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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第三章、不良に好き勝手に町を作らせたら、想像以上に自由過ぎる町になっちゃった結果がコレだよ!
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50、ステータスオープン(47話ぶり二度目)

「いやぁ、鉄の網なんて鍛冶スキルで作って何するのかなと思っていたけど、湖畔でバーベキューとはねぇ」

「スッゲー沢山魔物を解体して、肉素材だけは腐るほどあったからな。それに、森ん中を歩いてきた後で、料理スキル持ってる奴らに料理作れって言うのも酷だろ?」

「そういう心遣いは助かるよ。職人ギルドを代表して礼を言わせてくれ」

「まぁ、こっちの町にはあんまり人数もいねぇしな、持ちつ持たれつって奴だ。しっかし、すぐ日が暮れるなぁ……」


 夕暮れ時――。


 湖畔でのバーベキュー大会で腹を膨らませた一行は、本日は特に夜に行動することもなく、各々が旅館の中へと戻ってきて思い思いの時間を過ごしている。


 拓斗は引き続き布団を錬金スキルで生み出しているし、お腹が一杯になったアンは幸福そうな顔を見せて、沙也加に膝枕をしてもらって眠っている。


 そんな沙也加はアンの頭を撫でながらご満悦な表情を浮かべているし――、まぁ、ほぼ自由といった感じではあった。


「ですニャー、灯り要るか?」


 そんな最中、浩助の言葉に反応したのは畳の上でのんびりとしていた洛だ。


 彼女は何か考えがあるのか、袂をごそごそとあさり始める。


 一度、あの袂の中身がどうなっているのか、見てみたい気分に駆られるが、それは野暮というものか。


 割りと危険物とかも沢山入っていたりしてなーと、浩助がのんびりした気分で寛いでいると突如室内が明るくなる。


「何だ? 宝貝って奴か?」

「うぅん! 光石っていう魔石だよ! 冒険者ギルドから買い取ったの!」


 洛が説明するには、どうも光属性を宿した石らしく、たまに魔物を討伐した際にその体の中から出てくるらしい。


 ただし、ドロップ確率はそれなりに低いらしく、職人ギルドでもあまり扱ってはいなかったようである。


「これを武器に混ぜ込むと、その属性の武器が出来るのだ! エヘン!」

「なんで、洛が鼻高々なのかは知らねーが、真夜中にも光るってぇのは便利だな」


 特に、今室内にいる面子の中では、光魔法が使えるものがいない。


 これは、夜更かしのお供に重宝しそうな貴重な素材のようだ。


「他にも、火とか、水とかの魔石もあるみたいだぞ! 大体は普通の紫色の石なんだけどな!」

「へー、なるほどなぁ。今度から解体の際には気をつけて見てみるかー」


 レアな合成用の素材といったところなのだろうが、灯りを取るためには割りと有用である。


 浩助も収容スキルで格納していた魔石の種類をねこしぇを通してひっそりと確認してみたりもするが、そういった属性付きの魔石は取得していないとのことであった。


 さすがの幸運ゼロの男――。


 レア物の引きには滅法縁がないのである。


「お、良い物あるねぇ。浩助、作業するのに便利だから、俺の方にそれ貸してくれないか?」

「まぁ、手元を照らすものがあった方が便利か。そらよ」


 空中で緩やかな弧を描いた光石を、拓斗は慌てて受け止める。


「おっととと!? ふぅ、やれやれ……。暗い中見辛いんだから、投げて寄越すなよ……」

「悪ぃ悪ぃ。今度から気をつけるって」

「まぁ、いいや。とりあえず、暇なら皆の分の布団でも敷いてくれない? 水原さんはそんな調子だし、浩助ぐらいしか動ける奴いないだろ」

「へいへい。――ったく、洛手伝え。寝るための準備すんぞ」

「おう、分かった!」


 二人して布団を運んで、人数分敷いていく。


 その過程で、浩助は「ん?」と気付く。


「……ってか、布団なんて錬金で作れたんだな?」

「大体、元の物が残っていれば、錬金スキル保有者は物を触るなり、食べるなりすれば素材は分かるからね。今までは素材が足りなかったから、あまり量産は出来なかったけど、今回はその素材が多く手に入ったから、こうやって増産できているだけだよ」

「その素材って……」

「蜘蛛の絹糸」

「あぁ、なるほどな。――よし、完成。水原、アンを運べるか?」

「楽勝よ――、と言いたいところだけど、ちょっと足痺れちゃって無理かな。有馬、頼める?」

「お、おう、い、いいぜ! じょ、上等じゃねーか! やってやんよ!? はぁ、はぁ……」

「なんで、そんなに怪しい興奮状態なの……?」


 アンひとりを抱え上げるだけだというのに、浩助の息遣いは異常だ。


 そんな浩助を見ながら、沙也加は早まったかと少しだけ後悔する。


 だが、そんな予想とは裏腹に、浩助のエスコートは驚く程丁寧に、アンの体を微細に揺らすことなく、布団の中に潜りこませていた。


 何だかんだ言って、ステータスだけで見れば優秀な男なのだ。


 相手に揺れを感じさせない強大な筋力と、足場の悪さでも揺らがないバランス感覚は、共に高い攻撃力と速度が示している。


 アンを布団に寝かしつけた後で、浩助もごろりと布団に横になっていた。


「有馬、もう寝るの?」

「ん? ちと考え事だなー」


 浩助は寝転びながら、考えを巡らす。


(ステータスオープン――)


