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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第一章、調子に乗って闇魔法使っていたら、知らない所で恨みを買っちゃった結果がコレだよ!
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20、大トロ海鮮丼

前話、割と致命的に名前間違えしましたので修正しました。

書いてる途中で人物名変更なんて、割としょっちゅうです。

「ただいま、戻りました~」


 何処か間延びしたような声で、美優が体育館にある自身の居住スペースへと足を踏み入れる。


 体育館の床には均等な間隔でビニールテープによる目張りがなされており、そこが各個人に割り当てられた領域となっていた。


 美優に割り当てられたのは、体育館の隅っこ。


 ステージの丁度手前の位置であった。


 正直、彼女の位置は同級生たちと少し離れている。


 彼女自身は、もっと同級生と近い位置に場所を取りたかったのだが、元来の臆病な性格と要領の悪さに加え、同級生の女子たちに嫌われていることも手伝って、こんな島流しのような状態になってしまったのである。


 ……そう、美優は同級生の女子に嫌われていたのであった。


 理由は簡単。


 胸が驚異的にデカイから。


 歩けばたゆんたゆんと揺れる胸は、道行く男子生徒の視線を釘付けにし、授業を教える教師ですら目のやり場に困る程だ。


 特に、何かをやる度に形を変える柔らかそうな胸は、歩く生物兵器と揶揄される程だ。


 当然、そんなわけだから、彼女に気のある男子も多い。


 顔の方も一応可愛らしい部類に入るし、性格も温厚、そして凶悪な体つき――。


 狙われない理由がないのである。


 だが、本人に恋愛感情というものがほとんどない。


 むしろ、変な視線を浴びすぎて、軽く男性恐怖症の()さえある程だ。


 それが、同級生の女子たちとしては気に食わないらしい。


 意中の相手が、胸のデカイ女に掻っ攫われて、尚且つ、その胸のデカイ女は『恋愛に興味ありません』とくるのだから、じゃあ、どっか行ってろよ、というやっかみを受けることになる。


 ――とはいえ、本来ならば、美優に対してのやっかみがここまで表立って現れることはなかったであろう。


 だが、この異常な状況下だ。


 女子たちの不満が集い、更に美優自身の鈍臭さも相まって、彼女に対する風当たりが強くなり、かくして彼女は島流しされてしまった――、ということなのであろう。


 この場に、沙也加が居たのであれば、「何、そんなみみっちいことやってんのよ!」と一喝して、彼女の境遇を救い出してくれたかもしれないが、沙也加はスキルの関係上、浩助の傍を離れることができない。


 仕方なしに、美優は一人でもできることを一生懸命模索している最中であった。


 少しはできるところを見せれば、同級生にも認めて貰えるかもしれない。


 そんな淡い期待を抱きながら、彼女は自分のスペースに引っ込んで制服を取り出し始める。


 野外での活動中は運動着でも良いが、やはり学内では綺麗な制服を着たいというのは女心というものだろう。


 そう思って、意気揚々と更衣室へと向かおうとするところで、彼女は少しだけ足を止めていた。


「あの……」


 体育館の端のスペース――通称、隔離スペース――に半ば強制的に移住させられた人間は、彼女以外にもいる。


 膝を抱え、昨日からほとんど体勢を変えることもなく、ぼーっと虚空を見ているその男子は、今も美優の話を聞いているのか、聞いていないのか、良く分からない。


 ちょっとだけ、美優は怖くはあったものの、勇気を振り絞って彼に声を掛ける。


「あのね、田中君? その……、外で何があったのかは良く分からないけど……、御飯は食べないと死んじゃうよ……?」


 だが、オタナカこと、田中則夫から返事が返ってくることはない。


 もしかしたら、彼はゆったりとした死を待ち望んでいるのかもしれない、とそんなことを考えて、美優は慌てて首を振る。


(そんな怖いのは駄目だよ! もっと、私がしっかり励ましてあげないと!)


