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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第四章、新魔王争奪戦が開幕したと思ったら、俺の妹にそっくりな娘が狙われてブチ切れた結果がコレだよ!
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83、湖畔の町防衛戦4 side拓斗 ~快適で会敵~

 津波のように押し寄せる魔族の軍勢。


 それはかつて、学園を襲ったエインジャの軍勢にも勝るとも劣らない量だと言えた。


 ただ、かつての襲撃と違うのは、比べ物にならない程、相手が強いということであろう。


 ――下半身が牛で上半身が人間の魔族が、大斧を振りかぶって拓斗に迫る。


「業物の斧のようだけど……、錆びている上に手入れもされていないから斬れないだろうな。だったら、受け止めるだけで良いか」


 拓斗は収納スキルよりすかさず大盾を取り出すと盾の下方を地面にめり込ませるようにして構える。


 ……魔族はそれを見て笑っただろうか?


 脆弱な人間如きが、加速した自分の膂力に勝てるわけがないと――そんな自信に満ちた笑みを浮かべ、魔族は大斧を拓斗の盾に向かって叩き込んでいた。


 その瞬間――、魔族の大斧が跳ね返されて宙を舞う。


 何事? と魔族が表情を驚愕に彩るよりも早く、収納スキルから刀を取り出した拓斗は、魔族の牛の前足二本を切り落とし、頭が下がってきたところでその首を撥ね飛ばしていた。


