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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第二章、変態吸血鬼の奇行に気を取られ過ぎて、謎の誘拐事件に巻き込まれた結果がコレだよ!
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41、テメェら、華麗にスルーするのかよ!?

「今回の八世界融合の件について、我々魔族の見解としてはこの問題の早期解決は難しいと思っているのだ」


 キルメヒアは鈴の音のような涼やかな声で、そう切り出した。


 その言葉に、あえて異論を挟むものはいない。


 現状、どの種族が八世界融合を狙ったのか、単独犯なのか、複数犯なのか、それすらも分かっていない。


 遅々として進まぬ現状を鑑みれば、スピード解決できるなどと軽々には語れぬのは当然か。


 生徒会室に詰めた各々は、キルメヒアの次の言葉を待ち受ける。


「だから、自分たちは魔王様の命を受けて、様々な場所に拠点を作るように命じられている。長いスパンで物事を考えた時、物資や土地はあるに越したことはないからね。その為の拠点作成だと考えて貰えば分かり易いだろう?」

「主からの命令を、そんなに簡単に話してしまって良いのかい?」


 キルメヒアの身を案じたというよりも、真意を計るためだろう。


 聖也が鷹の目のように鋭い眼光で、キルメヒアの表情を捉えていた。


「致し方ないね。キミたちに信用してもらわないことには、自分のハッピーパラダイスの夢は潰えてしまうからね」


 何か良く分からない単語が聞こえてきた気もしたが、話の腰を折るわけにもいかず、皆はぐっとツッコミを我慢する。


 ただ、浩助だけはキルメヒアに対して、物凄いメンチを切ってはいたが……。


「続けるよ? 一応、魔王様の命として、『各々が必要と思う拠点を、各々の裁量で作って良い』という命令を受けているんだよね。だから、中には小ぢんまりとした山小屋を建てて、そこを拠点にする者もいれば、洞窟に住み着いて魔物の軍団を育てている者なんかもいる。自分も最初は、コウマ――、コホン、館を作るつもりだったが、気が変わった」


 そんな浩助のメンチにも怯まずにキルメヒアは続ける。


 ある意味、もの凄い精神力である。


 というか、頬を赤く染めているところを見ると、ビビっているとかではなく、悦んでいるようではあった。


 浩助、完全敗北である。


「どうせ、拠点を作るなら、縁もあることだし、複数種族が住むような拠点を作れればどうかと考えたのだよ」

「つまり、貴女が言いたいのは、人間と魔族での共同の拠点を作らないかということですか?」

「更に加えれば、ウンディーネもだな! 彼女たちも異文化交流には乗り気だった! 誘えば、きっと顔を出してくれるはずだ!」


 キルメヒアの言葉に、聖也は視線を伏せる。


 彼は自分の頭の中で、人族と魔族が共存する町を作った場合のシミュレーションを行っているのだろう。


 勿論、利点もあれば、欠点もあるはずだ。


 一分ほど黙考してから、聖也は結論を出す。


「あまり、こちらとしては乗りきれない話だ」

「理由を聞いても良いかね? あぁ、口汚く罵ってもらっても構わないぞ? 自分はそちらの方がむしろ興奮するからな?」

「いや、そういうのは謹んで遠慮するが……。まず第一に、魔族との距離が近い事によって、我々人間側が傷付けられる恐れがある。……というより、確率的にはかなり高い確率で虐げられるだろう。まぁ、私の偏見であったのであれば申し訳ないが、彼らは力を至上と考え、人間を虫けらのように扱う、そんな種族ではないのかな? そんな種族と本当に隣人でいられると思っているのかね?」

「確かに、そういう考え方の魔族もいる。残念ながらね。……だが、全部が全部、そういった魔族ばかりではないのだよ。中には友好的な魔族もいるし、対等な立場で付き合おうという魔族もいる。そういった魔族たちを呼ぶことで、ある程度、町の治安は維持できるはずだ」

「だからといって、トラブルがゼロになるわけではないだろう?」

「その辺りは仕方がないと割りきってもらうしかない。そもそも、人間の世界だって、人間同士でいがみ合ったり、トラブルを起こしたりしているのだろう? それだというのに、魔族と人間が共存する空間では『争いをゼロにしろ』というのは、どだい無理な話だと思うがどうかね?」


 確かにキルメヒアの言うことは最もである。


 その部分には、聖也も思う所があるのか、苦々しげに頷くしかない。


「確かにそれはそうだが……。――では、トラブルの件は、温厚な魔族を集めるということで、何とかクリアできたとしよう。だが、私達がその新たな拠点を手にして何の得がある? 現状、この校舎だけでもそれなりにやれているはずだ。急な規模の増大は手が回らなくなってしまう可能性があるのだが?」


 折角、上手く回り始めている仕組みを、わざわざ滞らせてまで拠点を増やす価値とは何か?


