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エルフ奴隷3




 ニーナと仲良くなってからというもの、彼女は片時も僕の傍を離れなくなった。

 あの夜があってからというもの、彼女の心のガードが崩れ、僕に癒しを求めるようになっていったのだ。



 仕事に行くと


 「ねぇカイエン、置いてかないで。グスッ……」


 と、涙ぐむ。


 

 ちょっとでも離れると

 

 「ねぇカイエン、一人にしないでぇ」


 と駄々をこねる。


 四六時中ベタベタするようになったのだ。

 最初の頃とは180度態度が変わってしまった。



 「大丈夫だよ、安心して」


 なだめるのも一苦労なのだが……







 「あ、ご主人様!」

 「旦那様、こちらに居ましたのね」


 先輩奴隷のミとリュシアが二人きりの部屋に入ってくると……


 「フハハ! カイエンは私が守っている。問題ないぞお前達!」


 ニーナはミ達が現れると途端に胸を張り始める。


 うーん。

 この豹変ぶり。

 ちょっと面倒だけど、ニーナは可愛いなあ。



 


 なでなで。

 僕はニーナの頭を撫でる。


 「な、何をする!?」


 「護衛してくれて何時もありがとう」


 「む、むふぅん……」



 「旦那様! 奴隷筆頭のこの私にもお情けをくださいまし」

 「わ、わ、私もお願いします。ご主人様~」


 リュシアとミも僕にすり寄ってくる。


 「むふぅぅん……」


 僕が頭を撫でている間、ニーナは体をクネクネさせていた。





---ニーナ視点




 国が滅ぼされた後、私はオークに囚われた。

 必死の思いで逃げ出した後、国の再興のため傭兵を雇って軍備を整えた。

 だが、所詮は傭兵。

 あっさりと裏切られ、また捕らわれの身となった。


 そして奴隷商人に売られた。


 傷物にするより新品のままの方が高く売れると思われたのは自分にとって不幸中の幸いであった。

 この身を一度も汚される事無く私は長い度に出る事になった、奴隷として……



 最初の主人は最悪だった。

 醜悪な顔の太った人間の貴族。


 奴隷として買われたその日のうちに寝所に呼ばれた。

 隙だらけのデブだったので一対一になった瞬間襲い掛かって首を絞めてやった。

 締め落としたところでそいつの家来に掴まえられたが、体を汚す事は避けられた。


 だが、自分はそれで人間が大嫌いになった。

 人間など顔も見たくないと思った。

 奴隷になるなら同じエルフの方がまだマシだと思うようになった。



 でも、カイエンは別だ。

 カイエンは最初から優しかった。

 

 醜く太ったオークや、裏切者の傭兵、人間の傲慢な貴族、どいつとも全く違った。


 彼は傷ついた自分を気遣ってくれた。

 奴隷なのに、まるで家族のように扱ってくれた。


 毎日一緒に過ごすうちに、どんどん大好きになっていった。

 強いし、気が利くし、それに……結構顔が格好いいし。


 夜、怖くても一緒に居てくれる。

 自分の国に居た時もこんなに優しい人は居なかった。

 まるで父上のように優しい……



 一度、勝負を挑んだが全く相手にならなかった、勿論自分がだ。

 ものすごく手加減されたのは理解出来た。

 圧倒的な強さ、それを肌で感じ取った。


 正直、驚いた。

 滅びたとはいえ、自分の国は精強な戦士が沢山居た。

 自分も姫騎士としてそれなりに鍛えて来たのに全く歯が立たなかったのだ。


 ますますカイエンの事を尊敬し、好きになった。

 





 今日も私はカイエンの護衛をする。

 

 ……分かっている、護衛なんかじゃない。

 ただカイエンの傍に居たかったのだ。


 彼といると、ホッとする。

 自分が守られているような気がする。


 彼の傍にいないと、凄く寂しい。


 「おい。置いてくな! ……寂しいんだぞ……」

 「ああ、ごめんごめん」


 私が手を差し出すと、カイエンはギュッと握ってくれた。

 

 「んっ」


 カイエンの腕に抱き付き、甘える。

 カイエンに触れていると安心を覚えるようになっている自分に気が付く。

 この人とずっと一緒に居たいと思う……


 「今日は遠いところに商品を卸に行くんだ、ニーナが護衛してくれて助かるよ」

 「うんっ!」


 私は満面の笑みで答え、カイエンと共に歩んだ。

 

 



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