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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第二章、変態吸血鬼の奇行に気を取られ過ぎて、謎の誘拐事件に巻き込まれた結果がコレだよ!
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39、人間は恐ろしい速さで成長するもんだからよ

 元々、浩助が描いていたイウダ・ジ・オール攻略法は全くの別物であった――。


(バリアって、全身に張り巡らせるんだろ? 燃費悪そうだよなー。粘ってれば、エネルギー切れとか起こすんじゃね?)

《まぁ、私達の役目も元々陽動だし、それも有りなんじゃないのかしら? 一応、エネルギー切れを起こさない可能性も考えて、次の手も考えておく必要はあると思うけど》

(いきなり、本気で迫ってこられても面倒だから、少し弱ったフリでも混ぜておくかなー。時間稼ぎのためには、相手がナメてくれっとありがてーんだけど)

《有馬って、そういう所、狡っ辛いわよね……》


 そんな念話が、戦闘の開始直後にあったわけで……。


 浩助は戦闘時間の延長を視野に入れて、なるべく事故の起こらない闇魔法による遠距離攻撃を選択し、銃弾をばら撒いていく。


 当然、速度に劣るイウダ・ジ・オールも、魔法ではなく実弾による応戦となるわけだが……。


 激しい戦闘の中で、実弾を数度切り捨てた後で、浩助は自分の体に起きている異変に気が付いていた。


(何か、俺、スゲー早くなってね?)

《そうかしら? というか、そもそも早すぎて尺度が見えてこないっていうか……》

(いやいや、さっきより相手の銃弾が遅く見えるんだって! ……見てろよ?)


 浩助はそう言って、飛んでくる銃弾を足を止めて迎え撃つ。


 目の前には、六十発前後の銃弾が帯を成して迫っていたが、浩助は自分の体に食らいつきそうな銃弾、二十一発を選択して、その全てを斬り落としていた。


 浩助の目には、その銃弾の動きが全てスローモーションに見えており、その中を普通の動きで銃弾を斬って捨てるなど、できて当然の動きであるのだが、沙也加の反応は違う。


《え? 何か、頭オカシイことやってない?》

(いや、だから、変に動きが早くなってるんだって! 捷疾鬼のレベルが上がったからか?)

《それは、多分、違うと思いますニャー》


 ねこしぇの言葉に、浩助は思わず、どういうことだ、と疑問を返す。


水原様(ささめゆき)の効果に、相手の速度の一割を奪い取る特殊効果がありますニャ》

(数割だと思ってたけど、一割だけなのかよ……)

《湖の畔で、蜘蛛型の機甲種と対峙しニャしたが、彼らの速度は5000ほど有りましたですニャ。ご主人様はそれを七体斬ったので、350の速度上昇をしましたニャ。その他にも、この施設内で迫り来る機械人形を沢山斬ったことで、この施設に入る前よりも、速度のステータスが4200ほど上昇していますニャ》

(よ……、四千二百もかよっ!?)

《それって凄いの?》


 沙也加が呑気に聞いてくるが、浩助はどう言ったら伝わるものか、と思案してから口を開く。


(この異世界じゃあ、スキルを取る度にステータスボーナスが入るのは知ってるな?)

《えっと、確か、闇魔法取った時に、百六十ぐらい魔法攻撃力が……》


 言って、沙也加も気付いたようだ。


 蜘蛛七体を斬った時の方が、二倍以上のステータスボーナスを得ている。


《馬ッ鹿じゃないの!? 何それ!? チートも良いところじゃない!?》

《天剣六撰は、この世界の頂点に位置する武器で、全部で六本ありますニャ。全てが吸収するステータスに違いはありニャすが、いずれも成長する武器であり、また使用者を天剣六撰に相応しい者に変えるため、強制的に強くさせていきますニャ》

(どうやら、チートはお前みたいだぞ、水原?)

《嫌ぁぁぁぁ! もっと、努力、友情、勝利したかった~っ!》


 飛んでくる銃弾を細雪で捌きながら、浩助はイウダ・ジ・オールの追撃をギリギリの位置で躱し続ける。


 勿論、その際に、今のは焦った的な表情を付けるのは忘れない。


《そして、ご主人様が斬った銃弾の速度は一万前後ありますニャ。ひとつに付き、速度が百上がりますニャ》

(へー、そーなのか。……って、俺、銃弾よりも早く動けるってことか?)

《そうなりますニャ》

(ほー、ふーん。……これ、時間稼ぎ兼任で速度吸収し続けるのも有りじゃね?)

