鮮紅
モチの独り語りになってます
「ピッ」
つい変な声出してしまいました。
いやだって僕ことモチは、今まで一人で街なんて歩いたこと無いんです。
今迄はご主人やケンネルさんに宿屋の人が一緒に居たのですが、夕飯何にしたらいいのかな?と食材をミトラさんとチェックしていたら、肝心要のお塩がゴソッと無くなって居たのです。
僕は貨幣価値がわからないので焦ってしまいました。
ちょっと前に二人、カリナタさんもミサさんも出掛けてしまってミサさんのお家兼治療院はご主人とミトラさんと僕以外誰も居ません。
午後の診療はおやすみとミサさんが言っていたから、多分他の人も来ないでしょうし、何よりご主人は治療中で身動きが取れません。
ミトラさんに「どうしたらいいですか?」と聞いてみたら、
『カリナタは買い付けに行ったのじゃな?だとすればカリナタを市場で探せばよいのじゃ』
と、言うことで僕だけで街に出てみたのです。
ミトラさんにはご主人を見てて欲しいですし。
…ミトラさんは確かにご主人の部屋には入れませんが、外から伺うことは出来ますし、もし何かあったら僕を探すってことで任せて来ました。
それはいいんです、いいんですけど………
僕は何故、通り過ぎる人々にやたら頭撫でられるのでしょうか???
「ピキュッ」
今も急に来た小さな女の子が僕の頭を
「撫でて良い!?」
と、興奮気味に言うので許可したのですが…
気が付いたらその女の子の後ろに、他の子供達の列が出来てるんですけど?
「うささんかわいー!」
皆さん喜んでるみたいだからいいですけど、あの、僕、カリナタさん探したいのですが…
困っていたら、巡回中のクーシーさんが助けてくれました。
「確かケンネルさんと同じ犬族の方ですよね、ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀をしたら、彼は吃驚した顔付きで
「おお?ケンネルから聞いてたけど、テイムされたウサギって本当に話せるんだな!」
ガハハハッと豪快に笑いだしました。
「他はわかりませんが、僕は普通に話せます。何故なのかはわかりませんけど」
「そうかそうか、いいことだな!」
「いいことなのですか?」
「言葉が通じるっつーことは大事なことだからな!少なくとも俺と即交流出来たつーことはいいことだ!」
「はい」
「よし!」
ん?何がよし何でしょ?
「俺の名はカーター。カーター・デルタだ。宜しくな!で、えーと?」
「僕の名前はモチです」
「モチか!宜しくな!」
バシバシと背中を豪快に叩かれました。
ちょっと痛いです。
「それはそうと、ここで何してたんだ?モチの主人は?」
カーターさんはキョロキョロと辺りを見渡します。
「えっと、僕カリナタさんを探してまして」
多分市場かと、と言おうとしたら
「お?カリナタか。んじゃ今頃は広場だな、よし、道案内してやるからついてこい」
半ば強引に連れて行かれました。
「ほれ、ここが広場」
沢山の人々が往来しています。
下には煉瓦が敷き詰められ、大きな丸い模様が幾つか出来ており、その上で露店等で美味しそうな物とか、キラキラした装飾品とか、被服とか、沢山の品々がお店に並べられています。
「ピッ?」
中には見るからにアヤシイお店もあるのですが、なんでしょこれ?「持つだけで幸運に恵まれるツボ」「僕はこれで結婚出来ました!」「お金が貯まる素晴らしい絵画」「不幸を吸いとって吹こう」最後のは駄洒落ですかね?
「確かカリナタはーと、あ、多分あれだな」
カーターさんがドンドン行ってしまうので慌てて追い掛けると、人だかりが出来て居る中に入って言ってしまいます。
その人だかりの中を潜って行くと、
「はぁあああっ!」
大きな掛け声がしたかと思ったら、火の玉が目の前にっ!!
「ピキューッ!!」