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俺と試合と敵戦力

 間接的アプローチの広告は大成功した。

 ひたすらリズムに合わせたジャンプ運動は第一グループでも話題になり、更に第二グループ全員が一貫した「ナイショ」という態度で更に好奇心は深まった筈だ。

 そして意外と苦労が無かったのはパスだ。

 鳥籠の形で真ん中に人を置き、真ん中の人がちぐはぐなタイミングと高さでジャンプし、中心の人が最高の高さに行った時と着地時にパスが回っているようにするという形の練習は選手のジャンプタイミングタイミングを上手く見分け、動体視力を良くした。

 更にパスはいつもの試合でボールを受ける性質上素早く回ることも多いため投球というより捕球が上手い。

 そして1週間が過ぎた。


 ニコニコチャット起動

 -楠瀬多面球部第二専用-

 --ログイン--

 Loading…

 Loading……

 Loading………

 アッキー『作ったよ~!』

 マウキャ『暁雲ったらこう言うのは速いわね』

 西園『…私のニコニコIDをどこから…。』

 アッキー『西園ちゃんのニコニコIDの捕捉なんてお茶の子さいさいだよ!』

 西園『えぇ!?』

 ひみ『よろしく~』

 ふみ『おなじく~』

 アッキー『うん!』

 ベア『よろしくな。』

 西園『朝熊先輩まで偽名!?私もかえた方がいいのでしょうか!?』

 アッキー『いや別にいいんじゃない?』

 マウキャ『というか私、「マウンテンキャッスル」ってアカウント名にしたのになんで省略されたのかしら』

 アッキ『運営が省略したんじゃない?』

 ひみ『ところでさ』

 アッキー『どしたの?』

 ふみ『私達今日連携の練習したの。』

 西園『だから遅くまで。』

 ひみ『でね。矢矧君のオペレーションなんだけど。』

 ベア『素人?』

 ひみ『違うの。全く逆。』

 ふみ『まず彼の言うことは間違いないと思って明日はプレーしたほうがいい。』

 アッキー『どういう意味?』

 ひみ『出された時は命令の真意が分かんないだろうけど、それが成功した時は多分驚くよ。』

 アッキー『へぇー』

 ひみ『彼の言葉は従った方がいいよ』

 ふみ『同感。』

 ベア『とりあえず明日試合なんだし寝よ。』

 アッキー『そうだね!おやすみ~』

 マウキャ『お休みなさい』

 ふみ『おやす~』

 ひみ『じゃね~』

 西園『お休みなさい。』

 --ログアウト--


 試合当日。

 開始前のミーティングで俺は体を直角にして懇願した。

「お願いします。指示に従ってください。」

 と。大分失礼なお願いだ。

 朝熊先輩からは当然の反論。

「なめてんの?プレイヤーはオペレーターに従うのは基本なんだけど。」

「分かってます。でも俺は先輩よりも下ですし、多分不可解で合理的に見えない指示も出すと思います。従ってくれないと上手く回りません。お願いします。」

 その言葉に朝熊先輩はうんともすんとも言わなくなり、最後に「一つだけ」と言った。

「それは、合理的に『見えない』だけなのね?」

「…はい、そうです。」

「ならいいよ私は。」

「ありがとうございます。では先発のメンバーを発表します。」

 西園(1)、山城先輩(2)、朝熊先輩(3)、暁雲先輩(4)、日美先輩(5)、冨美先輩(6)、他2名。

 ディメンションボールは基本的にオペレーターからの情報を受け取るのに無線通信のカナル型イヤホンにマイクのついたインカムを使う。

 オペレーターは1から8のボタンを操作し、情報を送る。その番号のついたイヤホンに情報が送られ、選手が動くという仕組みだ。選手のイヤホン番号は背番号ともリンクしている。

 だから特定の選手だけに情報を伝えられるということでもある。例えば西園への連絡は1を押す。

 そしてオペレーターの本領。それはボールの場所を伝えることだ。ディメンションボールはもとがドッジボールなので、ドッジボールで言う内野がある。逆に言えば内野しかないが。

 その内野の幅、奥行き、高さを8分割して、伝えるのがオペレーターの仕事だ。幅は左からABC、高さを下から123、奥行きを前からイロハで座標を伝える。例えば右端奥の人にボールの接近を伝えるときは『G、5』という。この場合少し高めのボールが来ると言っている。

 しかし最近は奥行きを言わない。

 なぜ言わないかというと、使わないからだ。前からくるボールは視認できるので必要ないのだ。

 でもそれも終わりだ。

 いらなかった、必要なかった、そう言われてきたそれらのルールを最大限に使ってみせる。これまでの常識を覆す。してみせる。

 革命を起こす。

 …話を戻すが、オペレーターには中の状況を素早く俯瞰的に認識し、処理する必要がある。つまり動体視力と空間把握能力によって適任かどうか左右されることが多い。

 以上。オペレーションの基礎説明終わり。


 オペレーター室はトランポリンネットを張るための骨組みに増設される形である。右側にいっぱいいっぱいに増設されているオペレーター室は全面、床含めて全て透明だ。前方の壁にスライド出来るレールがついていて、そこに戦況把握用のタブレットと番号選択のボタンと装置と、そこから伸びるインカムがある。ちなみに床も透明なのは結構怖いのでそこの対処もオペレーターの素質に入る。

