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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第三章、不良に好き勝手に町を作らせたら、想像以上に自由過ぎる町になっちゃった結果がコレだよ!
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75、キルメヒアさんのユニークスキルが変更された結果がコレだよ!

 湖畔の町は建物も多いのだが自然を多く取り入れた町の構造をしている。


 そもそもが、他種族との共栄を町作りの根幹に盛り込んでいるため、そこまで近代化の要素をふんだんに採用することなく、余裕と自然を大切にした町造りを行ってきた結果だ。


 特に通りには、水の精霊用の大きな水路や、街路樹代わりの木々などが残され、全てが全て人造物で埋め尽くされるといった、風情のない景観はしていない。


 そんな湖畔の町の特徴ともいうべき施設に、公園の存在がある。


 天然の芝生に遊歩道や木で作られたベンチなどが設置され、人々の憩いの場として、町人たちに広く利用されていた。


 その証拠に、勝手に物を売っている露天商だとか、テーブル付きの休憩所で相談を行っている冒険者パーティーなどの姿が垣間見える。


 そんなゆったりとした空気が流れる空間の中で、木陰に据えられた木製のベンチに軽く腰掛けながら、キルメヒアは実に面倒くさそうに手に持った封筒を目線の高さにまで持ち上げていた。


「差出人は、アーカム・オールストン……。やれやれ、四天王が同じ四天王に手紙を差し出すとは……。密約でも結ぶ気かね……」


 丁寧に爪を伸ばして、ペーパーナイフ代わりに封蝋を切る。


 その傍らには、キルメヒアに封筒を運んできた烏が佇んでおり、キルメヒアはその烏にゴミとなった封筒を預けると、公園に設置されているゴミ箱に捨ててくるように指示を飛ばす。


 烏はその指示に従って、即座にゴミ箱目掛けて飛ぶと、ゴミを投下してキルメヒアの元へと舞い戻ってくる。


 とても利口な烏のようではあった。


「あぁ、ご苦労さん。とりあえず、また自分の屋敷の方で待機していて貰えるか? 何かあったのなら、自分に連絡を寄越すように頼むよ」


 その言葉を解したのか、利口な烏は一声鳴くと上空へ向けて飛び立っていく。


 その後姿を追うこともなく、キルメヒアは手にした手紙の内容にさっと目を通していた。


「四天王全員に対する集合命令?」


 恐らくは、王都の方で何らかの事態が起こり、その採決を行うために四天王に対して集合せよという命令が下ったのであろう。


 だが、キルメヒアはその紙をくしゃりと握りこむと、おもむろにポケットにしまい込んでいた。


「何で、自分がアーカム如きの言葉に従わなければならないんだ。自分に命令できるのは、魔王様だけだぞ。来て欲しいなら、お前の方から来いとのしをつけて返してやりたいぐらいだ」


