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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第四章、新魔王争奪戦が開幕したと思ったら、俺の妹にそっくりな娘が狙われてブチ切れた結果がコレだよ!
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81、湖畔の町防衛戦2 ~第一回選択希望選手指名~

     ●


 鈴木拓斗、総合能力:87923。冒険者ランクA+――。


「え? 俺ですか? 何かの間違いじゃ……?」

「装備品込みの能力で、という話だ。だから間違いじゃない。……というより、この町で一番優秀な装備を持っているのはタクートだろう?」

「それは語弊がありますよ。強力過ぎて値が付けられない奴を売れないから、仕方なく俺が使っているだけで……。あと、この総合能力値間違ってますよ?」

「ん?」

「色々、装備を解禁すればもう少しいきます。十五万ぐらいはいくんじゃないかな?」

「そ、そうか……。えーっと、その、なんだ、皆の士気を鼓舞するためにも一言頼む」

「え? ……あー、その、皆さん、鈴木&洛武具店を今後とも宜しくお願い致します!」

「それは、意気込みではなくて宣伝だ!」


     ●


 洛淋、総合能力:103041。冒険者ランクA++――。


「おー、タクトに勝ったぞ!」

「いや、これはそういうアレじゃなくてだな……」

「で? 勝ったら何か貰えるのか?」

「基礎能力は仙人だから高いのだが、圧倒的に知性が足りていないように感じるのは何故だろう」

「む! 洛は馬鹿じゃないぞ!」

「……まぁ、戦場での活躍を期待しているよ」

「ん? 戦争するのか? お~、新しい武器でも試してみるか!」

(やっぱり知性というか、知能が低いように感じる……)


     ●


 ウエンディ、総合能力:162135。冒険者ランクA+++――。


「いつの間に、冒険者登録していたんだ、ウエンディ……?」

「傭兵稼業の代わりに登録していたのだ。体を張って、お金が貰えるとあっては、私の天職だと思ってな。迷う必要が全くなかった」

「そういう楽しそうなことをする時は自分も誘ってくれ! ズルいぞ!」

「え、あ、うん、すまない。次は絶対誘うから……」

「本当だぞ? では、一言を頼む!」

「うむ! 集団戦闘は苦手だが、頑張ってやりたいと思うので宜しく頼む!」

「まぁ、いざという時は見捨てていいぞ! 彼女は本当に一人で何とかするからな!」

「今度はちゃんと誘うから! だから、私に対する風当たりをもう少し緩くしてはもらえないだろうか!?」


     ●


 田中則夫、総合能力:147017。冒険者ランクA++――。


「当然ながら、有馬殿には遠く及ばぬでござるなぁ……」

「まぁ、比較する対象が大分おかしい気がするがな。……それでも十分強い! 今回の戦では活躍を期待しているぞ!」

「……期待されても困るでござるが」

「何を言う! それだけの総合能力があれば、獅子奮迅の活躍ができるはずだ! 手を抜かずに頑張り給え!」

「……はぁ」


 嘆息を吐き出しながら、則夫は思う。


(……拙者はまだまだ弱いでござるから、期待されても困るのでござるよ)


     ●


 国崎慶次、総合能力:80621。冒険者ランクA+――。


「総合能力は低いが、武器が徒手空拳である事と、ユニークスキルの強さを加味しての選出だ」

「……チッ、やっぱりか……」

「何か、一言あるか?」

「おい、俺なんかを選出させやがって……。テメェら全員弱(よえ)ぇんだよ! さっさと強くなって、俺が選ばれなくなるように精進しやがれ! こっちは戦争よりもラーメンの技術磨きてぇんだよ! 馬鹿が!」

