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剣聖

「なに?あれ…」



 厨房の勝手口から飛び出し、アレフと俺、モチとキアフさんは街の上、上空から墨汁を溢したような黒い色が空を覆う光景を目にする。



「鳥?」



 黒い色彩が徐々に形取り、やがて巨大な(モンスター)へと変化する。


 何十、何百、何千と、数えるのも億劫になるほど膨大な数の暴力を引き連れ、徐々に街へと迫ってくる。



「敵襲!」


「戦えるものは外へ!戦えぬ者は建物の中へ!」


「住民の方は速やかに安全な場所に避難して下さいっ!」


「窓はカーテンを閉めて!けっして開けないように!」


「鍵をかけて!出来たら窓には雨戸をっ」


「テーブルを立て掛けても効果がありますっ」



 大声を張り上げて、人間の兵士らしき者が宿の前の広場に何十人も出てくる。


 その中に異なる姿、…犬?

 シェパード?


 大きな犬が二足歩行で重そうな鎧を着込み、頭部は鉄の帽子のような兜を付け、手には弓を掲げ持ち大声で叫んでいる。


 よく見ると背中には矢筒を背負っている。



「キアフ殿!」



 その犬の姿のシェパードは、アレフの父、キアフを見付けると素早く走り込んでくる。



「四足になった?」


「クーシーは四足のが速く走れるからね」



 いつの間に持ち出したのか、ハクの横に矢筒と弓矢を抱えたキアフが立ち並ぶ。



「キアフ殿、奥方様は!師匠は居られますかっ?」



 一匹のクーシーと呼ばれた犬、もとい兵士の後ろからも数匹のクーシー?らしきラブラドールやシェパード、ブルドック等が現れ、二列にビシッ!と擬音がなりそうなほど見事な迄に列を成す。


 その数凡そ30。

 クーシー以外にも人間も混ざっているようだ。



「ったく、うちら従業員まーだ朝食も食べて無いってのに、行儀の為ってない鳥頭だね」


「「「「「お早う御座いますディーネ師匠!!」」」」」


「お早う、皆。早速だが退治だっ」


「「「「「はいっ!」」」」」



「は、え?」



 何だ?これ?えーとどこぞの軍隊?


 一斉にクーシーや兵士達が更にビシッ!と敬礼をし、師匠と呼ばれたディーネさんに敬意を込めた眼差しを向ける。


 その間に次々と軍隊?は数を増やし、今は100人は軽く超えている。



「魔術師は隊の後ろにっ」


「救護班は魔術師と共に!」


「前衛!揃いました!」


「弓兵前に!」


「前衛各自盾を前に隊列を!」


「支援部隊は師匠の宿前に待機」



 各種怒号が飛ぶなか、次々と見事な迄に指揮が飛び交う。

 そして全員が見た、目の前に居るディーネさんを。



「いいかいお前達」


「「「「「はい!!」」」」」


「今回の相手は上空の鳥頭!」


「「「「「はい!!」」」」」


「何時ものように予告なく空間移転し、襲来してきた!」


「「「「「はいっ!」」」」」


「確認が取れただけで数種類いる!」


「「「「「はい!!」」」」」


「中にはリンドブルムの幼生もいる!」


「「「「「はい!」」」」」



 え、まじで?等と、此処等で兵士以外の周囲がざわつき始める。



「アレフ、リンドブルムって?」



 厨房に幾つかの箱を運び込んできたアレフに勝手口から話し掛けると、「翼のある飛竜さ、ぽーんと腹がでっばっててちょっと見映えが悪い」と説明してくれる。


 その隙にもドンドンアレフは厨房の食糧置き場から気箱を運び、勝手口の側に並べて行く。



「リンドブルムの中にはスマートなヤツもいる、それが成体で厄介なんだけど、今回は幼生で助かったよ」


「弱いの?」


「成体よりは、かな?」



 アレフが長方形の箱を開け、中から紙に包まれた筒状の物を取り出し、紙を破り剥がす。


 あの形状、弓では無いな。


 確か、………大砲?形状は五十匁筒に似ている。だが、長さは五十匁筒よりも長く、ディーネさんの身長と同じ位長い。太さも例えが難だがサランラップのシン三つ程の太さだ。


 その大砲のような物をアレフはディーネさんに渡し、にかっと笑う。



「ちゃんと整備しといたよ母さん」


「んー…60点。努力は認めてやるが、筒の方の整備が甘い」



 鉄で出来て居ると思われる武器を軽々とディーネさんは片手で担ぎ、アレフが「ちぇ~」と拗ねたように愚痴るとフフっと笑い、



「見てるがいい、剣聖ディーネの戦いを。皆行くぞ!!」


「「「「「おお~っ!!」」」」」



 広場に猛々しい大音量が響き渡った。



 画して剣聖ディーネ、もとい手持ちの武器は剣ではなく大砲(魔大砲といい、魔石の粉を核にし、燃料にして発泡する破壊力満載のディーネさん専用の武器らしい)を手にしたディーネさん(一部兵士達)の無双が始まるのだった。

やっちまった(苦笑)


プチ説明

五十匁筒は日本の火縄銃に分類されますが、口径は外国では大砲らしいですね。一発を発射するに黒色火薬40gくらいを要するとかナントカ。

但し日本の火縄銃は榴弾を使用してという記録はない…との事。


資料として写真は見たことあるのですが、実物みてみたいですね。

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