 苛立ちからか、足元の草を蹴っ飛ばす。


「魔界一の策士がやる仕事か。……全くっ」


 声を荒らげた際に立派な犬歯が垣間見えるが、それを使う機会はまだまだ遠いことであることを祈りたいところだ。


「お、いたいた」


 ――といったところで、聞き覚えのある声を耳にし、キルメヒアは視線を声の発生方向へと向けていた。


 その彼女の認識は間違いではなかったようで、その視線の先にはアンを連れた浩助の姿がはっきりと映っていた。


「おーい、変態吸血鬼」

「おや、アリーマじゃないか。まさか、自分に会いたくて此処まで来てくれたのかい?」

「言いたかねーが、そのまさかなんだよ」


 浩助の言葉に、キルメヒアは一瞬硬直し、「そうか、なるほど」と納得し――。


「結婚しよう」


 ――おもむろにプロポーズしてみていた。


「しねーよ! 脳味噌お花畑か、テメェは!」


 だが、あえなく玉砕。


 そんなつれない返事にも、キルメヒアは思わず笑顔になってしまう。


 アーカムの手紙を読んだ後は、不機嫌極まりなかったが、こうして浩助をからかっている時の気安さは実に好ましい。彼女にとっての癒やしの時間である。


 その浩助の傍らに様子を窺うようにしてアンが顔を見せ、本日は刀の形状になっているのか、沙也加が浩助の腰に差されて、その存在感を際立たせていた。


 相変わらず、沙也加の刀姿は妙に存在感というか、威圧感というか、そういったものが纏わりついている気がしてならない。


「ふむ。では、一体何の用できたのだ?」

「いやぁ、アンが、その、な……」


 実に説明し難いとばかりに、浩助の歯切れは悪い。


 だが、そんな浩助を差し置いて、期待と希望に輝かせた目でアンはキルメヒアを見つめてくる。


「…………。……必殺技教えて欲しい」

「…………。ふむ。なるほどな。アリーマが抱えている問題が分かったような気がするよ」

「察してくれたか……」


 どうやら、アンは浩助との特訓をしている内に、必殺技のようなものを覚えたくなったようだ。


 確かに、効果的な技を覚え、それを自在に使いこなせるようになれば、アンの実力はまた一段階、上のランクへと上がることになるだろう。


 だが、実際問題、必殺技を覚えるのには手間も掛かるし、危険も要する。


 恐らくは浩助もそれを案じて、アンに危険だからやめろと言いたいのだろう。


「そうなんだよ。そんな、漫画やゲームみてーに派手に必殺技出すとか、生物的に無理だって教えてやってくれよ」

「……え?」

「え?」


 キルメヒアと浩助は思わず顔を見合わせる。


「いや、習得に苦労するかもしれないが、出せるぞ必殺技……」

「え、何それ? 異世界怖ぇんですけど……」

「いやいや、アリーマも使っているだろう!? アリーマの闇具作成(ダーククリエイト)――あれは確実に必殺技の類のものだ! 普通に闇具作成を使ったのであれば、あそこまで自在に武器を作成できたりしないからな!?」

「……そうなのか?」


 浩助が思わず視線を腰元の刀に移す。


 すると、腰元の刀が同意するように微かに揺れた。


《そうね。作ろうとしても、私には無理だったわ。……ということは、キルメヒアさん?》


 沙也加は自分の考えをまとめるために一拍置いてから続ける。


《スキルにはもう一段階、上があるということなのかしら?》

「あぁ。一応、スキル同士に等級の違いもあるから、上位スキルとは呼び難いし、自分は便宜上、アレンジスキルのことを必殺技と呼んでいる」

「……つまり、持ってるスキルを上手くアレンジできれば、それが必殺技になるのか? ……必殺って呼称はおかしくねーか?」


 浩助が言うと、キルメヒアは笑って言う。


「アレンジスキルでも良いが、必殺技の方が味があるだろ?」

「その辺の感覚は、俺にはわかんねーよ。……でも、確かに、こいつは習得に苦労するかもしれねぇな」


 一見して分かり易いスキルならば、アレンジするのに苦労はないのかもしれない。


 だが、スキルの大半は自動発動(パッシブ)だったり、発動条件が付いているものが多い。


 それに加えて、効能がステータスの上昇だけなどといったりすると、それをどうやればアレンジできるのか、考える必要も出てくる。


 そして、実際に考えついてやってみたとしても上手くいく保証はない。


 なかなかに、この異世界での必殺技というのは勝手が難しいようではあった。


「四大元素魔法とかであれば、割と必殺技は作りやすいのかもしれないが、アン君が求めているものは、そういう――とりあえず出来ましたみたいなものではないのだろう?」

「…………。……高威力、高性能、高機動」

「えらく欲張ったな、オイ」


 浩助が呆れたように呟く。


 だが、キルメヒアはその言葉を聞いて、真剣に考え込むと一つの結論を出す。


「難しいかもしれないが、自分のスキルを教えることであるいはやれるかもしれん……」

「…………。……本当?」

「あぁ、獣化のスキルというものがある。元々は魔族固有のスキルで、魔獣などに変化するスキルなのだが、同じ魔族であるアン君ならスキル経験値を取得することで習得可能なはず。それを上手くアレンジできれば、高威力、高性能、高機動といったアン君の要望に叶う必殺技へと昇華できる可能性はあるだろうな」

