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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第一章、調子に乗って闇魔法使っていたら、知らない所で恨みを買っちゃった結果がコレだよ!
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5、激昂細雪

「ここは――!?」


 浩助が意識を取り戻した時、そこには見慣れぬ天井があった。


 白い天井、白いカーテン、白い壁――、保健室、だろうか?


 そして、見慣れないものの中に、ひとつだけ見慣れた顔。


「……水原?」

「あー、やっと起きた?」


 水原沙也加は、少しだけ疲れた顔をして、浩助の方を覗いてくる。


 もしかしたら、寝ている間の世話をしていたのかもしれない。


 そう考えると、少しだけ申し訳のない気持ちになる。


「診ててくれたのか。悪い、迷惑かけた」

「ま、別に良いんだけどさ。それしか、やることないし」

「? どーいうことだ?」

「私のスキルっていうの? 細雪(ささめゆき)が持ち主と認めたものの半径十五メートルから離れられないのよ。だから、動けなかったってだけ」

「細雪? ……あ」


 浩助が疑問に思ったところで、ベッドの中から、ねこしぇがもぞもぞと這い出して来る。


 ぬいぐるみが動いていることに、沙也加は目が点になっているが、浩助はねこしぇを抱え上げてから、沙也加に声を掛ける。


「悪い。今から、水原の言葉を確認するためにステータス見るけど構わねーか?」

「はぁ? そんなことできるの?」

「このねこしぇになら出来る、……と思う」


 ニャアと鳴くぬいぐるみに胡散臭げに視線を向けていた沙也加だったが、特に見られても問題ないと判断したのか、気軽に「いいよ」と許可してくれる。


 それと同時に浩助の視界に文字が踊っていた。


================================================================

 名前:水原沙也加

 種族:人間(人間界)

 年齢:18歳

 職業:学生

 状態:人間

 レベル:2

 HP:51/51(剣:2000)

 MP:23/23(剣:2000)

 攻撃力:7(剣:200~2000)

 防御力:10(剣:200~2000)

 魔法攻撃力:2(剣:200~2000)

 魔法防御力:3(剣:200~2000)

 速度:7

 幸運:16

【スキル】

 念話Lv1


【ユニークスキル】

 天剣六撰―細雪―/完全属性耐性/経験値取得二倍/天神魔冥特効


【称号】

 幸運の星(経験値取得二倍)

================================================================


 通常スキルが少なくて、ユニークスキルが多い構成。


 しかも、状態:人間とか、(剣:2000)とか訳の分からない数値が出ている。


 とりあえず、浩助はユニークスキルである天剣六撰―細雪―を指で触れる。


 【ユニークスキル】天剣六撰―細雪―(てんけんろくせん―ささめゆき―)【単一スキル】

 効果時間:MP持続/リロード時間:0秒/消費MP:1~99999(単位:分)

 所有者:有馬浩助

 説明:世界に六本しかないと言われる神滅剣のひとつ。斬られた者は速度を奪われ、斬った者は鋭き動作を得る。スキル使用時に、状態:剣へと移行。剣時ステータスはレベルによって上昇。消費MPに比例し、ステータス可変。属性耐性完全解放。天神魔冥特効。速度吸収・極。ただし、所有者を一人と定め、その所有者から離れることはできない(半径15メートル)