 則夫がどうして、こんな状態になっているのかは、美優は詳しくは知らない。


 ただ、クラスメートが話しているのを聞いた限りだと、急に『魔物』に襲われた際に、仲間を見捨てて一番先に逃げ出したという話だ。


 それを、実際に見捨てられたと言っている、小日向龍一や橘いずみが吹聴して回って、則夫も島流しの状態になってしまったというわけである。


 最初は、則夫も何か言い訳のようなものを言っていたようなのだが、元々ただのオタクである則夫と、クラスで人気者な龍一、学園のアイドルとさえ言われるいずみの前では、その言い訳も聞き入れて貰えず、彼は引き篭もるようにしてこの居住スペースにずっとこうして居るのである。


 そう、彼はずっとこうして居る。


 夜もずっとこうして黙ったまま、膝を抱えている。


 それを不憫に思った美優が毛布を掛けてあげたが、朝見た時にも毛布を被ったまま、ずっとこうして膝を抱えていた。


 このままでは、晩御飯を抜かしただけでなく、昼御飯まで抜かしかねない。


 それでは、いずれ弱って体調を崩してしまうだろう。


 美優が、どうにかして何とかできないものかと考えていると、彼女の後ろに何者かが立つ。


 びくり、と震えるようにして後ろを振り向くと、見知った顔がいた。


「わ――、と国崎君かぁ。いきなり、後ろに立たれるとびっくりするよ~」

「田中の様子は変わらねぇのか」

「うん。昨日からずっと……」


 何だか自分が責められている気がして、美優は肩を落とす。


 背後に立っていたのは、国崎慶次だ。


 彼は不良だ。


 誰がどう見ても不良だ。


 どんなに暑くてもライダースジャケットを羽織り、『これが俺の魂だ。魂を失くしたら人は死ぬ』と教師に臆面もなく言ってしまうような不良だ。


 彼はサングラス越しに、陰鬱な雰囲気を作り出す則夫を見つめ、小さく舌打ちをする。


 皆から恐れられる彼もまた、この隔離スペースの住人だ。


 一応、彼はこの隔離スペースの代表者のようなものを任せられていた。


 というか、誰もやりたがらないので、なし崩し的に彼が代表者になったというのが正しいのだろう。


 彼自身は喧嘩っぱやい上に口も悪いのだが、その発言や考え方には一本の芯が通っており、リーダーシップはある方だ。


 だから、軽い男性恐怖症の美優でさえも、慶次には若干の信頼を寄せている。


 男としてではなく、リーダーとしてだが。


「柳田は行けよ。飯の用意があるんだろ。コイツに構っている時間はねぇはずだ」

「でも……」

「立ち上がる気力のねぇ男に、何を言っても無駄だ。そもそも、コイツには最初から魂がねぇ」


 ピクリ、と則夫の肩が少しだけ震えた気がした。


 それでも、それは一瞬のことで、見逃さなかったのは慶次だけであったようだが……。


「あったとしても、薄っぺらいもんだ。覚悟が足りてねぇのさ」


 慶次はふいに座り込む。


 それは、則夫のすぐ隣の場所だ。


 則夫は震えないし、反応も見せない。


 本当に、呆けているのか、それとも――。


「……テメェが覚悟を決めるのは、いつだ?」


 小さく、囁くようにして呟かれた言葉が則夫の耳に入る。


 だが、則夫がそれに答えることはない。


 その様子をハラハラと見守っていた美優に気付き、慶次はゆっくりと腰を上げる。


「……あんまり時間は残っちゃいねぇぞ」


 体調も、体力も、精神力も、時間が経てば経つほど磨り減っていく。


 結論を出した頃には、動けないなんてことになっていたら、笑い話にもならない。


「…………」


 則夫は答えない。


 いや、答えが出せないのか。


 そんな則夫の様子をしばらく見守っていた慶次だが、特に何を言うこともなく、自分の居住スペースへと舞い戻る。


 男二人が別れたことで、美優もようやくこの場が収まったのだと気付き、ホッとした表情を浮かべるが、次の瞬間にはその表情が固まる。


「あ、着替え――、早くしないと……」


 昼御飯の作成まで、割と時間は残されていなかった。



「ふぅ、伐採は何とか終わったが、午後からは柵作りだな~っていうか、外縁部で働いてるの、俺だけじゃねーか! もっと職人ギルドからも人員回せよ!」


 旧校舎の一階。


 古ぼけた被服室が職人ギルドの工房となったのは、朝の集会の時に決まったことらしい。