《有馬がチートに目覚めた!》


 沙也加が喚くが、浩助としてはチートに忌避感がない。


 というか、死んだら終わりの世界なのだ。


 ゲーム感覚で、異世界生活を楽しもうなどという気はさらさらない。


 美味しく稼げる場所と敵がいるというのなら、そこで骨までしゃぶり尽くす。


 その上で生き残る――。


 いや、これからも生き残るために、稼ぐというのが正しいのか。


(生き残るために、俺は何でもやる気だ。妹とお袋の顔はもう一度見てーしよ。チートがどーのこーのとかいう甘いことは言ってらんねー。強くなきゃ生き残れねぇ世界なら、俺は強くなんなくちゃいけねぇんだ。……俺の言ってること間違ってるか?)

《別に間違っちゃいないと思うわよ。……でもね、努力も苦労もなく得た力っていうのは、総じて扱う人間に慢心や、奢る心を(もたら)すってお爺ちゃんが言ってたわ。私は、浩助もそうなっちゃうんじゃないかって、そういう心配をしているのよ》

(奢る心ねぇ……。そういうのは、特別な扱いが好きな奴が持つもんだろ?)


 一瞬で踏み込んで、浩助はイウダ・ジ・オールに斬りかかる。


 だが、紫色の光が瞬くだけで、その凶刃はイウダ・ジ・オールの身には届かない。


 それだけを確かめて、浩助は即座にイウダ・ジ・オールの間合いから脱出。


 その直後に、イウダ・ジ・オールの鋼鉄の拳が轟音と共に振るわれるが、当然のように浩助を捉えることはできない。


(俺は、どっちかってぇと普通が好きなんだ。――っていうか、死にたくないから強くなるだけで、自分から宣伝して回る気はねーよ。ギルマスにも面倒事押し付けられるだけだしな)

《まぁ、有馬は外道な上に、ひねくれ者で、容赦もないけど、奇跡的に自己顕示欲みたいなものはないのよね。……それだけは変わらないことを祈るわ》

(祈るだけじゃなくて、そういう時は水原が引っ叩いて目を覚まさせてくれよ?)

《…………。まぁ、善処するわよ》


 (うそぶ)く沙也加の言葉を皮切りとして、浩助は加速していく。


 銃弾を斬って、斬って、斬りまくり――、やがて、速度が五万を超えたところで、テュールシステムと呼ばれるバリア装置が、赤と青に交互に点滅していることに、浩助は気が付く。


(何だ、こりゃ。赤と青にバリアが点滅してるぞ?)

《私には紫色の光にしか見えないけど?》

(色に何か意味があるかもしれねーな。ちょっと試してみるか)


 その性能を探るために、色々と実験していたところ、浩助の速度は七万に達する。


「――マザーよ、基地内に有馬浩助以外の侵入者がいないか調査してくれ給え。そして、その報告を私に寄越すのだ」


 そして、イウダ・ジ・オールは、浩助たちの陽動作戦に気付いてしまった。


 本当なら、もう少し速度を上げてから倒すつもりだったのだが、時間稼ぎが時間稼ぎの意味をなさなくなった時点で、これ以上粘る意味もない。


「――あぁ、もういーや。まぁ、こんなもんだろーよ」


 浩助は速度上げ作業をやめて、反撃をすることにしたのである。


     ●


「このテュールシステムを突破できるモノがいるわけがないだろうがぁぁぁぁぁッ! 何をしたと言っているんだぁぁぁぁぁッ! 有馬浩助ェェェェェッ!」

「いや、だから、青いバリアの時は魔法しか防がないから、その時に通り抜け様に左手を斬っただけだって。別に特殊なことはしてねーよ」


 その青色のバリアが展開されている時間というものが、それこそコンマゼロゼロゼロ……何秒という刹那の時間であることさえ考慮しなければ、極普通のことだろう。


 だが、そんな刹那の時間を動けるような人間は居ない。


 だからこそ、イウダ・ジ・オールは浩助の意見を頭ごなしに否定するのだろう。


「そうか、あくまで惚けるつもりか! だが、このテュールシステムを破ったとしても、貴様に勝ちの目は残されてはいないのだ! 有馬浩助!」

「フルネームで呼ぶなよ。鬱陶しい。だからといって、下の名前でも呼ぶなよ? 馴れ馴れしい」

「く、ククク、もう勝った気でいるのか……! だが、お前は知らぬ! この空間の中にいる、目に見えない恐怖を――ッ! ナノマシンよ! 有馬浩助の内側から入り、その内部をズタズタにせよッ!」