「まぁ、口ではこんな事を言っているが、味は絶品のラーメン屋台を引いているからな。暇な時にでも寄っていって上げ給え」

「何、フォローしてんだ! 俺がツンデレみてぇに見えるじゃねぇか!」


     ●


「おや? アキーラはいないのか?」

「夏目君でしたら、二日前にクエストを受けて今は町にいませんよ?」


 意外そうなキルメヒアの声に、生徒の動向は全て把握しているのか、真砂子が淀みなく答える。


「ふむ、この事態だ。何か変なトラブルに巻き込まれていなければ良いが……」

「そうですね。私もそれが心配で……」

「では、ピンチヒッターとして、マサーコ、貴女を八大守護に立てよう」

「え? えぇぇぇぇぇぇ~~~っ!?」


 伊角真砂子、総合能力:48677。冒険者ランクA――。


「む、無理ですよ! 私、そんなに強い方じゃないですし! 絶対にできません!」

「やる前から無理だと諦める姿勢を、生徒に見せても良いのかね?」

「……む」

「できない。無理。やってもみないのに音を上げる。……それを教えるのがマサーコの教育方針なのかね?」

「――ち、違います!」

「まぁ、口では何とでも言えるから、どうだろうな」

「わ、分かりました! 私だって、皆と一緒にスキルを習ってきたし、皆がどんなクエストをやっているのか、実施調査だってやってきているんです! その大役お受け致します!」

「フハハハ! それでこそ、アリーマの担任教師だ! 勿論、その働きに期待しているぞ!」


     ●


 アスタロテ、総合能力:132012。冒険者ランクA++――。


「ウエンディに誘われて登録していたのだけど、まさかこんな事になるだなんて思ってもみませんでしたわ」

「何で、アスタロテは誘って、自分は誘わないんだ!」

「だって、貴女は色々と忙しそうに方々を回っていたでしょう? それでは、誘おうにも誘い難いというものです」

「う……」

「そもそも、町の代表が冒険者になって町を空けるのは本末転倒ではないですか。残念でしょうが、冒険者になるのは諦めなさいな」

「うぅ、そこまで言われると返す言葉もない……」

「あぁ、あと、言っておきたいことがあったのですわ」

「言っておきたいこと?」

「ベリアルの軍勢が攻めて来るのは、日の入りの時刻ではなく、正午頃になると思いますわ。支度をなさるのでしたら、皆様、お早目にお願い致しますわ」

「…………。……何故そう思う?」

「竜軍師ファルカオが姿を見せたからですわ」

「どういうことだね?」

「相手にメッセージを伝えるだけなら、戦力を曝け出す必要はありませんもの。あえて顔出しを行ったのは、相手にファルカオが来ているということを伝えるため――。魔界屈指の軍師として名高いファルカオが来ていると分かれば、普通の魔族であれば焦りますわ。そこで慌てて打って出ようものなら、数の差を活かしての殲滅戦。逆に日没までと額面通りに捉えようものなら、日中の襲撃は奇襲となりますわ」

「確かにそうだろうが……、何故、時間が正午だと思う?」

「簡単ですわ。あちらは、こちらの最高戦力をキルメヒアだと誤認している。だから、吸血鬼の力が一番衰える正午に合わせて攻め込むつもりでしょう。しかも、キルメヒア一人ではどうにもならないように、戦力を分散させての波状攻撃になるはずですわ」

「相手の手まで読みきっているのか……。流石は、アスタロテだな。それで、自分たちはどうすれば良い?」

「基本は先程の八つの要石を置く方針で宜しいと思いますわ。後は、昼夜を問わずの戦いになると思いますから、昼食の準備をすると共に夕食も作ってしまうと良いでしょう。防衛用の戦力振り分けは、戦力を一番良く把握している伊角様と相談しながらキルメヒアが決めなさい。戦力の相性もあると思いますから、遊軍も編成するのを忘れないよう。あと、町中での戦闘も想定してウンディーネ様たちの助力も仰ぐことですわ。水路を自由に移動できる彼女たちの存在は、きっと町の防衛の要となりましょう。それと、戦力として期待できない人たちには一箇所に集まってもらって、防衛をやりやすくするのですが、有翼部隊の強襲を考えると屋根のある建物、もしくは地下に潜って貰うことを考えねば――」

