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フラれて自暴自棄になっていたところを異世界召喚された結果がコレだよ!  作者: 荒薙裕也
第四章、新魔王争奪戦が開幕したと思ったら、俺の妹にそっくりな娘が狙われてブチ切れた結果がコレだよ!
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97、湖畔の町防衛戦18 side真砂子 ~天賦~

祝・投稿百部達成!


まだ全然道半ばですが、これからもお付き合い頂ければと思います。(^^;A


あ、ご祝儀評価してくれてもいいのよ……?(チラッ

「それじゃあ、最後はちょっと駆け足になっちゃったけど、ここまでがテスト範囲だからね。皆、ちゃんと復習して良い点取るように! それじゃあ、日直お願い」

「はい」


 日直である柳田美優が号令を掛け、その日の伊角真砂子の授業は終了になる。


 教室内は授業を終えた開放感からか、浮かれた声が飛び交い、休み時間を心待ちにしていた者たちが仲の良い者の元へと集っていく。


 そんな中、柳田美優は友達の武田麻美(たけだあさみ)と共に、水原沙也加の席へと向かう。


 彼女の席に向かうのは、ひとえにダベるためのスペースが広く取れるからだ。


 彼女の隣に座っているはずの、クラス一の不良生徒は基本的には学校に来ていないことの方が多いからである。


「いやぁ~、凄かったね~、沙也加ちゃん~」

「ん? 何が?」


 教科書を机の中に仕舞いこみながら、沙也加は話しかけてきた美優に向かってきょとんとした視線を返す。


「えー、真砂子先生の授業だよ~」

「伊角先生の授業がどうかしたの? いつも通りだったと思ったけど?」

「いつも通りだから、凄いんだよ~!」


 美優が隣に座る麻美に視線を向けると、彼女も本当にね~とばかりに頷く。


「ギリギリとはいえ、テスト範囲に間に合わせちゃったもんねっ!」

「え? それって普通じゃない?」


 沙也加はその事のどこが凄いのか全く分からないのか、戸惑った表情を浮かべる。


 それを見て、麻美がいやいやいやと顔の前で手を振って見せていた。


「他のクラスとか、全然テスト範囲にまで到達してないんだってっ! 結構、ここまでがテスト範囲だから、予習しておいて~みたいな感じで投げっぱなしのクラスとか多いみたいだよっ!」

「ほら、台風が直撃するからって学校が三日間も休みになったことがあったでしょ~?」

「あー、それで授業が遅れているクラスが多いのね。納得」


 沙也加は合点がいったとばかりに頷くが、そこで何かに気が付いたのか、その動きを止める。


「え? 何で、ウチのクラスはテスト範囲に間に合ってるの? 特に急いで授業したような記憶はないんだけど?」

「ウチだけじゃないわよっ! 真砂子ちゃんの受け持ったクラスの授業だけが遅れてないらしいのよっ!」

「本当、凄いよね~」


 美優もニコニコ笑顔で追従する。


 確かに、予定外の出来事があったのにも関わらず、予定通りに……しかも、当事者にそれと分からないようにこなしてしまうのは凄いという他ないだろう。


「伊角先生って、もしかして結構凄い人……?」

「さぁ? ただ、先生になってから、授業のスケジュールを一度も遅らせたことがないのが自慢だって言ってたような気がするっ!」

「あ、それは私も聞いた覚えがあるかも~」


 二人の返答に、沙也加は「そうなんだ」と生返事を返す。


 ……だから、どうということもない、在りし日の出来事である。


     ●


 昔から計画(スケジュール)を立てるのは得意だった。


 小学生の頃、夏休みの宿題として『夏休みの友』という冊子を貰ったことがある。


 そこには、国語、算数、理科、社会などの宿題と共に、夏休みのスケジュールを円グラフで記載するページがあり、彼女はいつもまず真っ先にその円グラフに予定を記載することから始めいていた。


 大体は、子供の考えるスケジュールなので、スケジュール通りにいくことはない。


 そして、子供も時間は無限にあるものだと考えているので、スケジュールから逸脱することを気にすることもない。


 結果、そのスケジュールは有形無形のものとなるものなのだが――。


 ――彼女は違った。


 伊角真砂子という少女は、そのスケジュールの円グラフを前にして、とりあえず埋めようなどという意識ではなく、予定を立てることの楽しさに気付く。


 計算できる要素と、ままならない要素と、どうにでも出来る部分もあるが、予想がつかず、どうにも定まらない部分もある。


 そういった予測の難しい部分を自分の想像で補い、予定通りに上手く調整できた時の達成感――。


 それは、手間も時間も掛かるために、スポーツや勉強などで得られような充足感の比ではない。


 だからこそ、真砂子は計画を立てるのが好きであった。


 浩助と一緒に進んでカリキュラムを組んだりしたのも、そういった嗜好があってこその行動だといえる。


 そんな彼女が八大守護に推された時、当初、彼女は大反対した。


 何せ、ステータスが図抜けているわけでも、強いユニークスキルを備えているわけでもない。


 客観的に見て、彼女が冒険者を引っ張る器ではないことは、誰の目にも明らかだった。


 何よりも、彼女自身が無理だと考えていた。


(けど、あんなことを言われちゃね……)