 ちなみに俺は高所恐怖症…


「だったわよね!?」

 東雲にそう言われ、俺はかぶりを振った。

「ふっ…。それは中学生までの俺だ…。」

「高校生デビューで治るものなのっ!?」

 それで直るんだったら全国のビビり芸能人はバンジージャンプに怯えていない。

「…大体、治ったのお前の性だよな?」

「…え?」

「中学卒業ん時に卒業旅行とか言って『絶叫パーク』と噂の遊園地に連れて行きやがったのはどこのどいつだこんにゃろうッッ!」

 死ぬかと思った。というかマジで生きているのが不思議というか、100何メートルの高さから真下を見た日にゃひいじいちゃんと一緒に川をザブザブ行かなければいけないのかと本気で思った。まぁ落ちても死んでなかったからいいよねっ(満面の笑み)とかなんとかいいたげな東雲のあの時の顔は日本ブン殴りたい顔100撰に登録中である。

 …どこにあんだよその団体。

 意識を試合に戻そう。

 フォーメーションは前列3、中列2、後列3の<杯>というフォーメーションだ。

「さて、全員放送です。第二班のインカム、全員聞こえてますか?聞こえた方は返答お願いします。」

「こちら西園、大丈夫です。」

「こちら山城、問題ありませんよ。」

「こちら朝熊、問題ない。」

「こちら暁雲!行けるよ!」

「日美の方、大丈夫。」

「冨美の方よ、大丈夫。」

 さらに二人からも返答が聞こえ、全員のインカムを確認し、言葉を続ける。

「第二班としての初めての試合です。宜しくお願いします。」

「OK!頑張っちゃうよ!」秋雲先輩相変わらず元気いいな。

「では前半の動きですが、敵の動きを見極めるために防御優先です第一セットは基本的に防御優先の行動、あと球種も見ていきたいので挑発もお願いします。」

「矢矧君、矢矧君、この前暁雲先輩に言ってたことと戦略が矛盾してるよ。」

「え?」

「戦略のプレ公開みたいに言ってるくせにそれ完全に本試合で相手の実力を測る一番狡猾なやり方だよ!?超戦う気満々じゃん!?」

「うっ…それを言われるとな…」

「うん、完全に獲物狙う野獣のそれだね。」

「私は嫌いじゃないよー!」

 ホント暁雲先輩、キャラがブレない…まさに小さな肉食獣…。

「…まぁやるからには勝ちましょう。」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」

 全員分の掛け声と共に一回戦の開催だ。


 笛がなる。


 笛の前のコイントスからこちらのボールであることは確定だ。センターの西園によるジャンプボールシュートから一斉にジャンプしていく、右、後ろと跳ねて相手5番の背中を狙ったシュート。

 相手は前列1、中列3、後列4の<ピラミッド>と呼ばれる変わったフォーメーションだ。

 朝熊先輩に素早く連絡。

「右の壁使って日美先輩の横す。F、3、ニ!そしてB、6、イにパス!」

「了解。」

 使い慣れない奥行きのイロハはネックになるか…。

「日美先輩、ボールは朝熊先輩が。通常営業で」

「うん。」

 既にボールは日美先輩の所に迫っている。

「山城先輩、次のジャンプ高めに、ボール6に来ます。」

「はい。」

 ディメンションボールのルールにはまずボールは一度両手でキャッチする必要がある。

正確に言えばキャッチからボールが手から離れるまでに一度は両手で触らなければならないということだが。

 そして味方が一度触れたボールは当たっても点数にはならない。

 つまり…両手キャッチの法則から離れる。

 朝熊先輩はボールを横向になりながらもキャッチ。パスも正しく通り、

「6、ハ!」

「はいッ!」

 山城先輩が超高度からの、スパイク。

 これが一つ目の攻撃戦略。

「バレーボールスタイル。」

 そう、山城先輩の本領は中学でやっていたはずのバレーボール。だからジャンプは人よりも要領を得た飛び方ができる。

「そこに合わせた飛び方をしたってワケね。」

 東雲の感嘆が聞こえる。

 ボールは高角度からの急降下、下を反射させ、相手側の中列中心を狙い、直撃。一得点の笛がなる。

 後方を狙うことが唯一のセオリーとも言えるディメンションボールで前方からの球を直撃させるということは、その球が如何に速いかを暗示しているとも言える。

 上の反射球をキャッチする相手の前列。たった一人で前列を守った人だ


 そして俺は知ることになる。

「いやぁびっくりしたねさっきのは。」

 前列の奴はボールを投げることもせず。

「まさかパスするなんて、中列の右でも狙うのかと思ったらびっくりだよ。」

 ボールを上に上げて、

「始めようか。…迎撃の準備は整った。」

 まっすぐ落ちてきたボールを目の前の西園に向け、

「僕は動きに付いてきな。」

 叩いた。

「付いてこれるなら…ね?」

 西園が吹き飛んだ。

 ボールを放ったのを認識した直後、西園はボールと一緒に後列まで吹き飛んで行ったのだ。

「んな!?」

 朝熊先輩に抱えられた西園からボールを日美先輩に受け取らせ、改めて認識する。

 これこそが未だディメンションボールという競技がある、本当に求められた競技性。

 圧倒的差で敵を蹂躙する光景。そしてそれを体現するかのような第一の選手。

 第一の超攻撃型前方要塞少女。第一が<ピラミッド>を採用している理由の一つ。前列を縦横無尽に動き、力強い投球で得点をもぎ取る精鋭中の精鋭。

 讃良時雨(さわらしぐれ)

 第一のエース、堂々の登場だった。

5話も無事完成です。

やっとディメンションボールなる競技のシーンに入れます。

微妙に長い道のりでした。初試合が5話目の最後なんて…(笑)

これからも少しずつ続けていくつもりですので見てくれた方はよければ評価の程よろしくお願いします。

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