルフ・ヒトラー。史上最悪の独裁者が立っている。大量虐殺を肯定し、世界大戦を引き起こした男。褐色の服に身を包んだ独裁者はただただ静かに佇んでいた。

 挿絵(By みてみん)

 「・・・・・・アドルフ・ヒトラー君だね」

 

 ヒトラーの向にいる老いた男が小さな声で話しかける。その声はこころなしか震えているようにも思えた。

 

 「ああ、そうだ。私がドイツ第三帝国指導者のアドルフ・ヒトラーだ」

 

 「君は、なぜこの場所にいるのか、わかるかい?」

 

 男は薄くなった白い髪に相応な貫禄で静かに訊ねる。

 

 「大体は分かるな。私はベルリンでエーファと共に自害した。大方ここは死後の世界で、ここは懺悔室か何かなのだろう」

 

 「理解が早いようで、大変結構だ。いかにも、ここは死後の世界で、懺悔室のようなものです」

 

 「『ようなもの』ということは多少差異があるのか?」


 ヒトラーは白い髪の男に訊いた。一つ一つの言葉を疑い深く聴いていた彼は大空を飛ぶ鷲の目で相手の目を見つめ続けていた。

 

 「そのとおり。ここは懺悔するためだけの場所ではないです。ここは『裁く場所』、生前の行いで貴方は篩にかけられます。篩い分けられる2つの場所を人間たちはこう呼んでいます。『天国と地獄』、とね」

 

 「成程、つまり、生前の行いで送られる場所が変わるということか。生前の行いが善人と呼べるものか、もしくは悪人と呼べるものか。そういったことを裁定するのが貴方の役割、合っているか?」


 「その通りで御座います。私は冥界を統べる王、地上人は『閻魔大王』なんて呼びますが、所詮罪と欲に溺れた人間の一人ですよ」


 「貴方も昔は人間だったと?」


 「ええ、そうです。正式名称が長すぎるため閻魔大王なんて大層な名前で呼ばれていますが、この役職はあくまでこのイェルキヌク、地上の人達の言う「天国」ですね。ここに送られてきた人による直接民主制によって選ばれた人がこの役職に就けます」


 「それは立候補制なのか?」


 ヒトラーの度重なる質問に閻魔大王は訝しんだ。


 「なぜそんなことまで質問するのですか?言っておきますが、イェルキヌクの住民以外は選挙権も被選挙権も持つことはできない。君の立候補は不可能ですよ」


 「つまり、私は地獄送りにされるということか?」


 ヒトラーは眉間に皺を寄せた。しかし、よくよく考えると天国へいけるような行ないを生前に行っていないことに気づき黙りこんだ。


 「タジョークク、それが君の今から行くところだ。地獄と言ったほうが理解できるかな」


 閻魔大王の執務室に静寂が訪れた。何一つ音を立てるものはない。ここにベルクホーフの快い風は吹かないし、ドナウ川を往く船舶の波音も聞こえない。ヒトラーの愛した音楽もここには存在しない。しかし、ここはどこか心地いい感じがした。彼は心地いい静寂の中で、考えた。これから彼が、「ドイツ第三帝国総統」が、何をなすべきか。これから辿る自らの運命について考えた。

 

 しばしの沈黙の後、ヒトラーは口を開いた。

 

 「ああ、分かった。私は地獄に行くしかないということだな。多くの人民を犠牲にした。私はどのような処遇を受けても構わない。さらば、閻魔大王。また会おう」


 「いいえ、君に会うことは金輪際ないでしょう。ここはイェルキヌクです。タジョーククの人間は上がってこれません。では今から君をタジョーククに、「地獄」に落とします」

 ヒトラーの体が淡い光に包まれる。ヒトラーの体が足から順に光となり消えていく。消える間際、彼は小さな声で、それはどうかな。と呟いた。


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