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俺と多面球という競技

 立楠瀬坂高等学園…といえばドッジボールの未来型球技、「ディメンションボール」の元強豪校である。

 …但し女子の。しかも元。

 はっきり言って全世界大会すら未だ成されていない日本発祥の弱小競技であり、その設置費や設備等、様々な障害のある競技だ。

 ボールが弾力性を増し、上下四方を柔らかいトランポリンで囲まれていて、外野という存在は失せ、指示室から指示を出すオペレーターの存在がいなければ、ドッジボール。それがディメンションボール、通称ディメ。

 ルールは当てたらプラス1、6点先取の6セット制、1セット10分、1セット内に決着付かなかったら得点の高い方が勝ち。バウンドは上下四方どこに反射してもよし。

 こんな感じ。簡単だろう?

 大体この形からして体の柔らかい女子に分があるのは当然の競技。

 てことで男子の俺に関係はない。以上。証明終了。


 でその競技の元強豪校に俺は入学することになっている。

 そうそう、一つ言い忘れていたが、楠瀬坂高等学園は先月まで坂と高等の間に女子という文字が合ったらしい。

 まぁ関係ないよね。


 大有りでした。

 これからの三年間。

 試験導入の男子100人(但し1年生徒全員で250人)。

 どこもかしくも女子。

 もう無理だよこれ。絶対無理、確信する。


 入学式は終えた。クラスも分けられた。

 そしてクラス紹介、部活の入部も今日。

 そして男子は島流しになった。16人が教室右端三列に固められたのは完全に差別だろ。しかも俺は女子最前線。向けていられるかもわからない視線が痛い…。

「アンタ元女子校を怖がりすぎでしょ?」

 俺にこの学校を教え、設備を餌に俺を釣った俺の席の隣の幼なじみ、東雲恵利は堂々と言って来やがるのだ。

 …俺は女子が沢山いると何となく怖いというのは分かっているのかね?。

 つかまだ先生話してんだぞ。

「てか結局来たのねここ。」

「まぁな。ここの談話室には麻雀あるし。」

「んな事言って、コートの中でしょ、興味は。」

「うっせ。俺は今麻雀にしか引かれてねえよ。」

「…あっそ。」

「大体、ディメは女子競技だろ。」

「あら?私は何のコートとは言ってないよぉ?」

「んなっ!?」

「矢矧君、東雲さん。静かに。」

 担任に注意され俺の肩身はさらに狭くなった。

 中学のときの「ちょっと男子~静かにしなさいよ~。」感が数倍でハンパない。流石元女子校。

 うわ、あの蒼髪の奴とかやべぇ。なんか超凝視してて怖ぇ…

 結局俺は小さくなって過ごしたのだった。


「ふふふ悠。私はあんたをディメ部に…」

「あ、俺は雀部見て来るんで、じゃ。」

 そうそう退散。雀部とか部員何人かな…ドコゾのアニメみたいに超次元麻雀じゃないといい…け、ガシッ!

 んんん~?

「ねぇ悠。私さっき宣言したわね?」

「俺はなんも聞こえてねぇやい!?」

「拒否権はない!」

「なんだって~」

「いざ行かん。体育館へ。」

「雀部は体育館にないけど!?」

「雀卓をディメのボールがスマッシュ!」

「ポイントは入りませんよ!?」

 雀部の夢は消え去った。泣きたい。


 バゥンとひたすらボールの当たる音がする。

 ディメンションボールは基本的に上空のオペレーターから現在状況の情報を得る手前。味方プレイヤー同士の情報交換等は必要ない。

 つまり個人作業。オペレーターの指示に従うだけの忠実だったら楽勝の競技。

 …だからくだらない。

 と、廊下で襟を引っ張られて狩人に狩られた鹿みたいになりながら思った。

 完全なる現実逃避の全貌今明らかに、である。

 またも奇異の視線。なんかコレだけで死ねるなぁ。

 ズルズル引きずられながら体育館到着。

 まぁ設備があるってのは学校の大きい証拠だ。

 ちなみにこの関東某所にあるこの学校は体育館は4つ音楽室、美術室、談話室2つ。カフェテリアが大1つ小2つと、もうなにがなんだか。さらに裏庭中庭校庭が1:2:3の割合で設置されているらしい。

 こんだけでかいと遊園地もかくやと言った感じ。

 ディメ部があるのは第三体育館。高校2年の教室から近い所だ。

 扉が開く。


 …あ。

 蒼い髪をポニーテールに纏め、ホットパンツを穿いて、たった今トップスを着ようとしかけている女子が目の前にいた。

 つまりは…まぁ白のブラが丸見えだ。胸囲はまぁなんだ?ご愁傷様?と。

 肌は白く、どこにも荒れたところのないスベスベだ。

 しかしその顔は驚くほどに赤く、林檎を思わせる。しかもどうしようもないというように硬直していた。

 あ、でもこのままだと俺がご愁傷様なんだろうな…。

 その瞬間、俺は頬を張られた。

 その女子…ではなく、俺の幼なじみ東雲恵利である。

「ちょっとアンタ何見てんの」

「お前の何かを見た覚えはないぞ!?」

 その時フッと意識が消えた。

 さっきの言葉が意識を保つ限界だったらしい。


 …これは。うん。アレだな、太ももの柔らかさだな。安定のラブコメ要素か?