==============================================

 名前:有馬浩助アリマ・コウスケ

 種族:人間(人間界)

 年齢:18歳

 職業:魔導銃士

 状態:通常

 レベル:32

 HP:8617/8617(+8340)

 MP:7085/7085(+6980)

 攻撃力:16400(+16256)

 防御力:0

 魔法攻撃力:14662(+14560)

 魔法防御力:0

 速度:77642(+77537)

 幸運:0

 

【スキル】

 天剣六撰Lv2/修羅LvMAX/悪鬼LvMAX/羅刹LvMAX/捷疾鬼Lv2/剣鬼LvMAX/妖刀LvMAX/魔剣LvMAX/暗黒魔法LvMAX/闇魔法LvMAX/混沌魔法LvMAX/呪術LvMAX/毒殺LvMAX/狂犬LvMAX/暗殺LvMAX/狂気LvMAX/憤怒LvMAX/憎悪LvMAX/決死LvMAX/聖剣LvMAX/魔法剣LvMAX/剣術LvMAX/二刀流LvMAX/抜刀術LvMAX/剣聖LvMAX/精神修養Lv6/解体Lv7/外道Lv3/冷酷Lv2/孤軍奮闘Lv4/虐殺者Lv3/運搬Lv6/臥薪嘗胆Lv1/不屈Lv3/忍耐Lv3/斧術Lv5/槍術Lv3/弓術Lv3/鞭術Lv3/棒術Lv3/察知Lv5/狩人Lv3/頑強Lv3/追跡Lv3/気配遮断Lv5/伐採Lv6/建築Lv4/悪食Lv2/格闘Lv3/採掘Lv4/威圧Lv1/努力Lv6/精密射撃Lv4/早撃ちLv6/曲撃ちLv3/狙撃Lv2


【耐性】

 毒耐性(極)/闇耐性(極)/暗黒耐性(極)/混沌耐性(極)/呪術耐性(極)


【称号】

 救世主(全パラ+3000)、卑劣漢(HP、攻撃力、魔法攻撃力+1000、防御力、魔法防御力-2000)、機甲種キラー(MP、魔法攻撃力+2000)、電光石火(速度+10000)


==============================================


 スキル欄を見ると、眩暈がするほどのスキルの多さ。


 そして、ステータスは異世界召喚されたばかりの頃に比べると――速度を抜かして――二倍近くにも伸びている。


 あの頃でさえ、八界鎖那に仰天されたステータスだったというのに、僅かひと月足らずの間にこれだけの成長を遂げたのは、ひとえに影分身のスキルのおかげだろうと浩助は思っている。


 そして、幾度もスキルを取得している内に、浩助にも分かってきたことがある。


(レベル32の素のHPが277か。やっぱ、この世界はレベルを上げるよりもスキルを取っていった方が強くなりやすいんだな……)


 薄々感づいていたことではあったが、浩助はそう結論付ける。


 精神修養のスキルを取得した際に、ステータスボーナスとしてMPが120ぐらい増えたことがあった。


 レベル32の素のHP277と比べると、スキルの取得によるステータスアップ効果がどれほど重要であるかは、かなり分かりやすいと思う。


 そして、スキルはスキルレベルアップによっても、ステータスに対する恩恵が増える。


 その恩恵は、スキルによってまちまちだったりするのだが、その辺もスキルに因る『格』のようなものがあるらしい。


 例えば、捷疾鬼のような特定の三スキルをレベル最大にしてからでないと取得できないスキルは、特上位スキルという位置付けだし、特定の二スキルをレベル最大にしてからでないと取得できない暗黒魔法のようなスキルは上位スキルという位置付けになる。


 逆に、努力次第で条件無しで取得出来る伐採などのスキルは下位スキルという位置付けだし、習得に手間と時間が割りと掛かるスキル――例えば、闇魔法などだが――は中位スキルという位置付けになる。


 これらは、下位スキルが一時間も座禅を組んでいれば取得できるぐらいお手軽なのに対して、中位スキルは一ヶ月以上の修行期間が必要だったりして、簡単にステータスアップを目指す分には不向きだ。


 そして、スキル取得の難易度が高い程、ステータスボーナスの効果は大きくなる。


 だが、浩助が狙っているのは、あくまで中位以上のスキルではなく、下位スキルの乱獲による基本ステータスの上昇にあった。


(だよ、な? やっぱ、やらねーより、やった方がいいよな……?)