 装備もそうだが、拓斗の技巧もまた一流の代物だ。


 それらが合わさった時、拓斗は紛うことなき一流の冒険者へと変貌する。


「やっぱり、浩助に言われて収納スキルを習得しておいて良かったな。武器を持ち歩く必要がなくて便利だ」

「――というか、武器屋の旦那は刀も使えたんですかい?」

「作った以上、斬れ味を試す必要もあるからね。一通りの得物は扱えるように武器レベルを引き上げているかな。具体的に言うと、最低でも5レベルはあるよ」

「冒険者が可哀想になるレベルで強いッスね。――よっと」


 飛んできた火炎弾三つを屋代は自身の細身剣で一瞬にして串刺しにしてみせていた。


 彼もまた、一次組の冒険者だ。


 それなりの技巧は当然のように持ち合わせている。


「危ないだろうが! 返すぜ!」


 彼はそれをそのまま大軍の中に投げ返す。


 炎の弾丸は一直線に大軍に飲まれ、何かに引火したのか派手な爆発を巻き起こし、多くの魔族が宙を舞っていた。


 それを見て、拓人も思わず目を丸くする。


「屋代君もやるね」

「まぁ、ベティちゃんのおっぱい揉むまで、俺死なないつもりですし」

「それ、不死者(ノスフェラトゥ)にでもなるつもりなの?」

「それ酷くねぇッスか、旦那? ――おっと」


 屋代に向かって物凄い勢いで接近してきたのは、灰色の全身タイツを着たような魔族だ。


 その魔族が赤い爪を伸ばし、屋代に一撃を加えるが、彼には全くダメージがない。


 魔族が驚いているその隙に、屋代は魔族の胸を一瞬で五度貫いて致命傷を与える。


 だが、魔族もさるもので、そのままでは死なぬとばかりに屋代に抱きついてくる。


 それを屋代は事も無げに引き剥がすと、魔族の頭を引っ掴んで大軍の中へと投げ返していた。


 その軌道上にいた魔族、四、五体が巻き込まれて吹き飛び、後から来た魔族たちに踏み潰されて、哀れな魔族はボロ雑巾のようになって果てていた。


「次から次へと出てくるなぁ……」


 山羊の頭と熊の体を持った魔族の鎌による攻撃をいなしながら、屋代はボヤく。


「……参った。旦那、数が多い。このままじゃ突破されますぜ?」

「北山先生も美丘ちゃんもいるし、ある程度なら突破されても大丈夫だと思うけど、町を傷付けられるのは嫌だな」


 全長五メートル近くもある二階建ての家かと見紛うばかりのライオンと蜥蜴の合いの子のような魔族――。


 その鼻っ柱に思い切り拳をぶち込んで突進を止める拓斗。


 彼は収納スキルから大鎚をすかさず取り出すと、その頭部を完全に叩き潰すなり、死体を町の入り口に向かって投擲する。


「おーい、危ないぞー。避けろよー」


 町の入り口近くで戦っていた二次移住組が口々に悲鳴を上げながら逃げ惑う。


 そうした中を何とか被害が出ることもなく、巨大な魔族が町の入り口に着地する。


 かくして、簡易の門の完成と相成ったわけだ。


 モノ作りというにはお粗末なものだが、無いよりはマシだろう。


「これで、町に容易に入れなくなったな」

「旦那の馬鹿力にもビックリするが、そのやり方の雑さにもビックリだな」

「緊急手段という奴だからね。仕方のないところもあるさ。それと、分かっていると思うけど、この力は借り物だよ?」


 そう言う拓斗の指には無数の指輪が嵌められ、首や手首、足首にも装飾を施されたアクセサリが嵌められているのが分かる。


 装飾品(アクセサリ)によるステータスの向上――。


 一つ一つはそこまで効果のあるものではないが、これだけの数を嵌めこむと馬鹿に出来ないぐらいの差が出るようだ。


 現に拓斗は、必死に魔物の進撃を防いでいる二次移住組に比べ、動きに大分余裕がありながらも、彼ら以上の戦果を上げている。


「屋代君、後ろに下がって。ちょっと派手なのいくよ」

「! あいよッ!」


 拓斗は周囲の敵を大斧の一振りで押し返すと、収納スキルを使って大斧を収納――。


 次の瞬間には錫杖を取り出し、その先端ですかさず地面を叩いていた。


 ぐにゃり、と地面が蠢いたかと思った時には、拓斗の眼前五十メートルの地面が液化し、進行していた魔族達は瞬く間にその半身を地面に埋没させてしまう。


「戻れ!」


 更にもう一度、拓斗が錫杖で地面を叩くことで地面は元の固さを取り戻し、魔族たちはその半身を硬い地面に縫い付けられる事となる。


「……魔法ですかい?」


 屋代が聞くが、拓斗は頭を振って答える。


「いや、そういう効果を持つ特殊武器さ。待機時間(リキャストタイム)がちょっと長いから連発はできないけど、こういう形で魔法を使えるというのもなかなか悪くないだろう?」


 それは魔法のスキルを所持して、この異世界に飛ばされなかった者としての皮肉だろうか。


 少し練習すれば、習得できるはずであろう魔法――。


 それと同様の効果を道具によって引き出す姿勢には、職人としての矜持が垣間見える。


「それにプラスして、浩助から貰ったコイツを使えば――」


 収納スキルから取り出したのは、かつてエインジャと呼ばれた魔物が使用していた風を巻き起こす斧だ。それを、拓斗は思い切り振りかぶる。


「吹き荒れろ! 嵐よ!」


 裂帛の気合と共に振り下ろされた一撃は、拓斗の基礎能力とも相まって暴風となってその場に吹き荒れた。


 勿論、下半身を地中に封じられた魔族に逃げ場などなく、一瞬でその場に血の噴水が無数に出来上がる。


 あまりのえぐさに屋代も思わず表情を顰めるほどである。


「うわ、こりゃヒデェや……」

「向かって来る以上、容赦はしないつもりだよ。それに、放っておいたらこちらがやられるしね。相手の戦意を削ぎ落とせれば十分だよ」


 だが、拓斗の思惑を無視するようにして魔族の戦意が落ちることはない。


 矮小な存在であり、簡単に蹂躙できるはずの人間を相手に、魔族が一方的に蹂躙されている光景を見て驚愕を覚えた者は居たであろうが、怯えや竦み、躊躇を覚えた者はいない。


 むしろ、戦功を競い合う仲間が減ったことにより、一層のやる気を見せる者や、強かに味方を盾にして町に接近しようとする者、強敵の登場に歓喜する者など、その感情に負のものは読み取れなかった。


 このまま、戦況は人間側の一方的な虐殺で終わるのか?


 そんなことさえも視野に入れ始めた拓斗であったが、変化は唐突に訪れる。


「全軍、止まれぇい――――ッ!」


 野太い声が辺りに響き、魔族の進軍が一斉に収まりをみせていた。


 唐突に動きを止めた魔族を相手に二次移住組も戸惑った顔を見せ、拓斗も様相の変化に不気味なものを感じ取ったのか、魔族の軍勢の動きに鋭い視線を走らせる。


 やがて、魔族の軍勢が二つに割れ、その中を筋骨隆々とした六本の腕を持つ男が歩いてきていた。


 一言で言うのなら、阿修羅。


 だが、男の顔は三面というわけではなく、一面だけであり――、その顔はただひたすらに怖い。


 浩助と良い勝負だなぁと、拓斗は場違いながらもそんなことを考える。


「いくらやっても無駄だ。うぬらでは話になるまい。それに、我々には三時間という制限もある。のんびりとやっている場合でもないのだ。此処は障害を力づくで排除せねばなるまい」

「……障害ね。軽く言ってくれちゃってさ。こっちは必死でやってるんだけど、そっちには死力を尽くす覚悟なんて端から無いってことかい」

「旦那、気を付けてくれよ」

「あぁ、分かっているさ。さて、それでは、やろうか、……十二柱将さん?」


 それは、最初から分かり切っていた展開だったからだろうか。


 拓斗は特に違和感を覚えることもなく、六本腕の男との戦闘に入ろうとする。


「――ほう、そこまで分かっておったのか」


 拓斗が収納スキルから大剣を取り出すと同時に――。


 ――六本腕の男の背後から声が聞こえた。


 それと同時に、六本腕の男が脇へと下がり、背後に居た魔族に道を譲る。


「露払い御苦労であったぞ、ダーネス」

「ハッ!」

「おいおい、マジかよ……」


 拓斗の目の前に姿を現したのは、アンと背格好のそう変わらない少女だ。


 だが、その恐ろしい雰囲気は、少女の持つそれではない。


「そっちの強面のおっちゃんが十二柱将じゃなくて、もしかして君が……?」

「如何にも。十二柱将が一人、ジーニャ・アンクローズだ」


 ジーニャと名乗った少女が一瞬で拓斗に向かって加速する。


「……では、さらばだ! 有象無象!」

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