緋色に空は染まり、夜の帳は落ちて
全く、急に何だと言うのだ。
必要になるからと呼びつけられ、街中に機材を取り付けた。
主なものはほぼ、街の中央の広場にだが。
「何でこんな夜の時間帯に…」
今までのグリンウッドからのモンスターの襲撃は、ほぼ日中か夕刻。夜中やまして明け方等無かったのだ。
それが今回「彼者誰時(明け方3~6時頃)に来る」からと悪魔から勧告があったのだ。
元々、ミサは稀にだが襲撃を予想して来ることがある。
しかも外れは今迄に一切無い。
本人に聞くと「う~ん感?」とか、「何となく?」とか、訳の解らない理由で。
両親に聞いたら「それがミサだから」で終わってしまった。
占いでもしてるのだろうか?
「そう言えばあの人、何で悪魔って呼ばれてるんだ?」
確かに的確に人の弱味に漬け込んで、執拗に攻撃と言うか弄り倒して来ることは多々ある。
主なのは患者が精神的に疲れているのに寝れない時とか、負担になる様な事柄をずっと考え込んで落ち込んで居る時に、別の事柄、主に患者当人がトラウマになる一歩手前の事をやらかして弄ると言うことだ。
今まではその性格ゆえ、「悪魔」と呼ばれて居るのかと思っていた。
たが、それだけでは無いと思う。
何故かと言うと、単なる感でしかないのだが。
機材の調整と確認をしながらアレフは思う。
ミサは人間だ。
長寿と言われて居るエルフやハーフエルフ、ニンフやメリュジーヌ等ではない。
それなのに、アレフが知っている限り、ミサは一切歳を取らない。
少なくとも両親に聞いた限りでは、この街に来てからずっとあのままの見た目だと言う。
一瞬、アレフの脳裏に『不老』と言う言葉が浮かぶ。
同時に『この街だから何でも在り』だなとも思う。
人間は人間でもクォーターかも知れないし…
ただ、アレフがここの所一番気になるのは『ミサと女神像が似ている』と言う点と、『ミサとハクが似ている』と言う点だ。
それを言ったら『女神とハク』が似ていると言うことになるのだが、
「なんっか違うよなぁ」
男女の違いかどうか?
それもまた違うような…
取り留めの無い事を考え込んでも仕方ない、さっさと片付けるか。願わくば今回の襲撃は早々に片付いてくれると良いな……
闇夜の最中、白ウサギのモチは途方に暮れていた。
「…ご主人?」
街の上空の結界を貼り終え、特に何度も街の中央の広場の周囲を重点的に貼って確認し、満足したのか、ハクはモチが帰りましょうと言っても駄々を捏ね、治療院の屋根の上で丸まって寝てしまったのである。
くるんっと丸まった姿は尻尾があったら様になったであろうが、今は人間の姿。
ハクにこれ迄の過去の事を聞いたモチは、この姿に納得する。
が、それとこれとは別。
モチは風邪引いてしまいますっ!とか、身体に障ります!とか、色々言って何とか部屋に帰って休んで貰おうと思ったが、余程ミサの所業が嫌だったのか聞き入れず、ご覧の有り様。
帰りたく無いって散々言ってましたし…
「どーしましょう」
全く起きない主人に、横でポテンッと音が為る可のように肢体を投げ出して座る。
大きな溜め息が無意識に出る。
ぷらーんと両足をプラプラとさせ、上空を見詰める。
空には満点の星。
宝石をばら蒔いた様な煌めき。
此が後数時間で業火へと染まると聞いた。
その対策の為に色々細工も頼まれたとも。
何が来るのですか?と聞いたら、面倒なのが一人とヤバイのが一人来ると言う。
後、妙な気配もあると言っていた。
鋭気を養う為にそれまで寝かせてくれと、寝入ってしまった主人の傍らモチは思う。
「僕、役に立つかなぁ」
プラプラさせたままの脚を上に向け、コロンと横に為る。
装備として主人が色々付けてくれたが、その中に主人が知らない物も幾つかある。
ケンネルさんとその婚約者が、モチの「機動力」を生かせと寄越してくれた物だ。
「強くなりたいです」
両手を上に向け、何の星なのかサッパリわからないが一番大きく見える白くて綺麗な大きな星に視線を向け、これ以上主人が怪我をして傷付いて欲しく無いと思う。
今だってまだ全快では無いのだ。
本来なら先程の様に結界を貼るなどキツい筈だ。
だが今貼らないと間に合わないと、穴だらけになっていた箇所を補強していた。
その為に無理が祟ったのか、屋根で寝る等と言う事をしてしまって居るのだが…
で、も。
やはりここで寝るのは良くない。
身体に障るし、何より弱体化等と言うマイナスなモノがある主人には、身体を暖かくして寝ていて欲しい。
無理矢理連れて行くしかないですね!
怒られるかも知れないけどこれも主人の為。
何よりぐずぐず燻ってるのは苦手なのだ。
それではと、屋根の上からどう降りるかな?と辺りを見渡しーーこう言う時、夜行性ってのは役に立ちますね、なんて思いつつーー
びたんっ
本日二度目のミトラさんの顔面張り付けを食らった。
モチにクリティカルヒット!
モチは尻餅をついた!
「モチ~~!探したのじゃ~!」
グリグリグリッとモチの顔面に張り付いたミトラはこれでもか!と顔面に摺より…
「ミトラさ…息!がっ…」
尻餅をついたまま、モチは慌てる。
息!
息がぁ!
窒息する~~
酸欠により、くらっくらっ目を回し始めた辺りでようやく(?)屋根の上に登ってきたケンネルに、同じく本日二度目となる軽快なる音付でベリィッと剥がされ、モチは涙目になり咳き込んだ。
「ぎゃああっモチ!大丈夫か!誰がこんなことを!」
「お前以外に誰が居るんだ…」
ケンネルは大慌てでモチの介抱をするミトラを冷ややかな目で見詰めれば、ミトラはと言えばケンネルのことなど眼中に無い。
out of 眼中(?)。
ケンネル、もう呆れるしかない。
「ミトラさん、顔に張り付くのは止めて下さいっ!僕死ぬかと!!」
「ご、ごごごめんなのじゃモチ、わ、わらわは何て事を!」
そう言ってモチの横顔に自身の頬をグリグリと擦り寄せ、ケンネルとモチに反省の色が無い!
と、怒られたミトラであった。
長くなりそうなので中途半端ですが、此処等で一旦切ります。