 キルメヒアに言われた『無理だと思ったから諦めるような教育をしているのか』という言葉に、彼女の矜持は(いた)く傷付けられた。


 自分が生徒たちに教えていたのは、そんな卑屈な教育ではない。


 それに、そこで彼女が八大守護を受諾しなければ、彼女の代わりに指名された生徒が危険に晒されることになる。


 彼女は熟考の末、八大守護という大役を受けた。


 今となっては、それで良かったのかもしれないと彼女は思う。


「ソラぁ! どうしたぁ! どうしたぁ!」


 アルマジロのような丸みを帯びた甲殻と、クワガタのような鋏と複腕を有した魔族が、真砂子の防御を崩そうと鈎の付いた腕をひっきりなしに繰り出してくる。


 鋭く、重い攻撃を片手に装備した盾で受け流しながら、真砂子は少しだけ乱れた息を整えていく。


 相手の方が格上とはいえ、攻撃を捨てて防御のみに集中すれば、拓斗が作った装備の性能もあってそうは大きなダメージを受けはしない。


 それでも、装備の耐久値はゴリゴリと減っているのだが、真砂子に焦った様子はみられなかった。


 魔族の攻撃にそれなりに鈍りが見えたところで、真砂子は槍で相手を軽く突く。


 それは、衝撃も何もあったものではない軽い攻撃。


 当然、相手の魔族も躱す素振りも見せずに、自慢の甲殻でその槍先を流してみせていた。


(二十七、二十六……)

「非力! 非力ぃ!」


 アルマジロとクワガタムシの合いの子のような魔族は、そう叫びながら自慢の甲殻ごと真砂子に向かって体当たりを敢行するが、真砂子はそれを落ち着いて横にステップして躱す。


 その攻撃自体は最初の方に二度見たので、最早『調整』は慣れたものである。


 物の序でとばかりに、真砂子は槍による攻撃を二度行ってから、魔族との距離を取る。


(二十五、二十四……)

「おい、テメェ、なめてんのか!? それとも、この俺――十二柱将が一人、ゲンガン様を見てビビってやがんのかよ!? どっちでもいいが、もう少し腰の入った攻撃をしやがれ! さっきから全然効かねぇんだよ!」


 ガラの悪いアルマジロの出来損ないこと、ゲンガンが唾棄と共にそう叫ぶ。


 真砂子はその言葉に答える素振りを見せてから、一度呼吸を整えるとゆっくりと言葉を返す。


「そうね。次からはもうちょっと脇を締めて攻撃してみようかしら? 忠告どうも有難うね?」

「おちょくってんのか、テメェ!? そうじゃねぇだろ!? さっきから防御ばっかり固めやがって! もっと強力な攻撃をしてみろって話だ! 俺の自慢の甲殻が泣くじゃねぇか!」

「別に、貴方の甲殻のために、私は戦っているわけではないの。私は私の戦い方で戦うだけよ。あら、そろそろ魔法が切れる時間ね。――【援護魔法】防御力集団強化(フルアーマーブースト)。……さて、もうひと頑張りしましょうか?」

「また、防御魔法か! ふざけやがって!」


 頭に血が上ったのか、ゲンガンが上空高くに飛び上がる。


 そして、そのまま背中の羽根を使って加速すると、真砂子に向かって一気に急降下してきた。


 風を巻き、巨大な体が迫ってくる姿は『恐怖』の一言だ。


 だが、真砂子は知っている。


(その攻撃は一度見たから知っているわ。威力は凄いけど、命中精度に難があるわよ?)


 真砂子は十分距離を取って、その攻撃を躱すと、着地の衝撃で動きの鈍いゲンガンに対して、ちくちくと槍でダメージを与えていく。


 その小賢しい攻撃方法がゲンガンの怒りを募らせ、単調な攻撃を誘発させる原因となっているのだが、真砂子はそんなことを気にも掛けず、自分の戦い方を貫く。

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