 そんな被服室の机の上に突っ伏しながら、浩助は一生懸命に鍛冶鋳造スキルで武器防具を作成している拓斗と洛を見守っていた。


 なかなかこう、自分でスキル取得の訓練をするのは面倒だが、他人がスキルを使うのを見るのは、それなりにわくわくするものがある。


「無茶言うなよ、浩助。……うん、それじゃあ、俺は今度はこの素材を打ってみるかな。洛ちゃんはどうする?」

「洛、この変なの、打つ!」


 彼らは真剣な表情で素材と向き合って選択すると、視界の片隅から鍛冶鋳造スキルの使用を選択。


 次の瞬間には、金床と鎚がその場に現れ、彼らはそれを手に取り、一生懸命に素材を叩き始めていた。


「ふーん、スキル使用すると工作セットが出んのか。便利だなー」


 呑気な浩助の言葉を聞き流しながら、拓斗と洛は懸命になって素材を叩く。


 叩かれた素材は、徐々に白い光に包まれていき、その形を素材の形状から武器の形状へと変化させていった。


 その過程で、拓斗や洛は魔物から取れた魔石を練り込み、更にその武器の形状が安定するようにと、必死で鎚を叩きつける。


 拓斗の方は丁寧に、加わる力が均等になるように優しく――。


 洛の方は、素材の力を小さく圧縮するかのように、ひたすら激しく――。


 やがて、白い光が晴れた時、そこにはそれぞれの素材と、作り手の特徴を写し取ったかのような、見事な武器が出来上がっていた。


「ふーっ、完成っと」

「んで、人員は貸してくれんのか、くれねーのか?」

「あのなぁ……。正直、今は全員分の食事とか食材を作る方に人員が取られていて、外縁部にまで手が回せないんだよ。というか、どちらかといえば、これは職人ギルドよりも冒険者ギルドに頼む事柄だろ?」

「冒険者ギルドにも言ったっつーの。でも、アイツらはアイツらで忙しいんだと。水の魔法を使える奴らは飲料水の作成や、貯水タンクへの水の供給をやらされて、土の魔法が使える奴らは汚水を学外へと流すための下水設備の工事が待ってるんだそーだ。んで、火の魔法が使える奴らは調理班と合同で食料作成作業だとかで、冒険者の連中は昨日、一応水脈が発見されたらしーんで、午後はそっちの調査に赴くみてーだ。後は、昨日の内に見つかった食料の確保にも動くとか何とか……。こっちに回せる人員は少ねーんだとよ~。つーわけで、俺、孤軍奮闘中~。助けちくり~」

「それだけ、浩助のことをギルドマスターも信頼してるってことだろ。出来る男に仕事は集まるもんだ。……って俺の親父も言ってたぜ?」

「お前ん家の親父さんって、冴えないバイク屋の親父だろ……。何で、そんな出来る男発言してんだよ……」

「だから、あんまりウチは客が来ないって言いたかったんじゃないか?」

「あぁ、納得」

「それよりも、コイツを鑑定してもらっていいか?」

「洛もー! ですニャー、鑑定して!」

「へいへい。ねこしぇ、頼めるか?」

《お任せですニャー!》


 拓斗が作成した武器は、装飾も少ないシンプルな銀色の長剣で、洛が作成したのは鎌のような形をした紫色の短刀だ。


 拓斗の武器は、どう使うのか一見して分かろうものだが、洛の方の武器は正直どうやって使うのか見当もつかないような形状をしている。


 なんというか、草刈り鎌の柄の部分も刃にしましたよーという奇妙なデザインである。


 早速、浩助はねこしぇに頼んで、二人の武器を鑑定して貰う。


 鑑定の結果は、以下だ。


==============================================

 【武器】カスタム・トロールブレード【中級剣】

 攻撃力:523 耐久:957 品質:高品質

 説明:岩よりも硬いグレイト・トロールの骨を使って作られた剣。切れ味の鋭さよりも、頑丈さに特徴があり、素材となったトロール同様に自動で耐久値を回復してくれる。ただし、切れ味が元に戻るわけではないので、定期的なメンテナンスを必要とする。

==============================================


==============================================

 【武器】アサシン・ダガー【上級飛剣】

 攻撃力:1140 耐久:472 状態異常付与:猛毒、麻痺 品質:中品質

 説明:森の殺し屋、フスレ・スパイダーの毒針より打ち出された飛剣。鉤型の形状をしている事で、熟練者が使うと持ち主の元に舞い戻ってくる特徴がある。ただし、失敗すると自傷して毒や麻痺を負う、とても危険な武器。