 イウダ・ジ・オールの叫びが室内へと木霊し――。


 ――虚しく、その声が反響するだけであった。


 その様子に、イウダ・ジ・オールはわなわなと体を震わせ、状況も判らぬままに浩助に紫光剣の切っ先を向ける。


「何故、動かん! ナノマシン! 何かしたのか!? 有馬浩助ッ!?」

「…………。ナノマシンってのが、何かは知らねーが。空中を飛んでたキラキラ光る物体ならまとめて斬り飛ばしたぞ。目の前でやってたし、見てたんじゃねーのか?」


 それは、浩助が刀を振ると見せかけて、振らなかったように見えた、あの時のことである。


 あの時に、大気ごと斬り裂き、出来た真空波によってナノマシンは全滅していた。


 それは、ナノマシンを知覚できないイウダ・ジ・オールでは預かり知らぬことであった。


「ふ……、ふざけるな!? 人間風情の肉眼でナノマシンが捉えられるわけがあるまい!? それを、あまつさえ斬っただと……!? ふざけるのもいい加減にしろ!」


 イウダ・ジ・オールの反応は、生物として実に正しい。


 機甲種の彼が生物であるかどうかは別にして……、ナノマシンの姿を捉えるということはバクテリアを肉眼で捉えるのと同義である。


 そんなことができたのならば、『凄い』云々以前に、浩助の脳味噌は塵芥(ちりあくた)の動きを処理するだけで焼き切れてしまいかねない。


 だが、その辺はどうも異世界の理論らしい。


 光の速さよりも早く動いてみせるのに、周囲の様子が『見えて』いる時点で物理法則を無視している。


 ナノマシンを知覚したのも、恐らくはこの異世界におけるステータスに因る補正というものなのだろう。


 浩助は、やれやれとばかりに肩を竦める。


「速度が増えたことは言ったよな? 速度のステータスが増えるとよー、自分が動くスピードだけじゃなくて、自分の目も良くなるらしーぜ。まぁ、超スピードを身に着けても、目が追いつかなくて、壁にぶつかって死にましたじゃ意味ねーしな。だから、なんつーの? スッゲー目が良くなったから、普通は見えないものでも見えるよーになったんじゃねーの? 眼鏡掛けたみてーによ」

「そんな無茶苦茶な理屈が認められるか!?」

「認められなくても、認められてもどっちもいーだろ……。お前は、もう終わりなんだからよ」


 浩助の姿が掻き消えて、イウダ・ジ・オールの右腕と両足が斬り飛ばされる。


 がんっと硬い音がして、イウダ・ジ・オールの胴体部分は床に打ち付けられていた。


 どうしてこうなったのかと、イウダ・ジ・オールは思わず自問するが、答えは出そうにない。


 あえて、答えを用意するのであれば、有馬浩助の実力を見誤ったとしか言いようがないだろう。


 部屋中のテュールシステムを解除し、彼は低く笑う。


「…………。ククク……、終わり、なのか……。私の研究も……、私の命も……」

「別に、そこまでは言わねーよ。ただ、テメェが俺達の仲間を殺していた場合はその限りじゃないがな」

「ふふふ、なら私は終わりだ」

「テメェ……! ……いや、最後のチャンスだ。もう一つ聞いておこう」

「ほう、何かな?」

「ウンディーネの姫を攫ったろう。そいつは何処に居る?」

「フフ、目の前に居るではないか」

「あ?」


 イウダ・ジ・オールの鏡面のような顔の部分が、金属でできたクラゲのような装置に向く。


「あの炉の中に閉じ込めて、エネルギーを絞り取っているのに気が付かなかったのか? まぁ、今頃は干からびて死んでいるかもしれんがなァ……?」

「……チッ、何処までも嫌な野郎だ!」


 浩助は一瞬で移動し、金属のクラゲにしか見えない装置のパイプやらケーブルを引き裂いていく。


 そして、扉のようなものを見つけるなり、その取っ手に手を掛けていた。


 軽く握った感じでは、鍵が掛かっているようだが――。


「えぇい、面倒くせぇ!」


 ――その鍵を斬り飛ばす。


 そして、その次の瞬間には室内にけたたましい警報音が流れていた。


「――何だ!? 鍵ぶっ壊したせいか!?」

「ククク、油断したな、有馬浩助! 貴様の意識がそちらに向いた瞬間を狙って、自爆装置のスイッチをオンにした! この基地は後三十秒もしない内に吹き飛ぶ……!」

「浪漫が満載すぎる仕掛け作ってんじゃねーよ!?」

「弱ったウンディーネを救出して、その足で脱出することができるかな? ハハハハハッ!」


 狂ったような笑い声が警報音に混じり、浩助が焦りを覚える中で――。


 ――警報音は突如として止む。


「な、何だ!? 何故、自爆装置が突然止まった!?」


 一転して焦った声を出すイウダ・ジ・オールに対し、やけに陽気な声が室内アナウンスとして流れてきていた。


《えー、マイクテス、マイクテス。愛しのアリーマよ、聞いているかね? キミの夜の恋人、キルメヒアだ》

「殺すぞ、マジで?」


 殺意が思い切り増大して、思わず口走ってしまうが、浩助は反省しない。


 キルメヒアとの関係は、まぁ、そんなもので良いだろう。


 何にせよ、彼女たちの無事が確認できたのは喜ばしいことだ。


 聞こえているかどうかは分からないが、浩助も声を張り上げて答える。


「そっちも無事か!? それと、自爆装置とかいう物騒なモンを処理してくれたのも、そっちなのか!?」

《モチのロン! トウのゼンだ! ……と言いたいところだけど、コントロールルームらしきところにある装置を適当に叩いていたら勝手に止まっただけだな。いやぁ、偶然って凄いな》