「――わ、分かった! 分かったから! 後でちゃんと聞く! だから、その辺にしてくれ!」


     ●


「――というわけで、あと一枠なのだが、誰か名乗り出てみないか?」


 キルメヒアの言葉に大勢が顔を見合わせて、その意図を探り始める。


 だが、キルメヒアとしては、その問い掛けに深い意味はない。


 本来ならば、夏目朗を推す予定だったのだが、彼の不在により予定が狂ってしまったので、その穴埋めを募集してみただけである。


 誰も名乗り出ないようであれば、美丘琴美か、北山隆史あたりを挙げてみようか。


 そんなことを考えながらの発言ではあったが、挙がる手は三本もあった。


「代表、その大役を僕にやらせて下さい」


 一人目は、仲町神那、総合能力:8126。冒険者ランクB+――。


 二次移住組の中でも図抜けた戦闘能力を誇ると噂の一人である。


 若干、総合能力は低いが、ユニークスキル持ちとの噂もあり、実戦ではそれなりの強さを発揮するかもしれない。


 敵の包囲が薄い所に配置できれば、十分に力を発揮してくれることだろう。


「いや、俺にやらせろ」


 二人目は、カーティス、総合能力:7974。冒険者ランクB――。


 狼人の長であり、狼人の中では総合能力が高い方だが、それでも先の七人と比べると物足りない強さだ。


 ただ、彼は狼人の纏め役なだけあって、狼人による集団戦闘を得意としている。


 町の一角を狼人で占めさせ、守りを固めるというのも案としては面白い。


 そして、そんな二人と変わらぬ速度で手を上げた少女がいた。


「怖いけど……、有馬先輩を守るためなら、私……、やりたいです……」


 川端棗、総合能力:51。冒険者ランクF――。


 ……凡そ、場違いな総合能力。


 そして、震える声には自信のなさが窺える。


 キルメヒアも、彼女の立候補は流石に無理があると思い、却下しようとしたのだが――。


(いや、おかしいぞ……?)


 その不自然さに気が付く。


(彼女の総合能力は、あまりに低過ぎないか……?)


 川端棗が浩助の朝の訓練に毎日のように顔を出していたことは知っているし、すれ違う度にあまりにも気配が希薄なので、隠密系のスキルに優れているであろうことは、キルメヒアも薄々気付いていた。


 ――だというのに、この総合能力はどうだ?


 スキルを習得することにより、ステータスボーナスが攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、速度、幸運、HP、MPのいずれかに上乗せされるのは、周知の事実。

 

 そして、それは少なくとも一度に百近くは上がるものなのである。


 だというのに、棗の総合能力は百以下を保っている。


 この総合能力は、鑑定スキルが上がった真砂子が、冒険者ギルドに登録している冒険者に対して、定期的に取得しているデータから割り出している。


 転生したての状態のステータスを調べたものではない。


(この娘は一体……?)


 キルメヒアは一瞬悩んだ後で――。


「では、三人にやってもらおう。一番脅威度が低いと思われる場所に配置する予定だが、無理だと分かったのなら、すぐに念話を飛ばして欲しい。遊撃部隊がそちらに駆けつけるはずだ」

「はい! 分かりました!」

「ち、足手まといにはなるなよ、テメェら……!」

「が、がんばりまふ!?」


 真剣な表情で握り拳を作りこむ棗。


 その表情からは、怯えや緊張は感じ取れるが、余裕や老獪さは感じ取れない。


 手慣れた冒険者のソレとは一線を画す、実に辿々しい態度なのだが、キルメヒアは逆にその姿が不気味に思えて仕方がない。


(一度違和感を覚えてしまったのにも関わらず、その仕草や動作に違和感がない。それが、逆に自分に警鐘を鳴らさせる。……川端棗、此奴は只者ではない!)


 何にせよ、かくして湖畔の町を守る八つの要石は決まった。


 後は、残った戦力を各所に割り振り、遊撃部隊を編成するだけだ。


 勿論、その遊撃部隊に、キルメヒアは自分を組み込むつもりであったので、戦力の割り振りは八割決まったと思っても良い程だ。

 

 後は、彼女たちが時間を稼いでいる間に、どうにかして浩助を覚醒させる必要があった。


(頼むぞ! リリィにベティ! この町の未来はお前たちに掛かっている……!)

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