 でも俺膝枕されたことないからな…で誰こいt

「キャッ!」

 ゴンッ

「痛ッ!」

 脳に刺激!超高速で膝をずらされて俺の頭蓋骨をブレイク!矢矧悠に40のダメージ!

「あ、ごめんなさい!」

 俺を上から覗いたのはさっきの蒼髪の女子。ついでに言えば今朝のHRで俺を超情熱的怒りで見つめてきたあいつである。

「あ、悪い。こっちこそ…その見ちゃって。」

「えぅ!?」

 途端に顔を赤くする。…なんか今朝とは違うなぁ。

 更に顔が覗く。今度は東雲だった。

「あんたねぇ、西園さんの下着見たんだったらそれ相応の覚悟しときなさいよ♪」

 なんでそんなにニコニコとしてんのこの人。

 そこにディメ部の部長も現れる。

 てか部長だろうなぁ…なんか「部長!」て書いてある腕章付けてるし。…キャラ濃さそう。

「そうだねぇ。じゃあこんなのはどうだろう。」

 そしてディメ部の部長は自信満々に言った。

 ディメンションボール対決ってのはどうだろう、…と。


 ツーポイント先取のワンボールでワンonワン。オペレーターはナシ。

 勝ったら免罪符。負けたらディメ部で奴隷。

 非常にわかりやすい…がッ!

「いーやーだー!いーやーだー!絶対やんねぇ!?」

「ぐだぐだ言うな!見たのはアンタよ?」

「不可抗力で書類送検訴訟無しだろ!?」

「その書類送検を無くしてやるってんの!」

「なら書類送りを望みますが?」

「拒否権はない!」

「やっぱそうっすよね!」

 やっぱやんなきゃあかんかな。


「西園さんや。」

「な、なんです部長。」

「あの男子。あんなに嫌がってるだろ?」

「は、はい。」

「でもあの人たちは負ける話をしてない。」

「え?」

「ふふふ。まぁ頑張って来たまえ。君の下着代は安くないからな。」

「ちょッと部長!!」


 一応いっておくと俺はこの競技の残念賞である。

 過去に関してはなんとも言えないが、そこだけ大事だ。

 イヤイヤながらも入念にウォーミングアップを終わり、ルームに入る。

 目の前には「敵」がいる。

「いや本当に悪かったな。」

「こっちこそ。」

「まぁなんだ?よろしく。」

「はい。」

 ボールはこちらから。

 そしてゲームがスタートする。


 開始音。


 その場で同時に二人は飛んだ。まずは矢矧の先制、ディメ開始時のお約束。背後へのボール。だがそれはすぐに取られる。そうすると不利なのは矢矧だ。空中ではほぼ体勢を変えられない。だが矢矧はそれをギリギリで避ける。ボールすら取れない本当のギリギリ。そしてボールは真後ろで反動し、矢矧を避けて既に待機している西園へ。しっかりとキャッチした西園は方向を変えて飛んだ矢矧へ。またもギリギリで避ける。狙いがいいのかはたまた…?


 やべえ、空気が足りねぇ。運動してないとこうなんのか。

 筋トレはしとこうかなぁ?

 次は腰を下げて横に飛ぶ。

 13度入射の15のほ、が着地点。

 今度も避けよう。ギリギリで。

 当たりそうで当たらない位置で。


 両者全く当たらず。

 矢矧の方は息も上がっている。だが当たらない。

 流れは未だに西園側にある。

 まず矢矧は一切ボールに触れていない。

 着地点に当たり反射する。

 そして…ついに西園が取り損なった。

 ボールは指に当たって少し角度を変え、更に後ろに当たり、少し高めにあがり。

 矢矧はそれを解っていたようにキャッチする。

「解っていた」ように。


 掛かった。

 指掛けようとした瞬間確信する。

 俺、矢矧悠が。

 何故ならそういう風に誘導したから。

 相手が投げるとき、俺は飛んでいる…ようにしている。

 そうすれば相手は身動きの取りにくい自分を確実に狙う為に直球で投げる筈だ。

 だから俺はそれをギリギリで避ける。

 そうして角度を調整。

 最後に指が届きそうなところに打たせる。

 戦略的な発想の一部

「当たっちゃいました。」

 額に汗を浮かべた西園は笑っている。

「ははは。いい顔してるじゃん。」

「はい、でも私の役目はもう終わりです。」

「?」

 何を言ってる?

「だって…私、血圧が上がっちゃったんだもの。」

 そういって西園は笑うと。

 性格を変えた。

 豹変した。

「あぁまた上がっちまったか。まぁ俺がディメできんならいいぜ!そこの男、ブッ倒してやっから首洗えよ?」

 …もう面影がねぇよ。誰なんだよ。

 そしてボールは俺に掠り、真っ直ぐバウンドして返ってまた西園の手中に戻る。

 西園の得点に一点が表示される。が、当たった覚えは全くない。

 あの圧倒的速度について行く?

 冷や汗が流れていった。

初投稿作です。

前から個人的に小説は書いていましたがなろうの初投稿になります。

誤字脱字は指摘され次第改稿するつもりです。

連載するつもりですので楽しんでいただけたら幸いです。

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