==============================================


「えーっと、どう判断したらいいんだ、コレ?」


 答えに詰まってねこしぇに視線を投げかけると、ねこしぇは優しく鳴く。


《まずは、レアリティで判断しますニャ。レアリティは上から、神級、伝説級、特上級、上級、中級、低級の六段階ありますニャ。これらは、使用した素材のレアリティを基本にして、鍛冶師の力によって、プラマイ1程度上下しますニャ》

「てぇことは、洛が打った武器の方がレアリティが高いと……」

「む……」

「にしし♪」


 拓斗が思わず顔を顰め、洛はしてやったりとばかりに満面の笑顔を見せる。


 だが、ねこしぇはそれを否定するようにニャーと鳴く。


《この場合、素材であるフスレ・スパイダーの毒針とグレイト・トロールの骨にレアリティひとつ分の差がありますニャ。ですので、腕の差とは言い難いですニャー》

「なるほど、素材のレアリティの差が出てんのか。……とはいえ高いレアリティの素材程、鍛冶鋳造レベルが高くないと扱えないんだろ?」

《扱えなくはないですニャが、高確率で失敗しますニャー》

「素材は無駄にはできないからね。安定志向でいったのは事実だよ」

「面白そう、素材、打った!」

「あぁ、なるほど、洛は興味があったから打ってみたと……。で、成功したと……」


 さすがの鍛冶鋳造スキル、レベル8といったところか。


 興味本位で適当に打っても成功する辺り、スキルレベルが高いことを窺わせる。


《後は、攻撃力と耐久値に関しては、武器個別なのでなかなか比較できませんニャー。比較できるとしたら、品質ですニャー》

「品質……」


 見てみると、拓斗が打った武器の方が品質が高い。


《その辺は、スキルレベルではなくて、鍛冶師の鍛え方によって差が出てきますニャ》

「ふむ、ということは……」


 浩助は一瞬考えこみ、そして、拓斗に向けて指を差す。


「勝者、拓斗!」

「よっしゃ!」

「むー、洛、負けない!」

「何、遊んでるのよ。どっちも良い剣なんだから、優劣付けても仕方ないじゃない」


 沙也加が早速拓斗の剣を握って、ひゅんひゅんと軽く振り回してみせる。


 だが、その動きもすぐに止まり――。


「柄の部分に何か布みたいな滑り止め巻いた方が良いわよ。多分、スッポ抜ける人多そうだし」


 ――と、実に有用なアドバイスを送っていた。


 何にせよ、これで武器防具合わせて百個程が作られたことになる。


 被服室の中は、積み重ねられた武器と防具で一杯だ。


 そんな武具の数々を見つめながら、拓斗は右腕をさすってさすがに疲れたといった表情を見せていた。


 どうやら、スキルによって、腕を振り疲れたらしい。


「一応、これで午後から冒険に出る奴らに貸し出してやれそうだ……。一段落だよ」

「おう、アリマブランドのお披露目ってことだな。派手にやってくれ」

「はいはい、そうするよ。それより、飯にでも行こうぜ。そろそろ出来てる頃だろ」


 拓斗の言葉に従って、皆がのそのそと立ち上がる。


 何だかんだで朝から動きっぱなしで少し疲れているのかもしれない。


「御飯は炊けてるだろうが、おかずはどーなんだ? 何か、錬金したのか?」

「そんな暇も、MPもないからね。炙ったって聞いたよ」

「炙った……? まさか……」

「オーク肉の炙り丼だってさ」

「マジかよ……。大丈夫なのかねぇ……」

「まぁ、食べるものがないんだから、食べるしかないだろうさ。(あた)らないように祈るしかないよ」

「神頼みか? この異世界じゃ、そういう種族がいるらしいから、効果はどんなもんかねぇ……」

「本当に居るなら、効果は高いんじゃないかな」

「んじゃ、一応、祈っとくか」


     ●


 だが、浩助の懸念とは裏腹に、オーク肉の炙り丼は好評の内に完売する。


 何だかんだ、浩助も二杯目をおかわりしていたので、その美味しさは相当なものであったようだ。


「いや、アレ、大トロが乗った海鮮丼だから!」


 どうやら、そういうことらしい。

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