「…………。何か、カース系スキル入ってねぇ?」


 ジト目でねこしぇを見つめると、ねこしぇは困ったような瞳で浩助を見返す。


《ニャー。どちらかといえば、本人の安全を守るためだと思いますニャ。スキル使用後は剣に変化して動けなくなるみたいですしニャー》

「そういうもんか……」

「何一人でぶつぶつ言ってんのよ、有馬?」

「? もしかして、聞こえてないのか?」

「はぁ?」

《ご主人様にしか聞こえないように会話していますニャ》

「…………。パーティー申請を受けてもらったら、コイツに声を聞かせて貰ってもいいか?」

《そういうことでしたら、問題ないですニャ》


 信頼を置いた相手であれば問題ないという判断なのだろう。


 ガバガバだとは思うが、今はねこしぇの言葉に甘えることにする。


「おい、水原。今からパーティー申請するから、てめぇも俺のパーティーに入れ」

「はぁ? 何で有馬とそんなことしなきゃいけないのよ?」

「ってか、俺が所有者に登録されているんなら、そうする以外に方法がねぇだろーが。それとも、俺の傍を離れて十五メートル以上も歩けるのか?」

「はぁ……。そうね……。そうよね……。あの時、アンタに握らせなければ……。分かったわよ……」


 浩助がパーティー申請を送り、沙也加はしぶしぶそれを受諾する。


 これで、浩助のパーティーは実質三人となったわけだ。


 そして、それを確認するなり、ねこしぇが二本足で立ち上がり、優雅に礼をする。


《ニャー。どうも、水原沙也加様。ねこしぇはねこしぇと申しますニャ。これから宜しくお願い致しますニャ》

「うっわ! ぬいぐるみが喋ってる! ぬいぐるみは喋ってるって!」

「これで、俺が一人でぶつぶつ言っていると言われる心配はなくなったわけだな」

「ってか、喋ってるし、動いて――、踊りまでしてるんですけど!? 猫ダンス!?」

「あ、ねこしぇ。コイツにもさっきの管理者の話を掻い摘んで説明してもらえねーか?」

《畏まりましたニャ》

「何で無視すんの!? もう少し、驚きなさいよ! 有馬!?」

「あぁ、そういうのいいから。とりあえず、そのねこしぇの話をしっかり聞いてもらえねーか? 俺もちょっとまだ混乱してるとこあるし」

「アンタねぇ……。はぁ、もう良いわよ。聞けば良いんでしょ、聞けば――」


 はいはい、と軽く流しながら、半ば諦めたかのように沙也加はねこしぇの話を聞き始める。


 そして、十五分後――。


「――はぁ!? ふざけてんの!? 何処のどいつよ!? そんな馬鹿なことしでかした阿呆は!?」


 ――激昂した。


 ベッドから抜け出し、室内を見渡して、やっぱり保健室だったのかと再認識していた浩助も、沙也加のあまりの怒声に思わず振り返ってしまうほどだ。


「美優ちゃんとか麻美ちゃんとか、家に帰りたいって泣いてたんだよ!? 私だって、道場の稽古サボることになるから、お爺ちゃんに怒られるし……、人の迷惑考えなさいよね!?」


 随分と怒っているようだ。


 そして、浩助は思い出す。


 そういえば、沙也加の実家は古流剣術だか、武術だかの道場で、沙也加本人も剣道部のエースとして、インターハイで優勝したことがあるとかなんとかいった話が、あったような、なかったような……。


(だから、剣……というか、刀になるためのスキルが付いたのか? 刀に神経を通わせて~的なノリ? 何か、そういう意識が強かったのかもしれねぇな。……知らねーけど)

「有馬!」

「……あん?」


 張り上げられた声に、妄想から現実へと引き戻される。


 沙也加の目は爛々と輝いているように見えた。


「ぶっとばすわよ、ソイツ!」

「……あったりめーだ。ソイツぶっ飛ばさなきゃ、元の世界にも戻れねーかもしれねーし、元の世界自体もこっちに引き込まれる可能性だってある。ぶっ飛ばさなきゃ、安心できねーからな」

「珍しく意見が一致したじゃない! ――じゃあ、行くわよ!」

「へっ、本当に珍しくだけどな。…………。――って、行くって何処に?」

「とりあえず、トイレ行ってもいい……? 有馬の周囲十五メートルから離れられなかったから……、ちょっとね……」

「あ、あぁ、悪ぃ……」


 勢い込んだものの、幸先はそこまで良くはない二人なのであった。

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