「そうか。それは良かった」


 思わず浩助の本音が漏れる。


 それを耳聡くキルメヒアが咎める。


《良くはないと思うぞ、アリーマ? これは一時的なもので、またぞろ動き出すかもしれない。状況は予断を許さないと思うが――》

「ん? いや、違う。お前に借りを作らないで良かったという意味だ。後が怖いからな」

《偶然じゃなく、自分が知恵を絞ってコントロール装置を止めた結果だぞ、アリーマ!》

「今更言っても遅いわ!」


 怒鳴り返しながらも、作業をする手を休めなかった浩助は、ようやく『炉』と呼ばれていた装置の蓋を引っぺがすことに成功していた。


 そこには、何やら虹色の溶液が満たされており、手を突っ込むのも躊躇われる程だ。


「何か水銀を凶悪にした色してんな……。手ぇ、突っ込んだ瞬間に、溶けやしねぇだろーな……?」


 視線をイウダ・ジ・オールに向けるが、彼は特に答えることはしない。


 浩助が躊躇していると、沙也加から《私がやろっか?》という念話が届いたので、お願いすることにする。


 鞘に入れて、装置の前に置くと光が収束し、やがて人の形をとる。


 人間の姿になった沙也加は、躊躇することなく虹色の液体の中に腕を突っ込むと、中を確認するようにぐるぐると腕で液体を掻き回す。


 完全属性耐性という、チートスキルがあるとはいえ、よくやるものだと、浩助は渋い表情でその光景を見守る。


 やがて、沙也加は何かに触れたのか、形を確かめるようにして触ると、その物体を一気に虹色の液体の中から引っこ抜く。


 それは、下半身が魚で出来た全身が淡い水色に光る、一人の少女であった。


 ひと目見て分かる。――ウンディーネ種だ。


「大変! 大分弱ってるみたい! どうしよう、有馬!?」

「とりあえず、起こしてやればいいんじゃね? 本人が回復魔法とか使えたらそれで回復できんだろ」


 言って、風を斬り裂くような豪快なスイングのビンタを素振りし始める浩助。


 それを半眼で、沙也加は見つめる。


「頬とか叩かないでよ? 有馬の攻撃力じゃ、一発で死んじゃう可能性だってあるんだから」

「んじゃ、沙也加が介抱してやってくれよ。俺はアレとの決着を付けるからさ」


 浩助はゆっくりとイウダ・ジ・オールに足を向ける。


 彼は静かに、浩助を睨みつけていた。


「――我が世界とは別の世界に、これ程の強さの者がいたとはな」

「そりゃ違う。俺が此処まで強くなったのは、テメェのせいだ。俺はもうちょっと普通な感じで、目立たないように生きていきたかったってのによぉ……。テメェが強すぎんのがいけねーんだぞ? 御蔭で強くなっちまったじゃねーか!」

「酷い言い掛かりだ。だが、これで貴様は我々機甲種から狙われる立場となった……」

「あぁ?」

「私が通信していたマザーは、この異世界に点在する我ら機甲種の施設同士を結ぶ超高度情報通信システムだ――。有馬浩助、お前が私を倒したことは、他の施設に居る仲間たちにも伝わったはずだ。そして、それを起因として、いずれ、お前たちを殺すための装備と軍備を整えて殺しにくるはずだ」

「メンドクセーな……。っていうか、俺だけじゃねーのかよ、狙いは……」

「人間種自体に脅威を感じ取ったからな。お前以外も全員駆逐する」


 とんだとばっちりである。


 浩助は、とりあえず後頭部を掻くしかない。


 まじーな、とか、やっべーとは思うが、言うほど悲観してはいないようだ。


 その証拠に、彼の態度には何処か余裕があった。


「ククク、その時が来るまで、貴様らは恐怖に怯えて過ごすがいい……!」

「来るなら、来いってんだ。鉄屑に変えて、全部資源にしてやんよ。……じゃあなッ!」


 村正で、イウダ・ジ・オールの首を跳ねる。


 鋼鉄でできたフルフェイスのような頭は床をてんてんと転がった後、その機能を停止したように言葉を吐き出すことはなかった。


「ま、俺が気を揉むまでもなく、人間が勝つけどな。テメェら機械と違って、人間は恐ろしい速さで成長するもんだからよ!」


 浩助の言葉に応える者はない。


 ただ、直後に、沙也加が「気がついたみたい!」と大騒ぎする声だけは室内に良く響いたのであった。

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