 浩助は自問自答する。


 浩助が夢想しているのは、この湖畔の町に住もうとしている者たちに下位スキルを乱獲してもらって、お手軽にパワーアップして貰おうということであった。


 現状、学園と違って暮らす者が少ない湖畔の町では、人数が少し減るだけでも上手く立ち行かなくなる可能性が高い。


 そのため、一人でも多くの人間を強くすることで、タフな状況にも対応しようという考えが浩助にはあった。


(けど、いきなりそんな事を始めても反発を受けるだけだろーし、ある程度強くなる意志がある奴を募って、最初は実験的に始める感じがいーかな……?)


 それが軌道に乗って、尚且つ簡単に強く慣れるのだと分かって貰えれば、無理強いする必要もなく、人は集まってくるはずだ。


(この町は、人間だけじゃなくて魔族やウンディーネや、他の種も住むかもしんねーんだ……。そんな時に人間が弱いまんまだったら、他の種にナメられるし、トラブルの種にもなりかねねぇ……。今ならまだ始まったばかりだし、新しい事を取り入れる気風がある。やんなら、今しかねーだろ。明日の朝にでも有志を集ってみっか……)


 そう結論付ける浩助だが、もうひとつ、彼にとって課題というべきものが残っていた。


 それを考えると頭の痛い問題だが、無視するわけにもいかない。


(効率が悪いから今まで控えていたが、そろそろ覚えるべきか……、新たな魔法って奴を)


 魔法――、そう魔法だ。


 浩助が多用する闇魔法もそうだが、この異世界では魔法というものの利便性が頭一つ抜けている気がする。


 勿論、地球で通用していた科学技術がこの異世界で通用しないというわけではない。


 ただ、この異世界に召喚されたのは医者や科学者や軍人などではなく、ただの学校関係者なのである。


 彼らが、この異世界でインフラを整備していくには、とてもではないが経験も知識も足りない。


 それ故に、魔法に頼らざるを得ないのであろう。


 そして、魔法はいずれもが中位スキル扱いとなっており、最低でも一ヶ月の修行期間が必要だ。


 浩助が異世界召喚された際に、魔法の習得を後回しにしたのは、彼の特異なステータスに関係がある。


 特に、防御力、魔法防御力がゼロという状態は、非常に脆い状態を示しており、その打開策としてどうしても他スキルを乱獲することによって、HPの底上げを図る必要があったのだ。


 だが、HPが八千にまで伸びた現状なら、そろそろ解禁しても良いのではないだろうか?


 それに、MPも七千まで伸びた。


 影分身の持続時間も半日近くにまで伸びたのだから、そろそろ魔法の習得に手を伸ばしても良い時期だと浩助は判断する。


(特に、回復が可能な聖魔法を覚えてぇところだが、あれは光魔法と献身とかいうスキルの上位スキルらしいからな。とりあえずは光魔法の習得を狙ってみるか。しっかし、どーっすかなー。他のスキルの習得と同時並行で進めると時間掛かりそうだし、少しの間、新スキルの習得を止めて光魔法の習得に一本化した方がいいかな……? まぁ、ステータスの伸びが悪くなるのは、ちぃっと不安が残るが、闇魔法があんだけ便利なんだ。少しぐらいリスクを背負ったとしても、光魔法を取っといて損はねぇはずだ)


 結局、浩助は影分身百体を使って光魔法の習得を目指すことにする。


 そうすれば、本来なら一ヶ月の修練を要するところを、ねこしぇのスキル経験値上昇二倍の効果と影分身百人で二百倍の効率で習得できるはずだ。


 理論上なら、三時間四十分もあればレベル1ぐらいは習得可能なはずである。


 その代わり、他の作業はほぼ滞ってしまうが……。


(家作りとかは、俺が手伝いつつ、習得出来た時点で影分身の何人かを建築のために回す形で良いか……。それと、魔法といえば、あともう一つ確認しねぇといけねーことがあったな)


 浩助の顔が自然と渋くなる。


(俺が覚えている魔法は、まだあと一種類ある――。混沌魔法……。名前からして不吉な予感しかしねぇから後回しにしてきたが、そろそろ中身を確認するべきなのかもしれねー……。後、他のスキルも幾つか確認しておいた方がいいかもな)


 魔族と同じ町に住む事で、当然のようにリスクだってあるはずだ。


 それをスキルを把握することで、回避できるのであれば、しておいて損はないだろう。


 浩助は直ぐ様それを実行に移そうとしたところで……。


《ご主人様、どうやら、お客様のようですニャー》

(――ん?)


 言葉もなく上半身を跳ね上げた浩助の姿に、反応できたのは沙也加だけだ。


 拓斗はいつの間にか布団の上に胡座をかいて座る浩助に驚き、洛はそもそも浩助が起き上がったことに気付いてすらいない。


「どうしたの、有馬?」

「俺に客らしーや。扉の外に誰か居るんじゃねーの?」

「流石だな――、と言っておこうか」


 浩助の言葉に反応するように開かれた扉の向こうに姿を現したのは、面当てを下げて表情を隠すウエンディの姿であった。

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