「あぁ、瞬間的な肉体改造として使えば、そんな効果も出せそうなのか……。どうするんだ、アン? キルメヒアに頼んで、スキルを習得してみるか?」


 アンは暫く考え込んでいたようだが、その視線がついっと浩助に動き、次の瞬間には覚悟を決めたように、力強い動きで首を縦に振る。


 いつまでも師匠の後ばかり追っていても、追いつけないことを彼女は知っているのだろう。


「…………。……うん。教えて、欲しい。……お願い、します」

「分かった。自分で良ければ教えよう」

「ところで話は変わるんだが……、必殺技を更に超必殺技ってのに昇華はできるのか?」

《あ、私も質問なんだけど、ユニークスキルでも必殺技に昇華させられるの?》


 矢継ぎ早に質問を受けたキルメヒアは目を白黒とさせながら、これが答えだとばかりにビシリと指先を浩助の肩先に突き付ける。


「そういうのは、ねこしぇ君に聞くのが一番良いのではないのかね!?」


 浩助と沙也加は互いに顔を見合わせると――。


『教えて! ねこしぇ先生!』


 ――と叫んでいた。それは完全に教育番組のノリであった。


     ●


 キルメヒアが封筒を開封してより、数日の後――。


 魔王城の一室で四天王による会議が密やかに執り行われようとしていた。


 議事進行役は、今回の招集者であり発起人でもある魔界一の軍師、アーカム・オールストン。


 そして、出席者は魔界の最高戦力と称されるベリアル・ブラッドと、魔界一の魔導師として名高いスネア・フェメリの二人である。


 現在、部屋には三人がおり、それ以外の何者も存在していない。


 彼らは互いに牽制し合うようにピリピリとした雰囲気を醸し出しており、誰が今から攻撃を仕掛けてこようとも受けて立つだけの臨戦態勢を保っていた。


 それでいて、まともに会議もしなくてはならないというのだから、難儀なものである。


「では、出席期日も過ぎたことだし、規定通り、カイン・キルメヒアは欠席としよう。この大事な会議の場に居合わせないとは残念な男だ」

「――ぁん? アイツに男も女もねぇだろ。気分で性別を変えやがるからな」

「うふふ、そうでもないわよ。あの子は好きな子に合わせて性別を変えているの。決して、好き勝手に変えているわけではないわ」


 どうでも良いようなキルメヒア情報を持ち出されても困るのか。


 特に興味はないとばかりにベリアルは小さく舌打ちをする。


 そんなことよりも、今は魔王城の一室に四天王の内の三人が一同に介しているという事実の方が重要であった。


「――んなことよりもだ。アーカム、テメェ、何で俺たちを魔王城に呼び戻した? 北の結晶化の平原じゃあ、神界の連中と交戦中なのはテメェも知っているだろ。あそこを抜かれたら、また魔族の領地が減ることになる。そんな間抜けをさせるために、俺様を呼び戻したとか言わねぇよな」

「えぇ、勿論です。そして、スネアさん率いる魔導部隊が西の砂漠で冥界の亡霊たちと交戦中なのも知っています」


 アーカムの言葉に、スネアは直ぐ様、苦笑を顔に貼り付ける。


「こちらは交戦中なんて言えたものじゃないわ。彼奴等が魔族領に入ってこないように追い払っているだけですもの。彼らに明確な意志みたいなものは無いんじゃないかしら?」

「理由はともかく、魔王城の外に出て戦っていらっしゃる貴方がたには頭が下がる思いですよ。私は内勤ですので、こうして皆様が戦いやすいように内政と治安を維持するぐらいしか能がありませんからね」

「――それでも、俺たちがやりやすいように取り計らってんだろ? ――んで? 今日来てねぇ、後の一人は何やってんだ?」

「斥候ですね。周辺領地の確認と、味方になりそうな種族が居た場合の懐柔をしている――、と魔王様には聞いています」

「――チッ、どうせ、それにかこつけて自由にやってるだけだろ」

「キルメヒアちゃんは一人軍隊(ワンマンアーミー)と呼ばれる戦略兵器だから仕方ないわよ。彼女がその気になって、そこに生物が存在すれば、すぐに流行病(パンデミック)が蔓延するし、その流行病に掛かった子は全て彼女の手下となってしまう――、下手に王都で働かせるわけにもいかないわ」


 キルメヒアの持つユニークスキル【吸血(真祖)】は、彼女に血を吸われたものを吸血鬼に変えてしまう、質の悪い性質を持ったスキルである。


 生物の密集地帯――特に国や町などに送り込めば、そのままその国や町ひとつを彼女のものに塗り替えられるだけの力がある。


 キルメヒアが戦略兵器扱いされ、四天王に数えられる理由がこの辺にあるわけだが、本人が魔王の命令以外はほぼ聞かない傾向にあるため、彼女の四天王入りを疑問視する声は割と多い。


「――居ても居なくても迷惑な奴め。――それで? 労うために呼んだわけじゃねぇだろ。そもそも、何で、四天王しか呼ばねぇ? 魔王様はどうした?」

「四天王だけで話し合いたい議題があるんじゃないのかしら?」

「そうですね。スネアさんの発言が概ね正しいです。……まぁ、更に補足するならば、我々だけでまずは話し合わなければならないと申しますか……」


 アーカムの言葉に二人は腑に落ちないような顔をしてみせる。


 何故、そんなにも歯切れが悪いのか、彼らには全く分かっていないようだ。


 アーカムはそんな二人の疑問を氷解させるためにも、ゆっくりと溜めた後で次の言葉を紡いでいた。


「――魔王様が、崩御なされました。……私が御二方を呼んだのは、今後の方針について話し合いたいと思ったからです」


 アーカムの言葉に、二人は言葉を発することもなく、驚きを顔に貼り付けることしかできなかった。

タイトル通り。

キルメヒアさんのユニークスキルが獣化⇒吸血(真祖)になりました。

やったね! 強いぞ! キルメヒアさん!

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