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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第一章、調子に乗って闇魔法使っていたら、知らない所で恨みを買っちゃった結果がコレだよ!
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6、元生徒会長 ⇒ 今ギルドマスター

 とりあえず、これからどうするかを話し合うために、浩助と沙也加は自分たちの教室へと戻ることにする。


 先行きは不透明であったが、ある程度、知り合いに協力を頼む必要性があると思ったからだ。


 だが、浩助たちの目論見は、あえなく頓挫する。


 三年の彼らの教室には、殆ど人が残っていなかったからである。


「あん? 何で、人がいねーんだよ?」

「知らないわよ。有馬から離れられなかったんだから、私が知るわけないでしょ」

「それも、そうだけどよ……。お、拓斗いんじゃん」


 浩助は、同じクラスの知り合いを見つけて声を掛ける。


「拓斗!」

「よう、浩助。傷はもう良いのか?」

「お前もゲームやったことあんなら知ってるだろ。宿屋で一晩寝れば、HPとMPは全回復するんだよ。保健室で寝たからバッチリだっつーの」

「いや、ゲームん中じゃ、そうかもしれないけど。この世界じゃ、そうとも限らないだろ? というか、本当に寝たら回復するのか? マジで大丈夫なんだよな?」

「いや、知らねーけど。でも、一応ステータスは――」


 そう言って、視界の片隅に浩助は意識を向ける。


「――ゼンカイしてるっぽいぞ」

「ふぅん、新たな発見って奴かなぁ。マスターにでも報告しておくか」

「マスター?」

「ん、あぁ、元生徒会長のこと」


 何故、元生徒会長をマスターなどと呼んでいるのかは判らないが、それを問うよりも早く、沙也加が話に割り込んでくる。


「それよりも、鈴木君、この現状はどういうことなの?」


 沙也加の視線の先には、殺風景になってしまっている教室の姿があった。


 一応、二、三人は残っているようだが、他に居た二十数名の生徒たちが影も形も見えない。


 浩助の幼馴染でもある、鈴木拓斗(すずきたくと)は少し困ったように笑みを浮かべる。


「田中の奴が、探索兼ねてレベル上げしようとか言い出して……、みんな行っちゃったよ」

「田中って、あのオタクの田中君?」

「そう。オタナカ」

「ってか、何だよ、レベル上げって……」

「浩助たちは知っているか知らないけど、ステータスオープンって念じるとステータスが見られるんだよね。オタナカたちに言わせると、それが異世界ものの常識らしいんだけど……」

「じょ、常識だったのか……、知らなかった……」


 ショックを受ける浩助を尻目に、沙也加は「いや、そんな常識ないから」と小声で突っ込む。


 そんな二人のやりとりを微笑ましく見つめながら、拓斗は言葉を続ける。


「――で、オタナカが言うには、出てくるレベルとスキルって奴の値が高くなればなるほど強くなるらしいんだ。それで、さっきの豚のバケモノ? オタナカはオークとか言っていたけど……、そいつらを撃退できるぐらいには強くなろうって言って、丁度、周辺の探索もしなきゃいけないって話にもなってきたところだったし、先生を連れて森の中にいっちまったよ。多分、学校に程近い所で、雑魚モンスター狩るついでに、地形とか確認してるんじゃないかな。ゲームの常識だとそんなところだと思うけど」

「ふぅん、状況把握に、自分の身は自分で守る――、みたいなものか。でも、それじゃあ、拓斗は何で此処に残ってるんだよ?」

「俺? 俺のスキルが戦闘向きじゃないんだよね。だから、付いていっても足手まといになるかなーって」

「ちなみに、鈴木君のスキルが何なのか、聞いてもいい?」

「別に隠す必要もないからいいよ。鍛冶鋳造Lv5と錬金術Lv3」

「…………。そういえば、鈴木の家ってバイク屋だったっけ」

「そうだけど、その御蔭でこういうスキルが付いたんだとしたら……、ツイてないとしか言いようがないよなぁ。俺も戦闘スキルみたいな派手なスキル使ってみたかったし、魔法とか撃ってみたかったのに……」

「魔法が使える子もいるんだ?」

「ウチのクラスに何人かいたよ。伊角先生にでも聞いたらわかるんじゃない? 俺は誰だったか忘れた」


 拓斗は肩を竦める。


 それでも、拓斗がもたらしてくれた情報は有用なものであった。


 これから、他の種族と出会い、戦闘になった場合を考え、準備をする筋道が見えてきたためである。


 浩助が礼を言って、担任の伊角真砂子の元へ赴こうとしている、その時――。


「鈴木君、居るかい? ……おや、それに良い所にいた。有馬君に水原君」


 ――教室の扉がゆっくりと開かれる。


「おう、元生徒会長じゃん。また何かお説教か?」

「やぁ、ギルドマスター。何か用?」

「「はぁ?」」


 浩助と沙也加の声が思わず重なる。


 それは、目の前に現れた長身オールバックの人間に対する呼称が全く別のものであったためだ。


 だが、その奇声の発生原因を作った本人は、原因は別にあるとばかりに、元生徒会長に向けて、軽く視線を向ける。


「仕方ないだろ。本人がギルドマスターと呼べって言ってるんだから」

「別に、ギルマスでも構わんぞ」

「……頭、おかしいの?」


 沙也加の言葉に、いちいちもっともだとばかりに、浩助が頷く。


 だが、その言葉に怯むことすらなく、元生徒会長であるオールバックの男――時任聖也(ときとうせいや)は大仰な身振りで両手をバッと開く。


 普通の人間がやったのなら奇行なのだが、この男がやると何故か様になるのが不思議だ。


「おぉ! 異世界! 異世界だよ! 有馬君! 水原君! そんな世界の中で元生徒会長という肩書きが一体どれほどの意味を持つというのか! ――いや、持つまい! というわけで、私はギルドマスターという役職を名乗り、異世界に放り出されてしまった迷える子羊たちをまとめ上げ、救おうと考えたのだよ! ここまでは理解してくれるかね!?」

「まぁ、異世界で元生徒会長とか呼ばれても何の権限もねーしな。でも、何だよ、ギルドマスターって……」

「そこは、少し詳しい説明をしたいので、できれば三人に生徒会室に来てもらいたいのだが……、構わないかね?」


 聖也の言葉を受けて、拓斗が頷く。


「俺は別に構わないぜ」


 そうなってしまったら、後は雪崩式だ。


「まぁ、拓斗が行くってんなら、俺も行くかぁ。つか、質問したのも、俺だし」

「有馬が行くなら、離れられない私も強制参加なのよねぇ。あぁ、自由が欲しい……」


 三人は、聖也に導かれるようにして三年の教室を後にするのであった。

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