鮮紅 4
「そう言えば、この間の襲撃だけど」
カリナタさん何とか無事復旧しました。
周囲はまだ死者類々な気がしないでも無いですが、店員さんが正気に戻ったので直に皆戻るかと思います。
取り合えず、未だに笑っているのか肩を震わせて居るカーターさんは放置します。
「幾らなんでもおかしいよね、何時もならあんなに空を埋めるほど涌き出てくるなんて無かったでしょ?」
「カリナタはそう思うか?」
ケンネルさんは考え込むように片目を瞑って腕を組み、テーブルを凝縮しています。
その前には湯気が出ているお茶。
僕はちょっとこの臭いが苦手です。
草食系な僕みたいな獣は苦手な方が多いらしいです。
獣人でも駄目な人が居るって言ってました。
臭いで鼻が痒くなってクシャミが出ちゃうんですよね。
ケンネルさん、大丈夫ですよ?僕気にしませんから。
「失敗した…」
とか呟いたの聞こえたけど、気を使わせて御免なさい。
「うん、それに先日の…」
「女神の鐘の音か?」
「うん」
「あれは間違いだったってことらしいがな」
カーターさんやっと収まったのか、一息をついて懐から木箱を取りだし、その箱の中から封書を取り出す。
「女神の鐘って何ですか?」
「ん?あーモチ君は知らないか?」
「はい、まだ人間世界のことは勉強中です」
「そうかそうか、勉強熱心なのは良いことだ。ケン、これお前に。こっちのは俺のだな。モチ君少し待ってな?」
「あ、はい」
何でしょ?
二人して険しい顔付きに変わりましたけど。
封を切って中の手紙を読み始めてます。
眉間に皺寄せて、険しい顔をしているのがカーターさんで、ケンネルさんは溜め息をついてます。
「モチ君、二人は少しお仕事の手紙みたいだから、私が代わりに答えるね」
「カリナタ悪い、頼むわ」
カーターさんは紙面から目を離さずに言うと、カリナタさんはこくりと頷き、僕に向かってお話ししてくれました。
曰く、女神の鐘とはほぼ世界のどの地域にも最低一つはあり、数百年前は大きな災害時前に知らせる為に鳴り響いていたが、今はたった一つの事のみを知らせる為にある。
その役割は『魔王であるアドニスが崩壊、つまり死んだら鳴る』と言うこと。
その時にアドニスが封じていた『邪神』が復活してしまうことを示唆していると言うことーーらしい。
「復活って言うけど、封印が緩むって言う話よね」
「緩むですか?」
カリナタさんは頼んでいたサンドイッチを一つ方張ります。
レタスとトマトに鴨肉のスライスがサンドされていて、お皿の端にピクルスと…これ、何でしょ?玉蜀黍かな?小さくカットされてお皿に彩られていて、甘くて美味しそうな匂いが惹かれます。
そう言えば、先程の店員さん。
失礼しましたといって、僕にハーブ水のお代わりを注いでくれました。
「頼んでませんよ?」と僕が慌てて言ったら、先程のお詫びだそうです。
何か悪いことしちゃったかな?でもちょこっとラッキーです。
だってこのハーブ水美味しいんです。
このお水、ご主人も飲めるかな?飲めるのならご主人にも飲んで欲しいです。
「大体邪神って言うけど、よくわからないし…」
「悪い人ですか?」
「人なのかなあ?一応神って付くから神格された何かかも?」
カリナタさんはピクルスを摘まんで口に入れ、次に玉蜀黍を手に取り、それを見たケンネルさんが何か言うようにカリナタさんに指をくいっとさせてーーあ。
「食べる?」
ニッコリ笑って僕の前に玉蜀黍を一つ、紙に包んで置いてくれました。
御免なさい、僕つい玉蜀黍見続けていましたね。
匂いに釣られたんです…美味しそうなんだもん。
「すいません、有難う御座います」
ペコリとお辞儀をしてからひとくち。
「あまいです~!」
美味しい!
粒々してて噛むと甘くて瑞々しい汁が口に広がり、何とも言えないです。
つい夢中になって一気に食べてしまい、はたと気が付きました。
「何で皆さん苦しんでるんですか???」
周囲の御客さんやカリナタさん、それにさっきの店員さんまでもがぷるぷるしていました。
「いや、これはモチ君に悶絶してるだけ」
お腹を抱えて笑っているカーターさんと呆れたように苦笑しているケンネルさんに教えられたのですが、やっぱり僕には理解出来ないです。
難しいんですねってケンネルさんに言ったら、モチ君はそのままでいいよ和むし、と言われました。
うーん人間って分かりませんけど、ご主人も和んで貰えるのかな?それならいいかな?と思いました。
起きてからご主人元気無いですからね………心配です。
そろそろ説明回終わらせたい…モチ君無双な気がするけどもw