 それにも、明確な答えを用意していたのか、キルメヒアはやんわりとした笑みを浮かべて答える。


「利点は幾つかある。まず、一つ目はリスクの分散だな。一つの拠点で疫病などが流行った場合、全滅する恐れがあるが、拠点が二つならば、どちらかひとつは生き残れるし、弱ったもう一つの拠点を救うこともできる。そういった意味で、拠点を分けるのは有りだと認識している」

「……確かに、現状、抗生剤などの薬品類は不足していますし、疫病などは一番気を付けなければいけない点だと思います」


 キルメヒアの言葉に、忍も頷く。


 我が意を得たりと満足そうに微笑むキルメヒアは言葉を続ける。


「二点目は、我々魔族と拠点を共同で持つことによって、横の繋がりを強化することができる点だ。機甲種と事を構えている現状では、戦力となるであろう種族間の繋がりは強固にしておいた方が良い。そうは思わないかね?」

「それは確かにそうだが……。先程のリスクも考えると、なかなか難しいと思うのだが……」

「そこまで、問題視するというのであれば、自分が見極めた魔族だけを住まわせるというのならばどうだ? その代わり、町の管理は自分に任せてもらいたいのだが?」

「キルメヒアさんの息の掛かった者、ですか……」


 ちらりと、聖也が琴美に視線を向けると、彼女は実に言い辛そうに進言する。


「キルメヒアさんのお友達って、大体、本人に似て一癖も二癖もある人ばかりッス……。少し紹介されたこともあるッスけど、大体人畜無害の変態でしたッス……」


 それを聞いて、聖也は「うん」と頷く。


「よし、有馬君、君がその町の人間側の代表についてくれたまえ」

「変態って聞いて、即座に俺を指名すんのはヤメロ!?」


 抗議の意を示すが、聖也は聞いていないのか、はたまた聞き流したのか、深く溜息を吐き出していた。


「しかし、確かにこのまま学校内の設備を充実させていっても、行き詰まるであろうことは目に見えているのだよ。残念ながら……」

「え、そうなの?」

「テメェら、華麗にスルーするのかよ!?」


 沙也加が驚いたように声を上げ、聖也はその言葉に静かに頷いていた。


 そして、浩助はひっそりと凹んでいた。


「元々、此処はそこまで広い土地でないのにも関わらず、六百人以上の人数を収容しているんだ。最初は生き抜くのに必死で、皆の意志がひとつの方向にまとまっているから良いが、一ヶ月もして生活環境に慣れてくると、不平や不満、またはいざこざが起こるようになってくる。その辺は、上手く活用できる土地を広げていくことで対応しようと思っていたのだが、結構トラブルが頻発していてね。現状だと、思ったよりも進んでいないんだ」

「だから、いっそのこと、別の場所に拠点を作って、土地や資源を手に入れようってのか?」


 何とか立ち直り、浩助が尋ねると聖也は頷く。


 今度は無視されずにほっこりとする浩助がいた。


「その通りだ、有馬君。ただ、先にも懸念したように、その拠点に住むには危険が伴う。そんな状況を監視、管理できるのは、我々の中では、有馬君――キミぐらいなものなのだよ」

「体よく変態を押し付けられた気がするんだが……?」


 浩助が半眼で睨むと、聖也は誤魔化すようにパンっと手を打ち鳴らす。


「君がやっても良いというのなら、今回の件、私たちは乗ろう!」

 

 それは誤魔化しというには、あまりに重大過ぎる発言であった。


「!? おい、それって俺が責任重大じゃねぇか!?」


 当然のように、浩助は慌てるが、聖也はゆっくりと頭を振る。


「君が纏め役となってくれなければ回らないと私は思うからね。君が嫌ならば、この話はなかったことにしたい。……それで良いかな、キルメヒアさん?」

「勿論だ。元々、アリーマには絶対に来てもらいたいと思っていたからな。むしろ、アリーマが来ないのでは、自分のやる気が出ないのだよ!」

「完全にテメェの都合じゃねぇか!」

「良かったわねー、有馬モテモテでー」


 棒読み状態な沙也加の声に腹が立ったので、浩助は沙也加の頭をポカリと殴る。


 まぁ、次の瞬間には、沙也加に右腕を極められて、ギブギブ言う羽目になるのだが、それはそれで置いておこう。


「それで、有馬君はどう考える?」


 腕を極められた痛みに、涙目になりつつ、浩助は聖也の視線を真っ向から受け止める。


 折角、ウンディーネとの友好を深めて水を潤沢に使えるようになったのだし、学園側の生活としてはまだまだ発展の目があるように思える。


 とはいえ、このまま六百人の大所帯が学校という狭い敷地内で暮らすというのも、精神的に厳しいのではないかという聖也の意見も分からないわけでもない。


 そして、機甲種と敵対関係になってしまった今、魔族との協力関係というのは非常に魅力的に聞こえる単語であった。


 無い知恵を絞り、うんうん唸って考えた末に、浩助はハッと思い付いたように視線をキルメヒアに向ける。


「一緒に拠点を作ってやってもいい。だが、ひとつ条件がある」

「何だい? アリーマ?」

 

 それは条件の提示であった。


 浩助には、どうしてもキルメヒアに問い質さなければならない話があったのである。


「条件は簡単だ。俺が今から言う質問に、嘘偽りなく答えてくれれば良い」

「それは、質問による――と言いたいところだが、アリーマの願いだ。無条件でその条件を飲もう。それで、その質問というのは何かな?」


 キルメヒアがそう宣言するのを聞いて、浩助はゆっくりとその言葉を叩き付けていた。


「今回の八世界融合を行った犯人が、魔族の中に居るのなら教えてくれ」


 それは、浩助がずっと疑問に思っていた事であった。

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