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モチ君頑張る

番外編っぽいです

「行きます!ケンネルさん!」


「来い!」



 キインッと金属音の重なる音が鳴り響く。

 その空間に僕、モチは盾と片手剣を持ち、クーシーであるケンネルさんに稽古を付けて貰っている。

 先日の襲撃以来目を覚まさないご主人は心配ですが、何よりも僕は変わらなくては行けません。

 僕はテイムされた獣です。

 テイマーであるご主人の命は守らなくては、いえ、違いますね。

 一緒に戦わなくてはいけません。

 でも今のままでは僕はご主人の横で戦う等出来やしません。

 それほど、先日の襲撃のご主人はーー強すぎました。

 僕なんか役にたたず、逆に守られてしまった程に。

 こんなの、テイムされた僕の意味が無いじゃないですか。


 嫌です。

 僕は強くなりたい。

 強さを欲したい。

 だから、頼みました。

 ご主人みたいには今は無理でも、少しでも強くなるように。



「ケンネルさん、僕、片手剣だと巧く立ち回りしにくいみたいです」



 少し手が軽く感じてしまうんですよね。

 軽くていいと言えばいいのでしょうが、何か足りない気がするのですよ。

 威力が足りないと言う感じでしょうか?



「確かに盾との相性はいいみたいだが、剣だと難しそうだな」



 どうもこの剣と言うのは僕の体格に合って居ないようです。

 先程両手剣と言う物も持たせて貰いましたが、馴染まずに両手剣の重量に振り回され、重心が巧く取れずに剣を引き摺る始末。



「片手剣で駄目ならば、うーん」


「片手斧はそこそこ良かったのですが、やはり僕には両手斧でしょうか?」


「いや、う~ん」



 ケンネルさんは目の前でウンウン唸ってしまいました。

 こうなってしまうと稽古もつけられません。

 でも、切実なのです。

 元は野生のウサギですから、体格とか小柄なクーシーのケンネルさんならば僕の悩みをわかって貰い、尚且つ稽古を付けて貰えると思ったのですが…

 武器、本当に難しいですね。

 いっそ魔法でも使えれば良かったのですが、僕適正低いみたいなんですよね…。



「確か、うーん確か、うーん…鍜冶師の所にあったなあ」


「いい武器があるのですか?」


「いい武器と言うか、変わり種なんだよな。飛び道具のナイフとか、フォークとか。扇とかステッキとか、仕込み針。カードなんてのもあったなぁ」


「フォーク?確か食器では無かったでしょうか?」


「うん、だから変わり種。兎に角変わった武器の中に、えーと手甲鉤と言うのがあったが、それどうだろう?」


「手甲鉤ですか?」



 なんでしょう?聞いたこと無いです。

 僕がキョトンとしていたからでしょうか、ケンネルさんが説明してくれました。



「私達の手って人間達みたいに指先が長くないだろ?その分爪がある者達なら攻撃力は高いのだけど、私は犬の種族だし、モチ君はウサギだからな。どうしても爪や手の威力が低い」



 その分脚は強いけど、とケンネルさんが然り気無く僕たちウサギ種族のフォローを入れてくれます。

 やっぱりケンネルさん優しいです。

 僕はちょっと嬉しくなり、うんうん、と頷きます。



「そこの所の弱点克服ってわけじゃ無いけど、人間が腕に固定する武器をそこの鍜冶師が僕ら用に改良しててね。この間の戦闘で使ってたのは爪タイプなんだけど、モチ君は、んー…物は試しだし、とりあえず付いてきてよ」



 ケンネルさんが歩き出したので慌てて着いていきます。

 あれ?ケンネルさん、何だか尻尾が軽く揺れてます。何か良いことがあるのでしょうか?



「実はさ」



 ケンネルさんが歩きながら腕を組み、少しばかり上機嫌に話し出します。



「ちょっとその鍜冶師に会うには特殊な条件があってね」



 うん?なんでしょう?

 僕がケンネルさんの方を見ると、ケンネルさんの尻尾がフリフリフリフリ仕切りに振りだしました。

 上機嫌ですね、ケンネルさん。

 わかりやすいです。



「その鍜冶師、先日の襲撃で薬草や素材を切らしてるって聞いたんだ。そこでちょっと街の外で一緒に手土産(モンスター討伐)を取りに行かないか?」











 こうして、モチの主人のハクが怪我をして意識が無くて寝込んでいる間、少しだけケンネルさんと一緒にモチ強化大作戦、題してケンネル流ブートキャンプが実行されることとなった。



 後日、ふらふらになったモチが何とか手甲鉤を手に入れ、その武器に珍しい魔力処置を施されてモチの地力が引き上げられたのは、お土産を気に入って喜んだ鍜冶師が張り切ったせいなのか、たまたまその鍜冶師が"ケンネルの婚約者"であったのか。

 どちらにしよ、ケンネルのお陰かもしれない。

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